「カルネ」がなければ走れない?「推し」ライダーが日本の公道で直面した壁

 

Posted on 07 Jul 2025 21:00 in ASKSiddhiのひとりごと by Yoko Deshmukh

ご本人に聞く勇気はとてもないけど、ちょっぴりうっかり者らしい彼による、ものすごく初歩的なミスだったのかな。そういうところも大好きだけどね。



どんなにヒマであろうが、そしてどんなに「推し」であろうが、同じ人または媒体が運営する「YouTube」チャンネルを1日に複数エピソード見ない、という謎のルールを設定しているわたし。
しかも当然ながら、毎日「YouTube」に首ったけというわけではなく、視聴はある程度時間に余裕のある場合に限られる。
とくにこの1か月ほどは、一時帰国中の日本からタイに飛んだり、またドイツ語検定の準備に専心したりと何かと慌ただしく、「推し中の推し」と豪語し、実家にまで呼びつけることになってしまったパキスタン人ライダーであり、フルタイムのロードトリップ系YouTuber「Wildlens by Abrar」ことAbrar Hassanさんの最新動画も、ほとんど追い切れていなかった。

ASKSiddhiで「Wildlens by Abrar」に言及した記事: 
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先日プネーに戻ってきてから次のエピソードを視聴し、初めて Abrar さんが日本の公道を愛車「Rangeeli」で走ることを諦めたいきさつを知ったのである。
 


以前にも、外国から持ち込んだ中古車で日本の公道を走るためには、税関審査だけでなく、世界で最も厳格とされる車検に通過しなければならないことを、「ChatGTP」先生に教えてもらったことがある。

ASKSiddhi関連記事:
日本でバイクを走らせるには——旅人Abrar氏の挑戦記 Posted on 06 May 2025

そこで再び、Abrar さんの動画内容を踏まえて「ChatGTP」先生に聞いてみたら、最大の敗因は、バイクを含む自家用自動車の一時的な海外持ち込みを簡素化する通関書類、「CPD(AIT/FIA Carnet de Passages en Douane、カルネ・ド・パッサージュ・アン・ドゥアン)」、通称「カルネ」というものを取得していなかったことのようだ。

参照: 海外在住の人が自分の車・バイクで日本をドライブする方法|国際物流・通関のアクセス・ジャパン株式会社 

Abrarさんが発信している複数の動画でも、また先日、福岡でお目にかかったときのご本人のお話の中でも、「ジュネーブ交通条約(Geneva Convention on Road Traffic, 1949)」についてはたびたび言及されていたが、「カルネ」についてはほぼ皆無だったので、取得を前提としていなかったのかもしれない。
また、カルネは事前に「自国での手続きが必要」とされているため、Abrarさんの場合、日本に入国する前に、現住国パキスタンまたは出荷元のタイのいずれで手続きすべきか、その判断も難しいところである。

今回のAbrarさんの失敗例は、こうした事前手続きに関する情報を熟知していなかったことに加え、バイクの輸出を委託したタイ・バンコクの会社も、日本におけるもろもろの複雑な手続きについて精通していなかったことが大きい。
しかし、タイでの出荷時、そして日本で起きたこと、そのすべてが動画に記録されているので、こうした時、つくづくYouTuberであることが不幸中の幸いでもあったのかもしれないな、などと思う。
失敗例すらきちんと発信するAbrarさんには、改めて敬意を表したい。

それにしても日本在住パキスタン人と言えば、わたしが学生のころからクルマ輸出入関係で名を馳せていた存在だし、実際に上の動画内で、想像をはるかに上回る複雑な手続きを経て、なお日本の公道を走れなかった「Rangeeli」を預かってくれている人々は、茨城県のパキスタン人ディーラーさんたちである。
このような猛者でも、Abrarさんのような常軌を逸したグローバルなロードトリップなど、想像もつかない世界なのだろうと実感している次第である。

 






About the author

Yoko Deshmukh   (日本語 | English)         
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。

ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.



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