中国で学ぶインド人学生は増えたのか? 2005年の記事を2026年から振り返る

 

Posted on 08 Jun 2026 21:00 in アーカイブ特集 by Yoko Deshmukh

手探りの日々が、今になってお金には換えられない資産になっています。



本日は、2005年のASKSiddhi掲載記事を振り返ってみたい。

中国で勉強しませんか? 2005.6.4(土)

当時の記事では、中国・天津市の大学関係者がインドを訪問し、インド人学生に向けて積極的な留学プロモーションを行っていた。
医療、工学、金融、科学技術など幅広い分野のコースを英語で提供し、比較的安価な学費を武器に、中国はインド人学生の受け入れ拡大を目指していた。

記事によれば、当時すでに天津市だけで約1万人の外国人学生がおり、そのうち約1,200人がインド人学生であったという。
さらに中国側は、インド人学生にもっと中国へ来てほしいだけでなく、中国人学生もインドへ研修旅行などで積極的に訪れるべきだと語っていた。

では、それから21年が経過した2026年現在、この構想はどこまで実現したのだろうか。

まず、中国へのインド人留学についてである。

近年、中国はインド人向けビザ発給を再開・拡大し、2025年には8万5,000件以上のビザを発給したことが報じられた。
一見すると、中国留学人気が完全に復活したようにも見える。

しかし、この動きを単純に教育交流の拡大として解釈するのは慎重であるべきだろう。

当時の国際情勢を見ると、中国は米国との経済摩擦や関税問題への対応を迫られており、アジア諸国との関係改善を進める中で、インド人向けビザ緩和も外交的な意味合いを持っていたと考えられている。

いわば「ビザ外交」の一環という側面もあった。

また、中国留学の中身についても、一部で語られるような「AIや先端技術分野への大規模なシフト」が起きているわけではない。

現在でも、中国を留学先として選ぶインド人学生の中心は医学教育である。
中国の医科大学は英語による授業を提供し、学費も欧米諸国と比べて大幅に安い。
そのため、中国留学の最大の魅力は依然としてMBBS(医学課程)にある。

AIや工学分野については、インド国内のインド工科大学(IIT)や欧米への留学が依然として高い人気を維持しており、中国が主要な選択肢になっているとは言い難い。

一方で、2005年に期待されていた「中国人学生のインド留学」は、現在も限定的な状況が続いている。
インド政府の統計によれば、インドで学ぶ外国人学生の多くはネパール、アフガニスタン、バングラデシュなど近隣諸国出身である。
中国人学生の数は比較的少なく、政治的緊張やビザ規制の影響もあり、大規模な交流には至っていない。

特に2020年のガルワン渓谷衝突以降、中印関係は不安定な時期が続き、人の往来にも影響を及ぼした。

こうして振り返ると、2005年の記事で描かれていた未来は、半分は実現し、半分は実現していないと言える。

インド人学生にとって中国は確かに重要な留学先の1つとなった。
しかし、その中心は当時と同様に医学教育であり、交流の拡大は常に政治や外交の影響を受けてきた。
また、中国人学生が大量にインドへ留学するという流れも、現時点では現実になっていない。

2005年の記事は、中国がインド人学生に門戸を開き始めた時代の記録であった。

2026年の現在から見ると、その後の学生交流の歴史は、教育だけではなく、経済、外交、そして地政学が複雑に絡み合いながら形成されてきたことが分かる。
 

ASKSiddhiは、Noteでも記事をアップしています。
今後メンバーシップを利用した企画なども考えていますので、
よろしければフォローしてみてください。


 






About the author

Yoko Deshmukh   (日本語 | English)         
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。\r\n\r\nASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.



Share it with


User Comments

Leave a Comment..

Name * Email Id * Comment *