インド発、108カ国の少女をつなぐ月探査ミッション
Posted on 28 Feb 2026 21:00 in インド科学技術 by Yoko Deshmukh
お恥ずかしながら、まったく知らなかったです。励まされるな。
チェンナイを拠点とし、小型衛星や宇宙船の打ち上げをいち早く手がけてきた航空宇宙および防衛の新興企業、「Space Kidz India」のCEO兼創設者、スリマティ・ケサン氏(Dr. Srimathy Kesan)が取り組む、「宇宙探査とディープテックに興味を持つ少女のためのプラットフォーム作り」について、「The Hindu」で特集していた。
How an Indian start-up sparked a global girls’ space mission
ISRO(インド宇宙研究機関。インド政府の宇宙開発を担う国家機関)、IN-SPACe(インド国立宇宙振興認可センター。民間宇宙活動の認可・促進を行う政府機関)、および英国を拠点とする「Meridian Space Command」*(英国拠点の宇宙教育・宇宙関連支援団体)の支援を受けた、女性主導の史上初の月探査衛星ミッション「Mission ShakthiSAT」を運営している。
15億ルピーの予算で開発されたこのミッションは、インドおよび108か国の公立学校に通う1万2000人の女子生徒にトレーニングを実施している。
トレーニングでは、14歳から18歳までを対象に、ペイロード開発、宇宙技術、宇宙船システムを中心に120時間のオンライントレーニングを提供している。
ミッションは2025年1月16日に正式に開始した。「ShakthiSAT」のビジョンは、技術的な目標達成だけでなく、エンパワーメント、イノベーション、そしてインクルーシビティを体現することを目指している。
「ロケットや衛星は主に男子向けという神話があった」と話すスリマシー氏の「Space Kidz India」は、宇宙開発エコシステムにおける男女格差を埋め、女子の宇宙科学への参加を増やす試みを掲げ、ISROと共同で2022年8月、インドの農村部出身の女子学生750人が製作した8Uキューブサット「AzaadiSAT」を打ち上げた。
ミッションは低軌道への到達に失敗したが、後継機であるAzaadiSAT-2が翌年に打ち上げに成功し、学生主導の衛星プロジェクトにとって重要な節目となった。
2回目のミッションの成功を受けて、スリマシー氏は、こう考えるようになった。
なぜインドの女子だけを対象にするのか、と。
これをきっかけに、英国、ブラジル、メキシコ、UAE、アルゼンチン、そしてアフリカ諸国も加わり、108か国とのコラボレーションが実現した。
ミッションを前進させるため、宇宙やSTEM分野で大きな成果を上げてきた女性アンバサダーが選ばれ、それぞれの国の学校でミッションの目標を広めた。
「世界中から約20人の教授陣にカリキュラム作成を依頼し、現在は英語、スペイン語、フランス語、ポルトガル語、ヒンディー語、タミル語で利用できるようになっている」とスリマシー氏は説明する。
学生たちはZOHOプラットフォーム上でオンライントレーニングを受けた。
パンジャーブ州の11年生、15歳のティヤさんは、同級生20名とともに、2025年8月からトレーニングを受けている。
「大人になったら宇宙船を作りたい」と夢を抱くティヤさんによれば、「学習課では、最初の項目が科学、技術、工学、数学の4つの部に分かれていて、その後に練習問題と復習問題が続く」。
もうひとりの学生、フリーダさんは赤道ギニア在住だ。
宇宙や科学に特に興味があったわけではないが、トレーニングの過程で、自分の本当の天職が何なのかに気づいた。
「完全にオンラインのトレーニングで、教授に質問できるような物理的な環境ではなかったので、学習課を進めるのは苦労した。しかし、そのおかげで研究スキルを向上させることができた」と語る。
メキシコの16歳、サビーネさんにとって、このプログラムへの参加は夢だった。
在インド・メキシコ大使のソーシャルメディアを通じてミッションを知った。
21課すべてを修了すると、今年の8月下旬、各国から1名ずつ学生が大使と共にインドへ渡航し、「Space Kidz」の生徒たちと2基の衛星を製作する予定だ。
うち1基はISROのPSLV(極軌道衛星打ち上げロケット。中型の実績あるインドの主力ロケット)またはSSLV(小型衛星打ち上げロケット。小型衛星向けに開発された新型ロケット)と共同で地球低軌道(LEO)用に製作され、2026年10月11日の打ち上げを目指している。
もう1基は日本を拠点とする月探査会社ispace*(日本の民間月探査企業)と提携して2027年に月探査ミッション用に計画されている。
108か国からインドに集まる学生たちは、4つのチームに分かれて4つのペイロードを構築し、高性能CubeSatプラットフォームである8U衛星に統合される。
15~16kgのペイロードが、「Space Kidz」チームが開発した衛星バスを通じてLEOに打ち上げられる。
ペイロードは、地球に向けられた宇宙での衛星の向きを制御するオンボードシステムであるADCS(Attitude Determination and Control System、姿勢決定および制御システム)、放射線センサー、およびIMU(Inertial Measurement Unit、慣性計測装置)デバイスと統合される。
スリマシー氏は「衛星通信を極超短波アンテナ*(VHF帯を用いた通信アンテナ。比較的低い周波数で通信する方式)からSバンド周波数*(約2~4GHz帯の周波数。衛星通信で広く用いられる帯域)に進化させることを計画している」と説明した。
Sバンド信号は大気減衰(大気中に存在する粒子による光と無線信号の減少)の影響を受けにくいため、衛星の信頼性の高い通信が可能になる。
地上局は衛星と通信し、受信したデータは全108か国に配布され、学生が実験や分析を行うことができるようになっている。
「月探査については、できる限りシンプルなispaceの着陸機で、新しい衛星を打ち上げる」とスリマシー氏。
このプログラムは教育関係の連携も呼び込むことを狙う。
各国ではインドで学ぶ女子生徒への奨学金を発表しており、「モザンビークとエスワティニの高等弁務官事務所は、このミッションの奨学金を受けた2人の女子生徒に、インドへの留学を約束した」とスリマシー氏は話す。
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Yoko Deshmukh
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インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。
ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.
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