インドの子供に広がる肥満: 将来の健康危機に警鐘
Posted on 16 Mar 2026 21:00 in インドあれこれ by Yoko Deshmukh
特にコロナ禍以降、指先ひとつでファストフードが宅配されるような時代を生きるのが、我々インドに住む民だもんね。
「The Hindu」の社説で、インドの若年世代に蔓延する肥満の実態について明らかにした衝撃的な調査結果に触れていた。
Catch them young: On overweight or obese children in India
「若いうちから(習慣を)身につけさせる」という言葉は、非感染性疾患(NCD)の急速な蔓延に苦しむ現代社会において、皮肉とも言える歪んだ意味合いを帯びるようになっている。
研究によると、通常は加齢とともに発症する代謝性疾患を構成するさまざまな病態が、今や子供たちにまで影響を及ぼしていることが明らかになっている。
「世界肥満デー」(3月4日)に合わせて先日発表された、世界的な肥満症疾患の状況を展望する報告書『World Obesity Atlas 2026』は、衝撃的な内容を含んでいる。
同報告書によれば、2025年時点でインド国内において、5歳から9歳の子供1490万人、および10歳から19歳の子供2640万人以上が、過体重または肥満の状態にあった。
BMI(体格指数)が高い数値を示した子供の総数は、約4100万人に上る。
さらに推計では、2040年までにインド国内で肥満となる子供が2000万人、過体重となる子供が5600万人に達すると予測されている。
また同報告書は2040年時点において、学齢期の子供たちのうち少なくとも1億2000万人が、体重過多に起因する高血圧や心血管疾患といった慢性疾患の初期兆候を示すようになるとも推計している。
世界全体で見ると、BMI高値の子供が6200万人、肥満の子供が3300万人という数字で中国が両部門とも首位に立っているが、これにインドが続き、米国(BMI高値2700万人、肥満1300万人)がその後を追う形となっている。
これほどまでに肥満の数値が高いとなれば、それに伴う健康統計の悪化もまた、到底容認できないほど異常な水準に達している。
インドにおいては、高血圧、糖尿病、高血糖、高コレステロール、そして代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)など、高BMIに起因する疾患指標を示す5歳から19歳の子供の数が、2040年までに大幅に増加すると予測されている。
これらのリスク要因は、成人に発症する代謝性疾患のそれと類似しており、大別すると「運動不足」および「不健康な食品の摂取」に分類される。
原因として挙げられているその他の要因には、小・中学生に対する健康的な学校給食の提供体制が不十分であることや、生後1ヶ月から5ヶ月の乳児に対する母乳育児の実施状況が最適とは言えないことなどが含まれる。
子供の肥満が増加の一途をたどるこの現状に対し、それを食い止めるための対策が十分に講じられていないことは明らかである。
「世界肥満連盟(World Obesity Federation)」*は、この問題への対策を強化するとともに、加工食品に対するマーケティング規制や砂糖税の導入といった監視・監督体制の充実を図るよう強く求めている。
専門家らは、予防とケアをプライマリーヘルスシステム(primary health systems)*に統合することに加え、子供向けの加工食品の販売促進に対する規制、子供のための世界的な身体活動推奨ガイドラインの誠実な実施、乳児に対する母乳育児の必須期間の確保、そして学校給食の基準の健全化を求めている。
かつては高所得国特有の問題と見なされていた肥満や過体重が、今やインドを含む低・中所得国においても急速に広がりつつある現状は、極めて憂慮すべき事態である。
この段階で何ら対策を講じなければ、高齢化社会へと突き進む中で、国が若年層に寄せる期待そのものが空洞化してしまうことになるだろう。
この窮地を脱する唯一の道は、幼少期のうちから対策を講じることである。
*世界肥満連盟(World Obesity Federation)
世界各国の肥満研究者や医療団体が加盟する国際組織で、肥満の予防や治療、政策提言を行い、世界的な肥満対策の推進を目的としている。
*プライマリーヘルスシステム
地域の診療所や保健センターなどが担う基礎的な医療提供体制で、住民が最初に接する予防・診療・健康管理などの医療サービスを指す。

ASKSiddhiは、Noteでも記事をアップしています。
今後メンバーシップを利用した企画なども考えていますので、
よろしければフォローしてみてください。
|
About the author
|
|
|
Yoko Deshmukh
(日本語 | English)
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。\r\n\r\nASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.
|
User Comments