インドはまだ早い?「ひとり飯」は、なぜ世界で増えているのか
Posted on 28 May 2026 21:00 in インドあれこれ by Yoko Deshmukh
ひとりレストラン大好きなわたしが、近所のカフェで涼むワンちゃんをお届けします。
ロンドンを拠点とするシェフ兼レストラン経営者、Karan Gokani氏が「ソロ活」をテーマに執筆した「The Hindu」の記事を見つけ、時代の流れに驚くと同時に、深く同意する内容ばかりだった。
以下に抄訳したい。
Dining alone: Here’s why solo dining is becoming more popular
ニューヨークのレストラン経営者Danny Meyer氏の著書『Setting the Table』から、若きレストラン経営者として多くのことを学んだ。
曰く、レストランには多くの客が、デート相手を魅了したい、商談をまとめたい、記念日を祝いたい、あるいは家族の集まりをなんとかやり過ごしたいなど、それぞれ目的を持って店を訪れる。
一方で、「ひとりで来店する客」の目的は、「レストランそのものと付き合う」ことに尽きる。
もちろん、レストランとは会話の場でもある。
そう考えると、多くの人はしばらくのあいだ「テーブルという空間」を借りに来ているとも言える。
レストランは照明や音楽、皿やワイン、そして普段の家では口にしないようなことを語り合うための舞台を提供する。
そこは、恋愛、噂話、気まずい沈黙、ビジネスプラン、別れ話、プロポーズ、政治談義など、さまざまな人間模様の舞台である。
我々のようなレストラン側の人間は、そのための背景、おいしい料理などの「潤滑油」を提供しているに過ぎない。
しかし、ひとり客は少し違う。
つまり、単に空間を借りに来ているのではない。
レストランに「食事をしに」来ているのである。
人はひとりで食事をしているとき、細かな部分へ注意を向ける。
サービスの流れ、厨房から聞こえる食器の音、2つ隣の席で初デートをしているカップル――そうしたものを自然と観察している。
メニューも丁寧に読み、一口一口を意識的に味わう。
最善の意味で、その場に完全に「存在している」のだ。
だからこそ(中略)、「きちんと大切に扱われた」と感じたひとり客は、長年通ってくれる常連客になる可能性が高い。
Meyer氏が言うように、ひとり客を「王族のように扱う」ことは、単に正しいだけでなく、賢いビジネスでもある。
レストランは、以前よりずっとカジュアルな場所になった。
今では、ジャケットも特別な記念日も、3人以上の同行者もなくとも、「外でおいしいものを食べる」ことを正当化できる時代である。
ひとり客は、たいてい回転も早い。
好奇心旺盛で、良いものにはしっかりお金を使う傾向もある。
そして、「自分はきちんと見られている」と感じれば、今度は友人や家族を連れて戻ってくる。
レストラン予約サービス会社「OpenTable」は、特に若い世代を中心に「ひとり外食」への関心が高まっていると報告している。
また最近の業界レポートでも、より柔軟な食習慣や、「セルフケア」としてのひとり飯が増えていることが指摘されている。
Toast社がレポートした2025年版のレストラン動向でも、ひとり予約の増加が確認されており、その背景として、リモートワーク、小規模世帯、晩婚化、都市生活、SNSによるグルメ発見文化、さらには現代人が以前の世代より家庭料理をしなくなったことなどが挙げられている。
個人的には、もう1つ理由があると思っている。
レストランが以前よりずっと気軽な存在になったことだ。
今では、人々はパン屋を巡り、至高の麺のために行列に並び、ピザを求めて街を横断する。
つまり、「質の高い食体験」が、以前よりはるかに身近で憧れの対象になったのである。
インドでは、この変化にはもう少し時間がかかる気がする。
特に夕食は、今なお「何かの機会」に結びついており、友人や家族と一緒に食べることが一般的だ。
ひとりでの食事は、より機能的なもの――昼の手っ取り早いターリー、日曜朝のドーサ、深夜のフランキー(ロール)*、帰宅途中のサンドイッチ――として捉えられがちである。
これはおそらく、西洋より家庭内の料理サポートが充実している家庭が多いからだろう。
ロンドンやニューヨークでは、食材を買い、料理し、片付ける手間を考えると、バーでパスタを一皿食べる方が魅力的に感じられることも多い。
ひとり外食の増加は、レストランにとっても良いことだと思う。
単に経済的な意味だけでなく、哲学的にもである。
それは、ホスピタリティとは単なる席数管理や回転率の最大化、金曜夜に6人席をもう1組ねじ込むことではない、と(経営側に)思い出させてくれる。
最高のレストランとは、料理だけでなく「会話」の場でもある。
ウェイターとの会話、バーテンダーとのやりとり、厨房のシェフとの一瞬の交流、あるいは隣に座った見知らぬ人との言葉。
それらを最も自然に楽しめるのが、実はひとり客なのだ。
レストラン側から見れば、「1名席」は非効率ではない。
むしろ、それは究極の賛辞である。
そして客側から見れば、それは予約システムを巧みに攻略し、「本当にホスピタリティのために営業している店」と「利益だけを追う店」を瞬時に見分ける、とても賢い方法でもある。
*フランキー(Frankie): ムンバイー発祥の軽食。チャパーティやパラータで具材を巻いたロール状のストリートフード。

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Yoko Deshmukh
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インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。\r\n\r\nASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.
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