昨日に引き続き、「The Hindu」恒例の「インドのクリスマス」シリーズは、コルカタからの話題である。
Kolkata’s heritage bakeries preserve Anglo Indian, Jewish and Goan traditions through ovens that have outlived trends and time
創業以来95年、現在は4代目が切り盛りするコルカタの「サルダニャ(Saldanha)」は、クリスマスのケーキやお菓子を、インド全土に配送する。
「生粋のゴア人」と語る、3代目店主デブラ・アレクサンダー(Debra Alexander)氏、4代目オーナーで娘のアリーシャ・アレクサンダー(Alisha Alexander)氏。
「クリスマスは伝統が重んじられる時期で、ケーキはその中心にあります。4世代にわたり、私たちはゴア州で90年も受け継がれてきた伝統のレシピを忠実に守った、フルーツたっぷりのケーキを焼き上げてきました。それは毎年の儀式であり、伝統であり、私たちの看板メニューです。4世代にわたって完成させてきたからこそ、お客様は毎年、戻ってきてくれるのです」と語る。
駐屯地ならではの赤レンガの建物が並ぶアングロ・インディアン居住区、ボウ・バラックス(Bow Barracks)近くで、クラウド・キッチン「Droolicious」を9年前から経営するパン職人、サナ・マスード・エブラヒム(Sana Masood Ebrahim)氏のもとへ、クリスマス・シーズンになると、看板商品であるリンツァー・クッキー(Linzer cookies)、ゴンドラージ・シフォンケーキ(gondhoraj chiffon cakes)、ロースト・チキン、ミンス・パイの注文が殺到する。
「サルダナ」のクルミケーキにインスピレーションを得て、オリジナルにアレンジしたケーキを作ったところ、最もリピート注文の多い商品となった。
コルカタの人びとは、今でも非常に英国的な考え方を持っており、植民地時代が残したノスタルジアは深く根付いている。
1920年から1930年にかけて、チッタゴン出身の難民だったジョティンドラ・ナート・バルーア(Jyotindra Nath Barua)氏が創業した「JN Barua」では、「英国の記憶に、ベンガル人の創意工夫を凝らした伝統菓子」を売る。
輸入プラムやブランデーが高価になったため、この店はチャナール・ケーキ(chanar cake)、つまりチャナやパニールを贅沢に使ったフルーツ・ケーキを考案した。
クリスマスの贅沢な味わいをそのままに、手頃な価格で提供、人びとに愛されている。
「弁当箱に収まるお菓子」として、その名も「ティフィン・ケーキ(tiffin cake)」というバターケーキ、クリスマスには、フルーツ、ワイン、ラム酒、クルミを使ったケーキが9~10種類、販売される。
濃厚でアルコール度数も高く、本格的なデザートを好む英国系インド人(Anglo-Indian)の舌も満足させる。
クリスマスイブには、ベーカリーは夜通し営業してオーブンはフル稼働する。
ニュー・マーケット(New Market)の中にあるユダヤ系ベーカリー「ナフーム&サンズ(Nahoum & Sons)」は、
バグダッドのユダヤ人人口がほぼ消滅した1902年、イラクから移民してきたナフーム・イスラエル・モルデカイ(Nahoum Israel Mordecai)が創業した。
ロールパン、レモンタルト、シンプルなブラウニー、ユダヤ風プラムケーキ、ハラ(Challah、ユダヤ風の編み込みパン)、エクレア、チキン・パフなど、バグダッドの片鱗からイギリス領カルカッタに飛んできた伝統の味が、今もなお息づいている。
12月のピーク時になると、毎日450キログラム(1000ポンド)以上のケーキが焼き上げられる。
リンツァー・クッキー(Linzer cookies): オーストリア発祥の伝統菓子。ナッツを練り込んだ生地に、ジャムを挟んだクッキーで、クリスマス菓子としてヨーロッパ各地に広まった。
ゴンドラージ・シフォンケーキ(gondhoraj chiffon cakes): ベンガル地方特有の香り高い柑橘類「ゴンドラージ・レブ(gondhoraj lebu)」の皮や果汁を使った、軽やかな食感のシフォンケーキ。