ケーララ州、インド初の「完全デジタルリテラシー州」に

 

Posted on 22 Aug 2025 21:00 in インドの政治 by Yoko Deshmukh

識字率だけでなくデジタルリテラシーも100%になったケーララ州です。



マハートマー・ガーンディー国家農村雇用保証制度(Mahatma Gandhi National Rural Employment Guarantee Scheme、MGNREGS)の下、州政府の推進したデジタルリテラシー・プログラム「Digi Kerala」を修了した人がケーララ州全体の218万7,000人に達し、同州は完全なデジタルリテラシーを達成した最初の州となった。
ピナライ・ビジャヤン(Pinarayi Vijayan)州首相が21日に公式宣言を行った。

By achieving 100% digital literacy, Kerala reaches another milestone - The Hindu

1980年代後半に完全識字運動を実施した同州は、デジタル格差を埋めるために強力な地方自治の仕組みを最大限に活用した。
2021年、州都ティルヴァナンタープラムから約25km離れた丘陵の農村地帯プラムパラ(Pullampara)で、数少ない銀行の1つに定期的に長い行列ができていることに気づいた政府職員がいた。
その多くは口座残高を確認するためだけに長距離を移動してきた労働者であり、日常生活に必要な基本的なデジタル技術の使い方を普及することが急務となった。
こうして「Digi Kerala」の前身となるプロジェクト「Digi Pullampara」が誕生した。

すぐに全区を対象にデジタルリテラシーに関する調査が実施され、3,917人のうち寝たきりの人を除く3,300人に研修が提供された。

「デジタル技術やスマートフォンの導入に消極的な高齢者に、新技術導入の利点と可能性を納得させるため、孫とのビデオ通話や、見逃したかもしれない連続ドラマのエピソード視聴、YouTubeでの農業などの新たな知識習得といったインターネット検索の利点を説明できたりすることを説得した」と同政府職員は説明する。

研修の中核チームは研修用に3つのモジュールで15のアクティビティを設計し、スマートフォンの基本的な使用方法からソーシャルメディアアプリケーションの操作、請求書の支払いや政府サービスの利用までを網羅した。
モジュールはAPJアブドゥル・カラム技術大学(APJ Abdul Kalam Technological University)が審査した。

国家デジタルリテラシー・ミッション(National Digital Literacy Mission)のガイドラインでは、トレーニングは60歳までの人々を対象としているが、「Digi Pullampara」および後の「Digi Kerala」プログラムでは、100歳を超える人々も含め、あらゆる年齢の人々が対象となった。
州内5工科大学の国家奉仕制度(NSS)ユニットと高等学校の学生が、ボランティアとしてトレーニングプログラムに協力した。

初めてスマートフォンを使った103歳の男性は、99歳のときに当時69歳だった息子に教えてもらいながら学び、今では農作業や自宅での請求書支払い、海外にいる娘とのビデオ通話に活用している。

プラムパラ・パンチャーヤットでは、域内15区のうち6区で携帯電話ネットワークがカバーされていないことが、このプロジェクトにおける最大の課題の1つであったと説明する。
地方への事業拡大に消極的な通信事業者との協議は失敗に終わったが、議員の介入により、最終的には地域に携帯電話基地局が設置された。

プログラムは研修だけで終わらなかった。
別のボランティアグループが各受講生の評価を行い、合格するには15の課題のうち少なくとも6つを完了する必要があった。
不合格者は再研修を受け、プッランパラでは参加者の96.18%が評価に合格した。

州首相は2022年9月、プラムパラをケーララ州初の完全デジタルリテラシーを備えたパンチャーヤット(村)と宣言し、プロジェクトを州全体に拡大する計画を発表した。

プラムパラの中核チームは州中に散らばる25万7,000人のボランティアを育成した。
州全体の834万5,000世帯の1,500万人が調査され、その中から218.8万人がデジタルリテラシーがないと判断され、トレーニングが提供された。
経済統計局も第三者評価を実施し、受験者の10%以上が不合格となった地方自治体には再トレーニングと評価が行われた。
プロジェクト関係者によると、参加者の99%にあたる合計218.7万人が評価に合格した。

デジタルリテラシーを新たに身に着けた最高齢は104歳であった。
評価に合格した人のうち、60歳から75歳が77万7,000人、76歳から90歳が13万5,000人、90歳以上が1万5,221人であった。
当局によると、130万人以上の女性、80万人以上の男性、そして1,644人のトランスジェンダーがプログラムを無事に修了したという。

2019年11月7日、当時のケーララ州Left Democratic Front政権は、インターネット接続は州住民の基本的権利とし、国内で初めてこの権利を保障する州となった。

2023年、同政府はインターネットの普遍的アクセスの確保と情報格差の縮小を目的としたケーララ光ファイバーネットワーク(Kerala Fibre Optic Network、KFON)プロジェクトの第1フェーズを発足させた。
貧困ライン以下の200万世帯にインターネットを無料で提供することを目指すこのプロジェクトは、これまでに1万4,000世帯以上にインターネットを提供し、さらに7万4,203世帯の商用住宅にも接続を提供している。

同政府は2024年に、地方自治体のすべてのサービスを統一プラットフォーム上でデジタル化して利用できるようにするための野心的なプロジェクト「K-Smart」を立ち上げた。これには、ビデオ会議による婚姻届や小規模建築物の建築許可の自己認証などが含まれる。

提唱者によると、誰もが基本的なデジタルツールの取り扱いに関する知識を身に付けることを目的とした「Digi Kerala」プロジェクトは、デジタル格差を解消し、人々が役所の前で列に並ぶことなく行政サービスにアクセスできるようにすることを目指す。

次なる目標「Digi Kerala 2.0」ではさらに踏み込み、すべての人が行政サービスにアクセスできるよう訓練し、サイバー詐欺に関する啓発講座を提供し、フェイクニュースを見分けて排除する能力を身につけ、責任ある安全なデジタル市民権を築けるよう支援する。






About the author

Yoko Deshmukh   (日本語 | English)         
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。

ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.



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