植民地時代が生んだ味、アングロ・インディアン料理とは

 

Posted on 12 Nov 2025 21:00 in インドあれこれ by Yoko Deshmukh

初めて知ることばかりで、自らの無知を痛感します。写真は2018年に訪れたマレーシア・ペナン島の「Restoran Kapitan」でいただいたローティーとカレーです。



バンガロールに新たにオープンした高級レストランが、「アングロ・インド(Anglo-Indian)料理」を提供との聞き慣れない語彙に接し、関心を抱いた。

Lessons on Anglo-Indian food and culture at 1882 Alfresco, a new restaurant in Bengaluru

主にイギリス植民地時代の定番料理で、「ムリガトーニー・スープ(mulligatawny soup)」「バッドワード・カレー(bad word curry*2)」など、謎めいた料理名が並ぶ。

うちムリガトーニー・スープは、バンガロール周辺の郷土料理、ミラグ・ラサム(milagu rasam*1、pepper rasam)にちなんで名付けられた。
「バブル・アンド・スクイーク(bubble and squeak*3)」は、ジャガイモ、肉、キャベツで作ったパティを軽く揚げたもの。

さらに同店では、植民地時代にインドに渡り、独自の料理文化をもたらした中国人が生み出したインド中華料理も提供する。
メニューには、「タングラ風チリ豆腐(Tangra style chilli tofu*4)」、ひき肉をクレープで包み、パン粉をまぶして揚げた「マトン・パンテーラ(mutton panthera*5)」などがある。

このほか、「レイルウェイ・マトン・カレー(railway mutton curry*6)」「ベンガル・ランサーズ・シュリンプ・カレー(Bengal Lancers shrimp curry*7)」「カントリー・キャプテン・カレー(country captain curry*8)」など、旧宗主国の影響を色濃く残す料理名が再現されている。

1. ミラグ・ラサム(milagu rasam)
南インドのスープ、ラサムの一種で、タマリンドとトマトをベースに、黒コショウ(milagu)とクミンをたっぷり使って作られる。

2. バッドワード・カレー(bad word curry)
アングロ・インディアン料理に見られる肉団子のカレー。ココナッツミルクを使ったマイルドなグレービーに柔らかいミートボールを煮込み、ココナッツライスや真っ赤な「デビルズチャツネ」とともに供される。「ボール」という言葉を避けたしゃれた名前が由来。

3. バブル・アンド・スクイーク(bubble and squeak)
イギリスの伝統的家庭料理で、ローストディナーの残り物(主にゆでたジャガイモとキャベツ)を混ぜ合わせ、フライパンで焼き固めたもの。戦時中の家庭料理として広まった。

4. タングラ風チリ豆腐(Tangra style chilli tofu)
コルカタの「タングラ地区」で発展したとされるインド中華(インド・チャイニーズ)料理の影響を受けた料理。

5. マトン・パンテーラ(mutton panthera)
ベンガル地方に伝わるアングロ・インディアンのスナック。スパイスで炒めたひき肉をクレープで包み、卵液とパン粉をまぶして揚げたもの。

6. レイルウェイ・マトン・カレー(railway mutton curry)
イギリス統治時代のインドで誕生した列車食堂発祥のカレー。マトンとジャガイモをトマトやタマリンド、またはビネガー入りの控えめなスパイスグレービーで煮込んだもので、長旅の乗客向けに考案された。

7. ベンガル・ランサーズ・シュリンプ・カレー(Bengal Lancers shrimp curry)
アングロ・インディアンのエビカレー。エビをターメリック、チリ、ビネガーでマリネし、タマネギ、ショウガ、ニンニク、トマトを使ったソースで煮込む。ベンガル地方の植民地時代の影響を残す味。

8. カントリー・キャプテン・カレー(country captain curry)
アングロ・インディアン由来のチキンカレー。骨付きチキンをタマネギとカレー粉で炒め、トマトベースのマイルドなソースで煮込む。

参照: 「Britannica」による「Anglo-Indian」の定義
インドにおけるアングロ・インディアンとは、インド人と、父方の血統を通じてヨーロッパ系の祖先を持つ混血の市民を指す。
18世紀頃から20世紀初頭にかけては、この用語は特にインドで働くイギリス人を指していた。
アングロ・インディアンという用語が混血の人々を示すカテゴリーとして用いられるようになったのは、1911年のインド国勢調査からである。
1935年のインド統治法(Government of India Act of 1935)では、アングロ・インディアンは「父または父方の祖先がヨーロッパ系であるものの、インド生まれである者」と正式に定義された(中略)。
その起源はヨーロッパとインドの最初の接触、すなわち1498年にポルトガルの航海士ヴァスコ・ダ・ガマ(Vasco da Gama)がインド南西部のマラバール海岸にあるカリカット(現在のコジコデ)に上陸したことに遡る。
その後、ポルトガル人が周辺地域に入植し統治する中で、1510年にゴアを征服した総督アルフォンソ・デ・アルブケルケ(Alfonso de Albuquerque)は、ポルトガル人の権威確立を助けるために、同胞にインド人女性との結婚を奨励した。
これらの結婚によって生まれた子孫はルソ・インディアン(Luso-Indians)と呼ばれた。
ポルトガル人が徐々にインドの領土を放棄したり、この地域での支配力を失ったりするにつれて、ルソ・インディアンは地元のインド人人口と融合していった。
現在、これらのルソ・インディアンの子孫は主にゴアンと呼ばれ、ゴア州、ムンバイー、そしてインド西海岸沿いに集中している(後略)。






About the author

Yoko Deshmukh   (日本語 | English)         
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。

ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.



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