南インドに息づく、クリスマス料理の多様なかたち
Posted on 23 Dec 2025 21:00 in インドあれこれ by Yoko Deshmukh
毎年クリスマスの楽しみは、インドに息づく伝統的なお祝い方を知ることです。
「The Hindu」でことしも、恒例の「南インドのクリスマス祝祭ディナー」についての記事が公開されていたので、内容を抄訳したい。
From biryani to sorpotel: How different communities in Bengaluru celebrate Christmas
インドにおけるキリスト教の歴史は、ゆうに2000年前にさかのぼるとされる。
クリスマスの料理は、キリスト教の伝播ルートを反映し、世界各地の影響を色濃く受けたものである。
ポルトガル風からイギリスの伝統的なローストまで、クリスチャンの食卓に並ぶ料理は多彩だ。
全土からキリスト教徒が集まるバンガロールでの、伝統的なクリスマスのランチを以下に紹介する。
アングロ系ルーツ
オランダとイギリスの血を引く典型的なアングロ・インディアン(Anglo-Indian)*、クライヴ・ヴァンビュール(Clive VanBuerle)氏は、生粋のバンガロール人でもある。
「クリスマスの日には、兄弟とその家族も招いてポットラックパーティーをします。たくさんの料理とゲームを思い切り楽しんで過ごします。食卓にはチキンロースト、ポークロースト、またはバフ(Buff、水牛)ロースト、ロシアン・サラダ、カツレツ、クリスマス・プディング、ミート・ローフ、シェパーズ・パイ、自家製ジンジャーワイン、ローズ・クッキーなどが並びます。私たちアングロ・インディアンにとって、普段はライスやダル、ラッサムを食べる『インド人』として暮らしつつ、クリスマスだけは自らのルーツを祝う日になっています」
マンガロールからバンガロールへ
ケーララ州マンガロール出身のクリスチャン、アレクサンダー・ハーマン・ディソウザ(Alexander Herman D’Souza)氏にとって、クリスマスは1年で最も大切な祭事であり、家族とともにマンガロールの伝統的なクリスマス菓子であるクスワール(kuswar)*を作る。
準備はクリスマスの少なくとも10日前、12月中旬までに始まる。
クスワールには、キド(kidos)、チャクリオ(chaklios)、グリオ(gulios)、ニルー(niroos)、キッキサ(kikkisas)*、ライス・ラドゥー(rice laddoos)*などを使う。
クリスマス・ランチに欠かせない料理は、ポーク・バファット(pork bafat)*やポーク・インダッド(pork indad)などのマンガロール伝統料理だ。
「チキン・スッカ(chicken sukka)やロース・カレー(roce curry)、サンナ(sannas)、アッパム、そしてライス・ヌードルが、クリスマスの食卓を完成させます」と語る。
ハイダラーバードの人々のビルヤーニー愛
ハイダラーバードで生まれ育ち、22年前にバンガロールに移住したサラ・スプリヤ(Sarah Supriya)氏にとって、クリスマスの日といえば、いつもビルヤーニーだ。
正真正銘の(スパイシーな)ハイダラーバード風ビルヤーニーではなく、もっぱら「ドンネ・ビルヤーニー(donne biryani)*」、そしてキーマ・ボール(kheema balls)、ペッパー・チキン(pepper chicken)、ローティーが定番という。
クリスマスの定番デザートは、グラブジャムンのアイスクリーム添えである。
ミゾ族の伝統
8年前に故郷ミゾラム州アイザウルからバンガロールに移住したラルファカウマ・ラルテ(Lalfakawma Ralte)氏が、クリスマスには必ず作るものがチャンバン(chhangban)*である。
これは、蒸して手でついたもち米で作ったおやつで、ジャガリーで甘味をつけ、葉で包む。
「チャンバンを直訳すると『ねばりのあるビスケット』という意味です。どの家庭でもクリスマス・イブにはみんなで集まってキャロルを歌い、これを作るんです」
クリスマス・ランチの定番は、豚肉をマスタードの葉で包んで煮込むか、油で揚げた料理という。
さらに、仕込みに3~4か月かけるプラム・ケーキも作る。
ゴアのごちそう
バンガロールに移住して31年になるゴア出身のカトリック教徒、マファルダ・クアドロス(Mafalda Quadros)氏は、クリスマスのお菓子として、ポルトガルの影響が色濃く残る層状のケーキ、ベビンカ(Bebinca)、そしてファッジ状のドドル(dodol)*を挙げる。
さらに、ソージ(sooji)*とココナッツを原料とするバティカ(Batica)や、ボリーニャス(bolinhas)と呼ばれるクッキーも焼く。
クリスマス・ランチは、豚レバーとハツを辛いマサラで煮込んだソルポテル(sorpotel)*、そしてチキンやマトンのザクティ(xacuti)*が好まれる。
ゴアのプラオ(pulao)であるアロゼ(aroze)*が添えられる。
Anglo-Indian: 植民地期以降に形成された、欧州系とインド系の血統・文化を併せ持つコミュニティ
kuswar: クリスマスに向けて各家庭で作られる、マンガロール地方の伝統的な菓子の盛り合わせ
kidos: 米粉や小麦粉を練って細長く成形し、油で揚げた、甘さ控えめのマンガロール伝統菓子
chaklios: 渦巻き状に揚げた米粉・豆粉のスナック菓子
gulios: 砂糖やナッツを使った小型の揚げ菓子
niroos: 紙のように薄く揚げたマンガロールの伝統菓子
kikkisas: ゴマや砂糖を用いた固めの菓子
rice laddoos: 米粉を使った丸い甘味菓子
pork bafat: 赤唐辛子と香辛料を効かせたバファット・マサラで煮込む、マンガロール風豚肉料理
pork indad: 酢とスパイスで煮込むマンガロール地方の豚肉料理
chicken sukka: 水分を飛ばして仕上げるチキン料理
roce curry: ココナッツをベースにした伝統的カレー
sannas: 発酵米粉とココナッツミルクで作る蒸しパン
donne biryani: 葉製の器「ドンネ」で供されるカルナータカ州のビルヤーニー
chhangban: ミゾ族の伝統的なもち米菓子
dodol: ココナッツミルクと砂糖で作る粘度の高い菓子
sooji: セモリナ粉(粗挽き小麦粉)
sorpotel: 豚内臓を使ったゴアの伝統煮込み料理
xacuti: ローストスパイスとココナッツを使うゴア料理
aroze: 濃厚なゴア料理に添えられる、米の香りを生かしたプラオ
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Yoko Deshmukh
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インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。
ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.
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