一時帰国2025初夏編: 「推し」が実家に来るなど

 

Posted on 28 Jun 2025 21:00 in ASKSiddhiのひとりごと by Yoko Deshmukh

写真はもうひとつの大切な思い出、福岡・大橋は「ミドリストア」でいただいたナーグプル名物サオジ(ベジ)です。



今回も、いつもと同じような一時帰国になると思っていた。
特別な期待もなく、予定は少なめで、いつも通り、少しだけ生活の軸を日本に戻すような、そんなつもりだった。

でも、ふたを開けてみると、「一時帰国2025年初夏バージョン」は、ちょっと不思議なファンタジー的な彩りをまとっていた。
まるで、静かに風向きが変わる瞬間に立ち会ったような、そんな日本滞在になった。

まず、仕事が減ってしまい、お金に余裕があるとは言えない状況の中、シッダールタ姪のタイ・チェンマイでの就職という節目に合わせて、約束を果たそうと決めた。
貯金をはたき、クレジットカードの分割払いまで駆使して向かったタイで、彼女と一緒に過ごした数日は、旅というよりも、小さな贈り物のような時間だった。
自分にとっても、彼女にとっても。

そして、いま思い出しても、なんだか不思議な気持ちになるのだけれど、推しのパキスタン人ライダー、「Wildlens By Abrar」ことAbrar Hassanさんに、なんと2度も会えた。

1回目は大阪でのファンミーティング
たくさんのパキスタン人ファンに囲まれた中で、緊張しすぎて、ついドイツ語で話しかけてしまい、自分でも何を言っているのかわからないまま終わってしまった。
でも、それで終わらなかったのが、今回の旅の一番の驚きだった。

後日、なんとAbrarさんの方から、こんな怪しい日本人の実家にまで、会いに来てくれたのだ。
まったく今もって現実に起きたこととはとても信じられずにいるが、確かにその日、間近でご尊顔を仰ぎ、ライダージャケットから立ち上る匂いを嗅ぎ、そして会話を交わしながらじっくりとのぞき込んだ彼の目の奥には、風景を愛する人特有の、澄んだ光が宿っていた。

彼の人柄や、その仕事(動画)から学んでいるのは、ただ「映像が美しい」ということではない。
見慣れた日常や退屈な風景も、自分のまなざし次第で、色鮮やかなものになり得るということ。
それは、生きることそのものに対する態度のお手本を示してくれる考え方だと思う。

そんな日々の中で、6月22日には、ドイツ語学習歴わずか1年あまりで、2級試験に挑戦するという、ちょっと無謀なチャレンジもした。
結果はどうであれ、「やってみた自分」がいたことが、まずはうれしい。

帰国直前の空港では、高校時代の同級生と20年ぶりの再会もあった。
彼女の一家が今年初めまでバンガロールに駐在していた縁で、SNSを通じて再びつながることができた。
きっと、時間の流れは思っているよりも、やさしいかたちで人をつなぎ直してくれるのかもしれない。

そして、秋には日本の母がプネーを訪ねてきてくれることになっている。
少しずつ、何かが、ゆっくりと動き出しているような気がする。

正直に言えば、わたしの毎日は、今でも決して順風満帆ではない。
うつや不安症に苦しみ、長いあいだ暗がりの中を手探りで歩いてきた。
それでも最近、「ただ今日を生きること」が、どれだけ貴重で、大切なことか、少しずつ実感としてわかるようになってきた。

やりたいことが見つからない日もある。
何もできないと感じ、絶望的な気分で目覚める朝もある。
でも、そのなかで、自分にできることをほんの少しでも見つけられたら。
会いたい人が心に浮かんだら。
そういう瞬間が、わたしにとっての「光」なのだと思う。






About the author

Yoko Deshmukh   (日本語 | English)         
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。

ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.



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