フリーランス不況下、インド大手との短期契約に踏み出す
Posted on 25 Mar 2026 21:00 in ASKSiddhiのひとりごと by Yoko Deshmukh
仕事があってもなくてもプレッシャーに負けがちなわたしなので、働き方を根本的に変える時だと思っています。
「LinkedIn」を通じたスカウトをきっかけに、インドの大手企業と4か月間の期間限定契約を結ぶことになった。
ここ最近、フリーランスとしての仕事は著しく減少し、状況は厳しさを増していた。
巻き返しを図ろうと試みてはいるものの、思うような成果には結びつかず、精神的に追い込まれる日々が続いている。
そうした中でも、これまでとは異なるアプローチも取ってきた。
1月中旬には、ドイツに欧州本社を置く日本の大手ゲーム会社の社内通訳・翻訳業務の試験を受け、また別の欧州にある大手翻訳会社の翻訳リード職にも応募した。
いずれも残念ながら実力不足で不合格となってしまったが、少なくとも挑戦したという事実を積み上げることしか、今のわたしにできることはないという思いで動いている。
同時並行して、「自分にしかできないこと」「自分だからこそ付加できる価値」を問い直す時間にもなっている。
しかし、ようやく合格し、動き出した若干の翻訳会社からせっかく受けたMTPE業務ではクレームが相次ぎ、自信を失いかけていたのも事実である。
今回契約した企業は、タタ系のいわゆる大手財閥企業のプネー支社である。
期間限定の契約スタッフという立場でありながら、ラップトップの貸与、会社メールアドレスの付与、人事部によるオリエンテーション、週1回の出社、健康保険への加入、有給休暇の付与など、まるで正社員のような待遇が用意されていた。
そこで、久しぶりに「会社に所属する」という感覚を味わっている。
本社はバンガロールなので、プネーは支社機能でありながら3か所に拠点があり、うち医薬品および医療機器を扱う部門を擁する東部の経済特区マガルパッタ(Magarpatta)施設だけでも巨大な面積を占める。
しかし、同社で働く人々は、かつて15年ほど前まで自分が所属していたインド企業の時と同様、いわゆるミドルクラスがコア層である。
大きく異なるのは、その出身地の多様性だ。
前職ではプネーやマハーラーシュトラ州周辺の出身者が大半を占めていたのに対し、現在の職場では北から南まで、インド各地から人が集まっている印象を受ける。
その姿は、成長を続けるインド経済の縮図のようにも見える。
一方で、日本や日本語に関心を持つ人材はほとんどおらず、その点はむしろ自分にとって新鮮であり、また心地よい環境でもある。
初出社の日、チームメンバーと昼食をともにした際には、ケーララ州出身の同僚と同席した。
会話の中で、日本でも映画「Kantara」が公開され好評を得ていることを話したところ、驚くべきことに、その同僚はまさに同作のテーマとなっているTulu語を母語とするコミュニティの出身者だった。
この同僚にとっては、南インドの主要言語とはTulu語、マラーヤラム語、タミル語、テルグ語、カンナダ語の5言語であると認識しているということも語ってくれた。
同僚からはさらに、おすすめのマラーヤラム映画として、三部作で構成される「Drishyam」を教えてもらった。
この偶然の一致に、2022年の公開時に同作を勧めてくれた、福岡の高校時代の同級生であり現在プネーで働くTちゃんへの感謝を改めて思い出した。
Tちゃんからは、映画鑑賞という行為が持つ「リテラシー」としての価値、つまり異文化理解の入口としての力について、繰り返し教えてもらっている。
たった1日の出社でも、ちょっとしたセレンディピティを体験したのだった。
インドに暮らしていながら、これまで家族以外との接点は決して多いとは言えなかった。
しかし今回の経験を通じて、仕事という枠を超えた形で、再びインドとのつながりが生まれつつあることを感じている。
契約期間はわずか4か月に過ぎない。
それでも、この短い時間が、金銭面での安定とともに自身のキャリアや価値観を見つめ直す契機をもたらしてくれると同時に、インドという社会との距離を改めて縮める機会となっていくことは間違いない。

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Yoko Deshmukh
(日本語 | English)
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。\r\n\r\nASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.
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