ダイヤモンド輸出大国インド、米国関税で試練
Posted on 27 Sep 2025 21:00 in インドビジネス by Yoko Deshmukh
世界に名高いインドのダイヤモンド産業も苦境なんだな。
米の関税措置により大きな打撃を受ける業界のひとつとして、インドのダイヤモンドおよび宝飾業界の事情について取り上げた記事を、「The Hindu」で見つけた。
How is the jewellery sector coping with U.S. tariffs? | Explained
インドのダイヤモンド・宝飾品業界は、米国の関税措置によって大きな打撃を受けている。
米国はインドのカット・研磨済みダイヤモンドに50%の関税、スタッズ有無ジュエリーにも50~57%の関税を課しており、セッティング済みダイヤモンドの取引に混乱をもたらしている。
インドは世界最大のカット・研磨済みダイヤモンド輸出国で、米国はインドにとってダイヤモンドの最大の輸出相手国である。
このような状況において、業界は米国の関税によるショックを吸収できるような政府の介入を求めている。
2024年度、インドは4600億ルピー相当のダイヤモンドと2300億ルピー相当のスタッズ付きゴールドジュエリーを輸出した。
インドのダイヤモンドカット・研磨産業は82万人の熟練労働者を雇用しており、宝石・宝飾品輸出促進協議会(Gems and Jewellery Export Promotion Council)の予測によると、米国の関税は17万人の熟練労働者の雇用に影響を与える可能性がある。
インドの輸出業者の85%は中小企業(MSME)であり、米国市場の喪失による短期的なショックに耐えることはできないとされている。
そのため、業界はこうした地場企業がショックを吸収できるよう、政策緩和、労働者への支援、3~6か月間の金銭的・市場的な恩恵といった短期的な対策を模索してきた。
最も影響が大きい州はグジャーラート州、ラジャスターン州、マハーラーシュトラ州である。
ダイヤモンドの大部分はグジャーラート州の工場でカット・研磨され、ラジャスターン州は宝石や半貴石を使った宝飾品の製造拠点が集中し、マハーラーシュトラ州はスタッズ有無ジュエリーの製造拠点であり、ダイヤモンドの大部分を輸出している。
求められている政策緩和として、米国への輸出に対する輸出義務期間(export obligation period)を90日から270日に延長すること、宝飾品製造の経済特区(SEZ)によるDTA(国内関税地域)での「逆ジョブワーク(reverse job work)」を許可すること、そしてSEZが関税の支払いを免除されて国内市場で販売できるようにすることなどが挙げられている。
宝飾品製造業者が宝飾品の輸出のために金を輸入する場合、こうした既製宝飾品の輸出は90日以内に行われなければならないが、そうでない場合、6%の輸入関税と3%のGSTが課される。
しかし、米国からの注文が突然枯渇したため、多くの輸出業者は宝飾品を出荷できずにおり、ゆえに輸出義務期間の延長を求めているのである。
業界はまた、政府に対し、SEZが輸入関税を免除された上で国内市場で製品を販売することを認めるよう求めている。
現在も輸出業者は国内市場での販売を認められているが、完成品には20%の関税が課せられ、国内メーカーと比較して競争力が低下している。
「逆ジョブワーク」とは、SEZが国内バイヤー向けの製造を許可されることで、遊休機械や生産能力を活用し、熟練労働者が安定した雇用を維持し、長年の努力の末に設立された工場の操業を継続できるようにすることである。
さらに業界からの要求には、新型コロナウイルス感染症パンデミック期間中の利子補給などの金銭的インセンティブ、米国への輸出に対する一時的な補助金、個人ローンの再構築や医療保険制度への加入といった労働者関連の福利厚生、そして輸出業者への新規市場開拓資金の提供といったマーケティング上の優遇措置などがある。
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Yoko Deshmukh
(日本語 | English)
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。
ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.
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