インドの教育格差、農村部では都市部の4倍
Posted on 10 Sep 2026 21:00 in インドあれこれ by Yoko Deshmukh
14億人に対する教育の遍在はもちろん、その質についても、待ったなしなのではと強く思います。
「The Hindu」電子版で、インドの教育におけるジェンダー格差について、農村部と都市部との間で4倍もの開きがあるという記事を見つけたので、抄訳したい。
India’s education gender gap four times wider in rural areas than urban
第6回全国家族健康調査(National Family Health Survey、NFHS-6)の2023~24年のデータによると、インドでは男性の54.6%、女性の46.4%が10年以上の教育を修了している。
いずれの数字も前回調査(NFHS-5)から女性は5.4ポイント、男性は4.4ポイント上昇し、その結果、男女間の格差は9.2ポイントから8.2ポイントに縮小した。
しかし、この全国平均という数字は、実際にはほぼまったく異なる2つのグループを平均したものである。
都市部のインド人では、男性の64%、女性の61.5%が10年間の学校教育を修了しており、その差は2.5ポイントである。
一方、農村部では男性49.9%、女性39.7%で、格差は10.2ポイントに達する。
これは都市部の4倍の差である。
インドでは、都市部における中等教育のジェンダー格差はほぼ解消されたが、農村部では、そうなっていないことを示している。
州レベルで見ると、その違いはさらに際立つ。
10の州・連邦直轄領では、この指標で都市部の女性が都市部の男性を上回っている。
具体的には、シッキム(5.3ポイント)、ケーララ(4.6ポイント)、ウッタラーカンド(4.2ポイント)、ヒマーチャル・プラデーシュ(3.7ポイント)、西ベンガル(2.2ポイント)、ミゾラム(2.0ポイント)、ウッタル・プラデーシュ(1.7ポイント)、ビハール(0.6ポイント)、チャッティースガルとプドゥチェリー(それぞれ0.1ポイント)である。
一方、農村部の女性が農村部の男性を上回っているのは、ケーララの4.5ポイント、シッキムの4.3ポイント、メーガーラヤの3.2ポイントだけである。
ビハールでは、都市部の女性(51.9%)が都市部の男性(51.3%)をわずかに上回る一方、農村部では男性(44.6%)が女性(30.6%)を14.0ポイント上回っている。
ウッタル・プラデーシュでは、都市部では女性が1.7ポイント上回るが、農村部では男性が8.8ポイント上回る。
プドゥチェリーでは都市部の男女差は事実上ゼロだが、農村部では15.1ポイントもの差がある。
1つの州の都市と村の間にあるジェンダー格差は、その州と他州との違いよりも大きいことが少なくない。
これは単純に、農村部であることの不利益がすべての人に影響しているという話だと考えることもできる。
しかし、実際にはそうではない。
農村部に暮らすことによる不利益は、インドの男性よりも女性に、はるかに大きな負担をもたらしている。
全国で見ると、10年間の学校教育を修了した割合は、都市部の女性が農村部の女性より21.8ポイント高い。
男性の場合、都市部と農村部の差は14.1ポイントである。
農村部であることによる不利益は、女性では男性のおよそ1.5倍に達する。
都市から離れるほどジェンダー格差が拡大するのは、まさにこのためである。
この傾向は国内の大部分で見られ、特に一部の大きな州で深刻である。
マッディヤ・プラデーシュでは、都市部の女性は農村部の女性を28.0ポイント上回る一方、男性の都市・農村間の差は22.9ポイントである。
ジャールカンドでは、それぞれ29.2ポイントと18.1ポイント、ビハールでは21.3ポイントと6.7ポイントである。
ビハールの農村部の男性は都市部の男性をわずかに下回るだけだが、農村部の女性は都市部の女性を大きく下回っている。
中等教育が村々まで行き届いていない州では、真っ先に取り残されてきたのは娘たちである。
2つの数字を並べてみれば、その違いを無視することは難しい。
ケーララでは、農村部の女性の84.6%が10年以上の学校教育を修了している。
一方、ビハールでは、都市部の女性でもその割合は51.9%である。
グジャーラートの都市部の女性も51.9%、西ベンガルは52.1%、ラージャスターンは52.9%である。
ケーララの農村部に暮らす女性は、ビハールの都市部に暮らす女性よりも、10年以上の学校教育を修了した割合が30ポイント以上高く、インド人男性の全国平均をも上回っている。
州と州の間、そして同じ州の都市と村の間にある格差は、注目を要する重大な要因である。
インドでは、少女がどのような教育を受けられるかを決めているのは、少女であるという事実よりも、主として「どこに生まれたか」である。
ケーララについて触れるべき理由は、もう一つある。
同州では都市部と農村部の数字がほぼ同じで、88.7%に対して84.6%、その差は4.1ポイントにすぎない。
全国では、この差が21.8ポイントである。
この点でケーララに最も近いのは、ヒマーチャル・プラデーシュ(6.6ポイント)、プドゥチェリー(6.8ポイント)、ゴア(6.9ポイント)である。
つまり、男女間の格差が縮小したすべてのケースで、それに先立って都市・農村間の格差が縮小していた。
この傾向には、1つだけ例外がある。
最も年齢の低い層である。
2~4歳児の就学前教育への参加率は、都市部で50.0%、農村部で46.0%であり、その差は4ポイントにすぎない。
これに対し、女子の学校への通学では15ポイント、女性の中等教育修了では22ポイントの差がある。
一部の州では、農村部の就学前教育への参加率が都市部を上回っている。
マハーラーシュトラ州では農村部が68.0%なのに対し、都市部は54.3%。
プドゥチェリーでは76.5%に対して60.7%、アーンドラ・プラデーシュでは72.1%に対して64.1%である。
テーランガーナー、オディシャ、ビハールでも、この逆転が見られる。
最も可能性の高い説明は、アンガンワディ(anganwadi)*のネットワークである。
アンガンワディは農村部の制度として設けられ、民間の就学前教育施設が行き届かない地域で幼児教育を提供している。
都市部では、親がこうしたサービスの費用を負担する場合が多い一方、農村部では主として公的サービスとして利用している。
そして州によっては、行政によるサービス提供がより効果的に機能している、というわけである。
これは、公的サービスは常に民間サービスより遅れているという思い込みを修正するうえで有用な事例である。
このようにインドでは、政府が運営し、農村部に重点を置いた就学前教育制度において、都市・農村間の格差が最も小さくなっている。
格差が最も大きくなるのは、特に女子の場合、家族が自ら通学手段を手配しなければならない学校に依存する地域である。
この20年間、インドにおける女子教育をめぐる議論はジェンダー格差に焦点を当ててきた。
奨学金の提供、条件付き給付、啓発キャンペーンなどの取り組みは、息子と娘のどちらを選ぶかという判断を迫られる家庭を対象としてきた。
ジェンダー格差が全国的に存在し、しかも大きかった時代のインドでは、この問題設定は適切だった。
しかし、都市部では格差が2.5ポイント、村では10.2ポイントとなっている現在のインドでは、こうした捉え方は以前ほど適切ではない。
NFHS-6によると、インドの少女の大多数が直面している主な制約は、もはや家庭内の意思決定ではない。
むしろ、近くに中等教育を受けられる学校があるかどうかである。
ケーララやヒマーチャル・プラデーシュのように、そうした学校が利用できる地域では、説得を行わなくてもジェンダー格差は消えている。
しかし、学校そのものが存在しない地域では、どれほど説得しても格差を解消することはできていない。
*アンガンワディ(anganwadi): インド政府の統合児童発達サービス(Integrated Child Development Services、ICDS)の下で、主に乳幼児や妊産婦を対象に、就学前教育、栄養、保健などのサービスを地域で提供する施設・仕組み。
注: すべての数値は、International Institute for Population SciencesによるNFHS-6(2023~24年)およびNFHS-5(2019~21年)のファクトシートに基づく。学校教育に関する数値は15~49歳の女性と男性を対象としている。マニプールはNFHS-6では調査されていないため除外した。人口の少ない連邦直轄領の都市部・農村部の推計は限られたサンプルに基づくため、慎重に解釈する必要がある。
(著者のKaran Babbar氏はXLRI Jamshedpurの経済学助教授、Raunak Maitra氏はAzim Premji Universityの経済学Academic Associate。)

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Yoko Deshmukh
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インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。\r\n\r\nASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.
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