インドにおける「クィア・フード・ライティング」の現在地
Posted on 10 Apr 2026 21:00 in エンターテインメント by Yoko Deshmukh
「クイア・フード」とはわたしにとって新しいキーワードで、リストされた書籍をぜひ読んでみたいです。
インドにおける「クィア・フード・ライティング」について、「The Hindu」のSudha G. Tilak氏による興味深い論考を見つけたので、要約したい。
The rise of queer food books in India: how kitchens shape identity and belonging
『Tell My Mother I Like Boys』、Suvir Saran著(2025年)
食、アイデンティティ、セクシュアリティを交差させた回想録であり、インドにおいてクィアとして成長する過程を、料理の儀礼性、家庭内の美意識、食との感情的な結びつきという観点から描いている。
「クィア・フード」という言葉が成立する以前から、それを生きていたという、本記事のテーマと響き合う内容となっている。
「Achāri Anecdotes: Exploring Queer Food Cultures in Indian Kitchens」(『Queering Nutrition and Dietetics: LGBTQ+ Reflections on Food through Art』所収、2023年)
インドにおけるクィア・フードを明示的に扱った数少ない学術的考察のひとつであり、料理における記憶と親密性、伝統料理の再解釈、食をクィアな表現の場として捉える視点を主な論点とする。
上記は必ずしも「クィア・フード」と明記された著作ではないが、インドにおけるクィアな食の語りの形成において重要な位置を占めている。
『The Flavor Equation』などの、Nik Sharma氏の著作
科学と感情を融合させた料理観を、極めて個人的な語り口を特徴としている。
ディアスポラとしてのクィアなアイデンティティが、食を通して表現されている。
大胆でハイブリッドなレシピで知られるGurdeep Loyal氏の著作
自身の料理を「羞恥や自己抑制から解放されたもの」と表現し、インドの食文化におけるクィアな喜びと解放感を体現している。
『The Juhu Beach Club Cookbook』、Preeti Mistry著(2017年)
誰が厨房を主導するのかという既存の構造に挑戦し、食の空間におけるアイデンティティと可視性を提示している。
『Chapal Rani: The Last Queen of Bengal』、Sandip Roy著
本記事の中心的題材であり、食がクィアな記憶とアイデンティティを保持する役割を持つこと、家庭料理がジェンダー表現の場となり得ることを明らかにしている。
インドにおいては「クィア・フード」と明確に銘打たれた書籍はまだ多くない。
その代わりに、回想録、エッセイ、ハイブリッド型料理本、学術研究という形で、この領域が形成されつつある。
結論として、インドにおけるクィア・フードの文脈は、西洋のように明示的ではなく、より内在的かつ日常に埋め込まれた形で存在しているといえる。

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Yoko Deshmukh
(日本語 | English)
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。\r\n\r\nASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.
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