スリランカの味がチェンナイへ、ラヴィさんのベーカリー
Posted on 28 Nov 2025 21:00 in インドあれこれ by Yoko Deshmukh
シーフードを詰めた揚げパンもあるみたいで、いつか味わいたいなぁ。
「The Hindu」で、戦火を逃れてスリランカからチェンナイに移住した男性のベーカリー秘話が掲載されていて、興味深く読んだ。
Maths-teacher-turned-baker makes Sri Lankan buns and rolls in Chennai
15年前、スリランカ内戦からチェンナイへ渡ったパラマナタン・ラヴィチャンドラン(Paramanathan Ravichandran)さんは、スリランカの内戦から逃れ、数千人のスリランカ系タミル人のひとりとしてチェンナイに移住した。
チェンナイの街角に立つ屋台を見たとき、ラヴィさんはある「ひらめき」を得たという。
故郷スリランカでは、鶏肉、卵、ジャガイモを生地に詰めて揚げたロールパンを売る屋台が一般的であり、その味を思い出したからである。
当時の借り住まいで、叔母と妻の協力を得ながら30個のロールパンを作り、近隣の寛容な屋台で“実験的に”売ってもらうことにした。
この小さな挑戦は、思いがけず大きな反響を呼んだ。
徐々に評判が評判を呼び、注文が殺到するようになったのである。
やがて、オーブン1台と、2人が立つのがやっとの小さな店舗「KP Ravi Bakery」を開業した。
故郷では数学教師として働き、特に(日本の高校3年生に相当する)12年生の指導を得意としていたラヴィさん。
「家族は150頭以上の牛を飼っており、牧場で自由に草を食んでいた。落花生、玉ねぎ、稲も育てていた」と故郷の暮らしを語る。
しかし、内戦が勃発すると村は壊滅し、実家も農地も、安定した教師としてのキャリアも失われた。
移住先のチェンナイでゼロから生活を立て直すことは容易ではなかったが、ロールパンがラヴィさん一家を支えた。
時には14人のチームで1日に2,000個のロールパンを製造する日もあったという。
ところが2015年の大洪水で状況は一変し、さらに新型コロナウイルスのパンデミックも追い打ちをかけた。
そんな中、スリランカで食べられている平たいパン「Paan」をメニューに加えたところ、これが今では店の看板商品となっている。
長くて柔らかいパンの上に砂糖をまぶした「Kombu bun」も人気メニューのひとつである。
商売は軌道に乗せたが、妻と14歳の息子は現在スリランカに戻っており、ラヴィさん自身も「いつかは帰りたい」と語る。
「戻る前に、自分の店が自立できることを確認したいんです。それには3年くらいかかるでしょう。チェンナイに家を買うことも考えています」と話す。
スリランカに戻ったら何をするかはまだ決まっていないが、「もしかしたら、また教師の仕事を始めるかもしれません」と、静かに将来を見据えている。
ラヴィさんのベーカリー、次回チェンナイを訪れた際にはぜひ行ってみたいと思ったが、Google Maps上ではスポットできなかったため、住所を貼り付けておく。
KP Ravi Bakery, MG Chakkrapani Nagar, 14th Street, Alapakkam
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Yoko Deshmukh
(日本語 | English)
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。
ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.
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