投票前に、どうしても伝えたいわたしの「恥」
Posted on 19 Jul 2025 21:00 in ASKSiddhiのひとりごと by Yoko Deshmukh
好むと好まざるとに関わらず、地球上のどこにいても、自らのアイデンティティは切っても切り離せるものではありません。
恥をさらしてでも、いま伝えたいことがある。
普段、政治的な投稿など一切しない。
だが、参議院議員選挙の投開票日を迎えた日本が、排他主義へと舵を切ろうとしているこの転機にあって、どうしても書き残しておきたいことがある。
それは、自らの差別心と、劣等感と、居場所のなさと、そこから生まれた矛盾を、正直にさらけ出すことだ。
日本を離れたのは、ただ居心地が悪かったからだ。
大学を中退し、誇れる能力もなかったわたしは、社会のどこにも居場所が見つからなかった。
友だちもできず、バイト先でも人間関係が築けない。
閉塞感のなか、逃げるようにインドへ渡った。
「きっとここで人生が変わる」
そう信じていたが、現実は違った。
インドでも、やはり自分はどこにも馴染めなかった。
いや、むしろ日本にいたときよりも殻にこもり、人と関わろうとすらしなくなった。
一時帰国のたびに、自分の「におい」や「見た目」が、日本の街並みから浮いていないかが気になる。
「インドにいるのに肌が白いね」と言われると、心のどこかで安堵してしまう。
長くインドに住んでいることを、無意識のうちに「恥ずかしいこと」と思っていたのだ。
実家近所のご婦人方が「やっぱり日本が一番でしょ」と無邪気に求めてくる同意にも、うなずくしかない空気がある。
かつて、夫(インド人)のスタートアップを手伝って東京で企業まわりをしていたときには、「発展途上国から金を稼ぎに来た夫婦」とでも言いたげな、冷たい視線と態度にさらされた。
15年経った今も、その痛みは消えていない。
日本に馴染めず、インドでも居場所がない。
だが、その選択はすべて自分がしてきたことだ。
そうである以上、自分自身の内側にこそ、向き合うべき問題がある。
「わたしは本当に、インドの人々を対等に見ているのか」
「日本人である自分が、無意識に『上』だと思ってはいないか」
そんな問いが、頭を離れない。
文化や価値観の違いに「馴染んではいけない」と、どこかで自分自身にブレーキをかけているのかもしれない。
そんななか、数年前に日本に招いた夫の姪は、学校で日本語を学び、経産省のインターンを経て、正社員として就職した。
数年もしないうちに、マッチングアプリで日本人の配偶者まで得た。
その順調な歩みを、本来なら喜ぶべきなのに、わたしは、自らの境遇との「差」として捉えて勝手に打ちのめされ、そして彼女やその周囲を見下すようになっていた。
それは、まぎれもない「差別」だった。
彼女との決定的な価値観の違いはあるとしても、わたしは生まれ育った国である日本との折り合いが、とうとうつかなかったのに対し、インドの、それも相当な田舎の出身であるはずの彼女が、わたしが決して得られなかった地位や生活を、「いともたやすく」実現しているように、少なくとも見える。
そのことに、納得が行かなかったのだ。
すなわち夫や(彼女を含む)その家族、そしてインドという国そのものを、もともと見下していたのだ。
だが、思い返せば、インドでわたしが差別を受けたことは、ただの一度もない。
むしろ、多くの人々はいまだに「日本」を、原爆を乗り越え経済成長を遂げた奇跡の国として見ている。
そしてその敬意のまなざしを、当然のように受け取っていた自分がいた。
そんなわたしがしてきたことは何か。
ないものに執着し、あるものを捨て去ってきただけだった。
わたしは、差別を許せない。
絶対に受け入れることはできない。
そう固く信じている。
だからこそ、自分の中にある差別心や劣等感、居場所のなさから来るゆがんだ感情を、いま正面から見つめたい。
そして、このどうしようもなく大きな矛盾を、少しずつでも克服していきたいのだ。
ご覧のように、これは、他人への批判ではない。
わたし自身が、最も見たくなかった自分と向き合う記録だ。
それでも、こうした正直な思いが、誰かが自分の中の偏見や矛盾と向き合うきっかけになれば、そう願っている。
なぜなら、その問いにこそ、わたしたちが安易に陥りがちな排他主義の本質が隠れているからだ。
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Yoko Deshmukh
(日本語 | English)
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。
ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.
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