配達員の命と尊厳をめぐる攻防: インド政府が即配達に介入
Posted on 17 Jan 2026 21:00 in インドビジネス by Yoko Deshmukh
配達員さん、性格イケメンが多いんだよね。
わたしも例に漏れず、「クイック・コマース」サービスを愛用するひとりである。
つまり、この問題の当事者でもあるという強い自覚を持ち、配達をお願いする際にはアプリの機能でチップと寄付を支払うことを自らに課している。
それ以外にも、注文後に予期せぬ雨などが降った場合、現金でもチップを支払うようにしている。
そうした中、年末年始にプネーでも発生したストライキに関連する、「クイック・コマース」が有する問題点について、BBCが伝えていたので抄訳したい。
India asks e-commerce apps to stop '10-minute' delivery service
インド政府は労働者の安全への懸念から、すべての「クイック・コマース」プラットフォームに対し、「10分以内配達」の約束を撤回するよう要請したと、関係筋がBBCに語った。
この決定は、危険な労働条件をめぐって配達員による全国的なストライキが最近発生したことを受け、連邦労働省と企業幹部との間で協議が行われた結果である。
協議には、Zomato、Blinkit、Zeptoといった大手企業が参加した。これらの企業は、都市部の消費者が食料品や電化製品、家庭用品などを含むさまざまな商品を数分以内に注文できるサービスを提供している。
このビジネスモデルは顧客に非常に好評である一方、ギグワーカーに過度な負担を強い、深刻な安全リスクにさらしているとして批判されてきた。
公正な賃金、尊厳、そしてより安全な労働条件を求め、先月には数千人規模の配達員がストライキを行った。顧客への影響は限定的だったものの、この抗議活動は、世界で最も急速に成長しているデジタル経済の一つであるインドにおいて、こうしたサービスがもたらす人的コストについて激しい議論を引き起こした。
ストライキ後、非公開の会合が開催され、政府はクイックコマース企業に対し、厳しい配達期限の宣伝をやめるよう促したと、労働省の職員が匿名を条件にBBCに語った。
すべての企業がこの要請に完全に従ったかどうかは、まだ明らかになっていない。Blinkitなど一部のプラットフォームは、すでにブランドイメージやマーケティング戦略から「10分以内」配達という明確な約束を削除しており、今後数日中に他の企業も追随すると職員は述べている。
当該配達サービスの大部分は、配達距離を短くし、注文を迅速に処理できるよう、住宅地内またはその近辺にダークストアを運営している。
BBCは、Blinkit、Zomato、Swiggy、Zeptoを所有するエターナルにコメントを求めて連絡を取った。
コロナ禍以降、インドの都市部ではクイックコマースが急速に成長しており、プラットフォーム運営者は小規模な地域倉庫を利用して、食料品や家庭用品を数分で配達している。
このブームは、国内のギグエコノミー拡大と時期を同じくしている。政府系シンクタンクの「NITI Aayog」によると、ギグエコノミーの労働者数は、2021年の770万人から2030年までに2350万人に増加すると予測されている。
競争が激化する中、企業はこれまで以上に迅速な配達を約束し、都市部の買い物習慣を変えてきた。
一方で、こうした約束が顧客の期待を過度に高め、配達員のストレスを増大させ、しばしば危険な運転を助長していると専門家らは指摘する。
しかも、収入は限定的である。1日に12時間以上働くことも珍しくないという、ある配達員によれば、月収は約2万ルピー程度にとどまるという。
『OTP Please! Online Buyers, Sellers and Gig Workers』の著者で研究者のヴァンダナ・ヴァスデヴァン(Vandana Vasudevan)氏は、次のように指摘する。
「ギグワークは(インドにおける)ほとんどの労働者にとって副業ではなく、主な収入源だ。一方で、フルタイムで働いているにもかかわらず、こうしたギグワーカーたちには社会保障、キャリアアップ、研修、スキルアップの機会がない。彼らは正式には『独立請負業者』として分類されているが、その生計はプラットフォームのアルゴリズムに大きく依存している」
アプリ系運輸労働組合連盟「Indian Federation of App-based Transport Workers」のシャイク・サラウディン(Shaik Salauddin)事務局長は、「10分ルール」の廃止は、「ギグワーカーやプラットフォームワーカーの命と尊厳を守る上で、非常に重要かつ待望の一歩だ」と述べた。
一方、厳格な締め切りが公式に課されなくなっても、配達員は依然としてプレッシャーを感じ続けると指摘する人もいる。
前述のヴァスデヴァン氏は、「スピードはシステムに組み込まれている。ルールは目に見えなくても、労働者は自分の仕事の速さと顧客の評価が注文数に影響することを知っている」と述べた。
ある配達員は、「締め切りがなくなっても、注文1件あたりの収入の低さは改善されない」と漏らしている。
|
About the author
|
|
|
Yoko Deshmukh
(日本語 | English)
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。
ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.
|
User Comments