新種コウモリ、ヒマラヤで発見──インドとパキスタンをまたぐ分布域
Posted on 06 Jun 2025 21:00 in インド科学技術 by Yoko Deshmukh
コウモリにも国境はないもんね。
新種のヒマラヤ・コウモリが、インドとパキスタンを分断する国境線をあいまいにしているという、話題を見つけた。
New Himalayan bat blurs India-Pakistan divide
インドの科学者チームが、2017年から2021年にかけて、ヒマラヤ西部ヒマーチャル・プラデーシュ州およびウッタラーカンド州で一連の調査を行った結果として、29種のコウモリを記録した。
その中には、ブランフォードオオコウモリ(Blandford’s fruit bat)、ニホンキクガシラコウモリ(Japanese greater horseshoe bat)、ヒガシキクガシラコウモリ(Chinese horseshoe bat)、ネパールヒゲコウモリ(Nepalese whiskered bat)、シッキムホオヒゲコウモリ(Mandelli’s mouse-eared bat)、カシミール洞窟ヒメコウモリ(Kashmir cave myotis)、チョコレートアブラコウモリ(chocolate pipistrelle)、ヒガシユビナガコウモリ(eastern long-winged bat)などが含まれていた。
一方、これら29種のうち、2021年5月にウッタラーカンド州チャモリ(Chamoli)県アンスーヤ(Ansuya)で標本が採取された1種は、ヒメコウモリ属(Myotis)に属することを除き、他のコウモリや地球上のどのコウモリの分類学的特徴にも当てはまらない未確認種とされている。
調査の結果、この未確認標本は、ブダペストのハンガリー自然史博物館(Hungarian Natural History Museum)に所属する科学者ガボール・チョルバ(Gabor Csorba, Dr.)氏が1998年にパキスタンのハイバル・パフトゥンクワ(Khyber Pakhtunkhwa)地方で採取したものと同一であることが判明したが、これまで記録されていなかった。
同氏は、ヒマラヤホオヒゲコウモリ(Myotis himalaicus)を新種のコウモリとして記載した研究論文の共著者として知られている。
ヒマーチャル・プラデーシュ州とウッタラーカンド州で記録されたHimalayan long-tailed myotis 他28種のコウモリに関する研究は、動物学の大型学術誌『Zootaxa』の最新号に掲載された。
研究によると、今回発見された新種は、形態的に類似したカグヤコウモリ(Myotis frater)群に属する。
この群は、中国東部、台湾、シベリア中央部および南東部、韓国、日本、タジキスタン、ウズベキスタンに広く分布している。
新種のコウモリはヒマラヤ山脈南側斜面原産とされており、世界的にデータが不足していた東アジアオヒキコウモリ(Tadarida insignis)がインドのコウモリ相に追加された。
この種は以前、インドの既存の文献すべてにおいて、ヨーロッパオヒキコウモリ(Tadarida teniotis)と誤記されていた。
研究者らは、ウッタラーカンド州で採取された標本の詳細な調査と遺伝子解析に基づき、この種は中国、台湾、日本、朝鮮半島に加え、インドのヒマラヤ地域にも分布していると結論付けた。
ヒマラヤ西部における東アジアオヒキコウモリの記録により、その生息域は東方に約2,500キロメートル拡大した。
本研究のもう1つのハイライトは、これまであまりよく知られていなかったPipistrellus babu の種の地位を検証したことにある。
この種は1世紀以上前に、現在のパキスタン・ムリー丘陵で記録された。
形態学的類似性から、その後の研究者らは、主に東南アジアに生息するPipistrellus javanicus という別の種とシノニム(同義語)とみなしていた。
この新たな研究により、Pipistrellus babu は Pipistrellus javanicus とは異なる種であり、パキスタン、インド、ネパールに分布していることが決定的に証明された。
また、この研究は、インドに生息する他のコウモリ種、すなわち Savi’s pipistrelle(Hypsugo savii)とニホンキクガシラコウモリ(Rhinolophus nippon)の存在を、標本に基づいて初めて確認した。
ヒマーチャル・プラデーシュ州とウッタラーカンド州を対象とした今回の改訂研究により、インドのコウモリ種は135種となった。ヒマーチャル・プラデーシュ州とウッタラーカンド州を対象とした今回の改訂研究により、インドのコウモリ種は135種となった。
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Yoko Deshmukh
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インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。
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