一時帰国中の福岡から、2泊の予定で大阪を訪れていた。
ところで、ASKSiddhiにもたびたび登場してきた、世界中で大人気のライダー系YouTuber。
パキスタン出身でドイツ在住の「Wildlens By Abrar」ことAbrar Hassanさんは、わたしにとって憧れの存在であり、心のアイドルである。
日本を目指してユーラシア大陸を横断する旅の途中、昨年12月にバンコクから発送していた愛車「Rangeeli」が、ついに東京に到着。
念願の日本でのバイク旅が始まった。
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(推しと言いつつも)実は本編のYouTube動画を追い切れていないのだが、Instagramのストーリーズで日々リアルタイムに発信される旅の様子は欠かさずチェックしている。
そんなある日──大阪に出発したその当日、なんとAbrarさんが京都に滞在中であることがストーリーズで発覚。
新幹線の車中から、思わずメッセージを送った。
「明日と明後日、大阪にいますが、インドでよくされていたようなファンミーティングの予定はありませんか」と。
そのまま日常に埋もれて忘れかけていた翌日、福岡の母から「ストーリーズを見よ」と連絡が。
急いで確認すると、そこには「19時、道頓堀グリコ前で待つ」という告知が!

時間より少し遅れて、大阪の象徴とも言える、観光客でごった返す道頓堀の「相合橋(あいあうばし)」に到着した。
その道中、戎橋筋商店街で人混みをかき分けながらも高鳴る胸を押さえることができずにいたが、在阪・在近畿のパキスタン人たちに囲まれ、まばゆいばかりに輝くAbrarさんを見つけた瞬間、遠目でも心が震えた。
まさに感無量だった。
同邦のみなさまも、パキスタンを出発したところからずっと今か今かと待ち構えていたに違いなく、ついに対面できた感動もひとしおだったのではないだろうか。
幸運なことに、そこに集まったファンのうち、数名の女性たちと会話もできた。
ご家族そろってお越しの方もいれば、「(移民2世で)生まれてからずっと関西に住んでいるが、道頓堀は初めて」という若い女性もいた。
皆、にこやかでフレンドリーなうえに、出しゃばることもなく、控え目ながらも年齢問わず息を呑むほど美しい方々ばかりだった。
わたしの下手なヒンディー語(実質ウルドゥー)も理解してくれて、ある年配の女性に「日本での生活で何がいちばん良いですか」と尋ねると、「平安であること」と、深く心に響く答えを返してくださった。
そして子どもたちは、色白で暗めの栗毛をもつ、エキゾチックなうりざね顔。
かわいらしさの中に、どこか気品すら感じさせる魅力があった。
もちろん、誰もが我先にとヒーロー、Abrarさんと話そうとする中で、わたしのためにそっと場所を空けてくれた人もいた。
そのさりげない優しさが、胸にしみるほどありがたかった。
パキスタン人もインド人も、深いところで同じ根を持ち、シンプルで、朗らかで、そして温かな人々なのだと、改めて確認した。
さて、肝心のAbrarさんとの会話。
「一昨年はインドを北上するバイク旅をされていましたが、次にインドに来られる予定は」と尋ねると、
「なんとかしてまた行きたい。でも昨年はビザが下りず、今年はビザは出たけど、例の衝突で却下された」とのこと。
それでも「情勢がどうあれ、毎年ビザに挑戦するつもりだ」と語ってくださった彼のまなざしに、強い意志と優しさを感じた。
実はわたし、緊張のあまり、ドイツ在住という情報を頼りに、学習中のブロークン・ドイツ語で話しかけてしまった。
脳がバグって英語に戻せず、ろくな会話もできなかったが……。
それでも、Abrarさんはにこやかに、優しく受け止めてくださった。
握手していただいたこと、まるで菩薩のようなそのまなざしを正面から受けたこと、インドがダメなら福岡で歓迎したいと伝えられた(らしい)こと、そして「サラーム・アレイクム」とあいさつできたこと──。
それだけでも、もう大満足だった。
改めて思った。親切や寛容さ、真心とは、土砂降りの中に差し込む一筋の光のように、人の心を救うのだと。
ほんの1人、どうしても好きになれないインド人のせいで「鬼門」だった大阪。
けれど今、その大阪がAbrarさんのおかげで、わたしの「日本で一番好きな街」として見事に返り咲いた。
わたしの人生とインド・パキスタンの亜大陸とは、見えない運命の糸で結ばれている。
それを、心から実感した一日だった。
持病のうつによって、思うように人付き合いもできず、ここ1~2年は特に落ち込んでいたわたしにとって──
Abrarさんとの対面は、まぎれもなく「神さま(そして母さま)からの贈り物」だった。
そしてその贈り物に報いるために、わたしもまた社会に、何か小さくても、確かな形で還元したい。
そう、心から願っている。
……と、ここまで書いてふと思い出した。
もしかしたら、昨日のファンミーティングの様子は、近いうちにAbrarさんのYouTube本編にアップされるかもしれない。
その日を、楽しみに待ちたいと思う。