ガガンヤーンの生命維持システム、その仕組みとは

 

Posted on 22 May 2026 21:00 in インド科学技術 by Yoko Deshmukh

「ガガンヤーン」の知られざる世界です。



「ガガンヤーン(Gaganyaan)」計画における環境制御の仕組みを詳述する記事を、「The Hindu」に見つけた。

How does the Gaganyaan’s life-support system operate?

環境制御・生命維持システム(Environmental Control and Life Support System、ECLSS)は、空気、水、温度、廃棄物を管理することで、地球周回軌道上において地球の大気環境を再現するシステムである。
短期間のミッションでは、必要な物資はすべて地球から運ばれ、廃棄物は保管して後に処分するが、長期ミッションでは廃棄物を再利用し、空気や清潔な水といった有用な資源へと循環させる。

地球大気中の二酸化炭素は、光合成や海洋への溶解によって除去されている。
しかし、インド宇宙研究機関(ISRO)による、宇宙飛行士を地球上空400キロの軌道へ送り込む有人宇宙ミッション、「ガガンヤーン」計画では、宇宙飛行士の呼気によってキャビン内の二酸化炭素濃度が上昇するため、人工的に除去する必要がある。

二酸化炭素濃度が高まると、高炭酸ガス血症(hypercapnia)を引き起こし、頭痛、めまい、認知機能低下などの症状を招く恐れがある。

健康な成人は通常、1日に約1キロの二酸化炭素を排出するとされている。
空気再生システム(Air Revitalisation System、ARS)は、新鮮な空気を供給し、二酸化炭素を除去し、さらにキャビン内に蓄積し得る微量汚染物質や臭気を除去する役割を担う。

短期ミッションでは、酸素は高圧ガスボンベから供給される。
基準によれば、健康な乗組員1名あたり、代謝機能維持のために1日0.84キロの酸素が必要とされている。

二酸化炭素の除去には、水酸化リチウム(lithium hydroxide)キャニスターが使用される。
各キャニスターには活性炭が含まれており、キャビン内空気中の臭気を吸着する。
使用済みのキャニスターは通常20〜24時間ごとに、新しいものへ交換される。

自然対流が存在しない微小重力環境では、ECLSS内の小型ファンが循環系として機能し、致命的な二酸化炭素だまりや危険な酸素ポケットの滞留を防いでいる。

ガガンヤーンの乗員モジュールは、乗組員の快適性と機器の安全性を確保するため、温度20〜26℃、相対湿度30〜70%に維持されるよう設計されている。
キャビン内の湿気の主な発生源は、乗組員の呼気や汗である。

湿度が低すぎると、皮膚乾燥、目の刺激、さらに静電気放電リスクの増加によって電子機器の損傷を引き起こす可能性がある。
一方、高湿度は微生物繁殖を促進し、結露によるショートや腐食の原因となる。

乗員モジュール内の熱は主に、宇宙飛行士の代謝熱(1人あたり100〜150W)および常時稼働する電子機器・アビオニクス機器によって発生する。
温度制御にはアクティブ冷却システムが用いられる。
空気を熱交換器に循環させることで熱を除去し、その熱は宇宙空間へ放出される。

湿度管理には凝縮装置が使用され、水分を回収することで曇りやショートを防止する。

圧力は101.3kPaに維持される。
地球海面上と同等の環境を再現するため、圧力制御システムは電子センサーと安全弁を用いて空気と酸素レベルのバランスを取っている。

宇宙空間における最大の課題のひとつは、水が地上のように「注がれる」ことはなく、浮遊する水滴状になることである。
これらは電子機器のショートを引き起こしたり、誤って吸い込むと危険を伴ったりする。

そのため、水はガスと液体の混合を避けるため、加圧式ブラダー(pressurised bladder)を用いて機械的に押し出される。

ガガンヤーンでは、乗組員は専用パウチに保存された飲料水を利用する。
パウチを押すことで、水を直接口へ送り込める構造となっている。

微小重力下では、液体・固体廃棄物は「落下」しないため、吸引式気流システムを用いて身体から廃棄物を引き離し、空間内を漂わないようにする必要がある。

これらのシステムは、微生物汚染やアンモニアなど有毒ガスの蓄積を防ぐため、廃棄物を分離・安定化する機能も備えている。

ガガンヤーンでは、排泄物は専用のバッグで回収され、尿は漏斗(funnels)を通じて吸引される。
これらは臭気中和および細菌増殖抑制のための化学処理を施したのち、密閉容器に保管されて帰還後に処分される。

重力が存在しない環境では、火災は球状に広がるため、従来の消火剤では対処が難しくなる。

ガガンヤーンでは、煙探知機が警報を発し、乗組員へ危険を通知する。
微細な水ミストを放出する消火器が使用され、火災を鎮火する。
水ミストは火を冷却すると同時に、有毒煙粒子も除去する。

*Unnikrishnan Nair S.氏: 打ち上げロケットシステム、軌道再突入技術、有人人宇宙飛行技術の専門家
現在はVSSC*にて活動
*VSSC: ヴィクラム・サラバイ宇宙センター(Vikram Sarabhai Space Centre)の略。インド宇宙研究機関(ISRO)の主要研究機関のひとつで、ロケット開発や打ち上げ技術を担う中核拠点。
 

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About the author

Yoko Deshmukh   (日本語 | English)         
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。\r\n\r\nASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.



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