ラダックの伝統食「チュルペ」、国際チーズ大会で金賞

 

Posted on 13 Aug 2026 21:00 in インドあれこれ by Yoko Deshmukh

噛めば噛むほど味が出るチーズなんだよね。



ラダック産ヤク乳チーズが、世界中で高く評価されているという記事を、「The Hindu」に見つけた。

When a yak herder from India made a big impact internationally

チャンタン(Changthang)地域でヤクの放牧とチーズ作りを行うテンレイ・ヌルブー(Thenlay Nurboo)氏が、伝統的なヤク乳を使って作ったソフトタイプのチュルペ(chhurpe)で、2026年にブラジルで開催された国際的なチーズコンテスト「Mundial do Queijo do Brasil」の金賞を受賞した。

ヌルブー氏は約100頭のヤクを飼育しており、そのうち毎日50~60頭から搾乳し、約60リットルの乳を得ている。
ヤク乳はバター、バターミルク、チーズなどに加工され、厳しい気候のラダックで生活する人々にとって重要な食料となってきた。

ヌルブー氏自身は、渡航に必要な予防接種などの準備が間に合わず、ブラジルでのコンテストには参加できなかった。
そのため、インド国家酪農開発委員会(National Dairy Development Board)が代わりにチーズを現地へ持ち込んだ。

今回の受賞は、ヌルブー氏にとって単なる商品の評価以上の意味を持った。
長年、ヤクの放牧を仕事として続けるべきか迷っていたが、国際的に認められたことで、伝統的な仕事を続けていく決意が固まったという。

ヌルブー氏は、ラダック東部で小規模な工房兼販売所「Nomadic Farm」を営んでおり、ヤクのチーズを1キログラム当たり約2,000ルピーで販売している。
その特徴は、伝統的な製法に加え、ヤクが自然の草木を食べて育つことや、製造時の燃料としてヤクの糞を使用することで生まれるスモーキーな風味にある。

ヌルブー氏はヨーロッパ式のチーズ作りを試した経験もあるものの、大量の乳を必要とするヨーロッパ産チーズと競争するのではなく、今後もラダックの伝統的な製法を生かしたチーズ作りを続けたいと考えている。

金賞受賞後は、ヤク乳、バター、ラッシー、チーズなどへの関心が高まり、ラダックを訪れる観光客や地元の人々だけでなく、インド国内のレストランからも問い合わせが寄せられるようになった。

ただし、ヌルブー氏は現時点では、大規模なホテル向け供給や輸出には慎重だ。
大量生産を行うには、現在よりはるかに多くのヤクと、それを養うための広大な放牧地が必要になるためである。

今回のような国際的な評価は、ヤク牧畜民の収入向上や、ラダックの食文化に関心を持つ観光客の増加につながる可能性がある。
一方で、国際市場に合わせて製法や味を変えることで、本来の地域性や伝統が失われたり、地元の人々にとって身近な食べ物ではなくなったりする可能性も指摘されている。

また、記事では、降雪量の減少や気候の変化、若者がほかの職業を選ぶ傾向、さらにヤクの毛に十分な市場価値がついていないことなどが紹介されている。
チャンタン地域ではヤクの飼育自体が大幅に減少しているとされ、ヌルブー氏の村では、現在ヤク乳を販売しているのは彼の家族だけだという。

ヌルブー氏は、5年前に設立された13人のメンバーからなる「Yak Herders Association」にも参加している。
同団体は、ヤク乳製品の普及や牧畜民の所得向上を目指し、ヤク畜産に関する研究支援の充実や、ヤク肉の合法化などを求めている。

ヌルブー氏にとって今回の金賞は、世界でも特に厳しい自然環境の一つで暮らしてきたラダックの人々が受け継いできた知識、食文化、牧畜による生活そのものが評価されたことを意味している。

観光業などとは異なり、ヤクの放牧は一年を通して続けることのできる仕事でもある。
チュルペの将来は、ヤクの放牧を持続可能な生業として次世代に残していけるかどうかと、密接に結びついている。

 

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About the author

Yoko Deshmukh   (日本語 | English)         
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。\r\n\r\nASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.



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