新型コロナ感染再拡大で深部静脈血栓症(DVT)リスクに再注目

 

Posted on 17 Jun 2025 21:00 in インドあれこれ by Yoko Deshmukh

ワクチン接種でこのリスクを軽減できるんだな。



インドで、新型コロナウイルス感染者がやや増加し、これに伴う血栓症患者が増えている、という話題を見つけた。

Rising cases of COVID-19 bring to fore associated threat of deep vein thrombosis

インドでは、今年5月の最終週から新型コロナウイルス感染者数が増加しており、6月16日現在、国内の感染者数は7,264人となっている。
世界保健機関(WHO)は最近の報告書(2025年5月19日~25日の週)で、新型コロナウイルス感染症の活動は世界的には概ね低いものの、中米・カリブ海諸国、南米熱帯地域、南西ヨーロッパおよび北ヨーロッパ、西アジア、南アジア、東南アジア、東アジアの数か国で増加が報告されていると述べている。

ほとんどの症例は軽症で入院を必要としないが、感染中および感染後の深部静脈血栓症(DVT)などの健康リスクが再び浮き彫りになっている。
デリー医師会(Medical Association、DMA)会員のアニル・バンサル(Anil Bansal)氏は、次のように述べた。
「(DVTリスクは)コロナ感染から回復後も高いままであり、リスク比は感染後70日まで増加する。特に診断後最初の1週間が高く、その後数週間は高い水準を維持する」

DVTは、体の深部静脈の1つに血栓が形成されることで発症し、通常は脚に発生する。
この血栓が剥がれて血流に乗って移動する可能性があるため、危険視されている。
血栓が肺に詰まって血流を遮断すると、肺塞栓症を引き起こし、命にかかわることがある。

以前、デリーの「インド国立医学アカデミー(National Academy of Medical Sciences)」がまとめたDVTに関するタスクフォース報告書では、国内人口の高齢化と、医療サービスの提供に影響を及ぼす感染性および非感染性疾患の負担増加を考慮したDVTおよび肺塞栓症(PE)の発生率および負担の把握が早急に必要とされている。
加齢、男性、外傷、手術、長期入院、悪性腫瘍、神経疾患、中心静脈カテーテル、過去の表在静脈血栓症既往歴、静脈瘤がVTE発症のリスクを上げるとされる。
女性では、経口避妊薬の使用、妊娠、ホルモン補充療法が独立したリスク要因として確立されている。

タスクフォースでは、VTEの適切な予防と管理が不可欠であるものの、インドでは訓練を受けた医療専門家の不足、検査室の診断サポートや医薬品供給の不足、地域社会での認識欠如などの問題があると指摘されている。
パンジャーブ州「Cygnus Group of Hospitals」の医師らによると、新型コロナウイルスには「サイトカインストーム」と呼ばれる強力な炎症反応を引き起こす能力があり、通常の血液凝固の仕組みを阻害している。
研究では、患者、特に重症のコロナ患者は血液凝固亢進状態にあることが分かっており、加えてウイルスは血管の内側を覆う内皮細胞にも直接ダメージを与え、血栓形成のリスクをさらに高めている。

このため、入院中、場合によっては退院後にも、血栓予防法(血液をサラサラにする治療)を推奨する臨床ガイドラインが継続的に更新されている。
インドの医学界は新型コロナウイルスを呼吸器疾患としてだけでなく、血液凝固や心血管の健康に深刻な影響を与える全身血管疾患とみなしている。
医師らはコロナワクチンがDVTと肺塞栓症の発生予防に非常に有効であることが実証されていると強調する。

同じくパンジャーブ州Panchkulaの、ある総合病院の呼吸器科では、次のように説明する。
「ワクチン自体が少数の人にDVTを引き起こす可能性があるという懸念も提起されてきたが、このリスクは極めて低く、約100万人に1人程度と推定されている。このようなまれなケースでも、症状は一般的に軽度である。一方で、実際にコロナウイルスに感染すると、DVTまたは肺塞栓症を発症するリスクはかなり高くなる。こうした背景から抗凝固薬は新型コロナウイルス感染者に対する標準治療に組み込まれており、死亡事例を抑制している」

一方、WHOは現在主流の変異体(JN.1)や、監視中の変異体(LP.8.1、NB.1.8.1、XEC、KP.3.1.1、KP.3、LB.1)を引き続き追跡している。






About the author

Yoko Deshmukh   (日本語 | English)         
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。

ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.



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