22年前、「バンガロール」は動詞になった

 

Posted on 27 Jul 2026 21:00 in アーカイブ特集 by Yoko Deshmukh

固有名詞の動詞化は、当時のインド職場でも「○さんに相談する」を「○る」みたいにして使うことが一般化してて、おもしろかったな。



22年前の本日、ASKSiddhiでは、インドのIT都市バンガロール(Bangalore、現Bengaluru)が英語の「動詞」になった、という話題をピックアップしていた。

新しい動詞「バンガロールする」 2004.7.26(月)

なんと、ChatGPTが、元になった22年も前の2004年7月23日付「The Times of India」の記事の電子版も見つけてくれた。

Bangalored_ function - transitiveverb! _ Bengaluru News - The Times of India

当時、米国を中心にインドへの業務委託、いわゆるオフショア・アウトソーシングが急速に広がっていた。

その流れから、仕事がインド、特にバンガロールへ移管されることを意味する「Bangalore」、仕事を海外に移されて職を失うことを意味する「Bangalored」という使い方が登場した。

元記事では、「Don't Get Bangalored」とプリントしたTシャツまで15ドル99セントで販売されていたことを伝えている。

「高すぎるから、そのTシャツの製造自体をアウトソーシングしたらどうか」というインド人のジョークまで登場していた。

当時、Bangaloreについて、中国の都市Shanghaiに続いて「動詞になった2番目の現代都市かもしれない」と紹介していた。

Shanghaiは現在も「shanghai」という動詞として辞書に掲載されている。
もともとは、人を酒や薬などで酔わせたり、力ずくで船に乗せて船員にすることを意味した言葉で、現在は広く「人をだましたり強制したりして、望まない立場に置く」という意味でも使われる。
語源はもちろん、中国の上海(Shanghai)である。

あらためて調べてみると、英語には地名から生まれ、もとの場所とは別の意味を持つようになった単語が意外に多い。

中でも面白いのが「meander」だ。
「曲がりくねって進む」「あてもなく歩き回る」という意味で普通に使われる英単語だが、語源をたどると、現在のトルコを流れるMenderes川、古代のMaiandros川に行き着く。
この川が大きく蛇行して流れることから、川の名前そのものが「曲がりくねる」という意味になった。
英語では名詞として1599年、動詞として1612年ごろから使われているという。

「Balkanize(balkanise)」も地名から生まれた動詞だ。
バルカン半島(Balkans)が複数の国家に分裂していった歴史から、国や地域、組織などを、小さく、しばしば互いに対立する集団に分裂させることを意味するようになった。

22年前の記事に戻ると、当時の「The Times of India」は、「Bangalored」が定着すれば、いずれ辞書にも加えられるだろうと予想していた。

2026年の現在、「Bangalore」はWiktionaryでは、業務や職をインド、特にBengaluruへアウトソーシングするという意味の動詞として掲載され、「Bangalored」もその過去形・過去分詞として残っている。

少なくとも今回確認したMerriam-Webster、Cambridge、Collins、Oxford Learner's Dictionariesでは、「Bangalored」を一般的な見出し語として確認することはできなかった。

2004年当時には米国のアウトソーシング論争を象徴するほど注目された「Bangalored」は、完全に消えてしまったわけではないが、「shanghai」や「meander」のように、時代を超えて広く使われる一般的な英単語にまでは育たなかったようだ。

なお、22年前の記事には、Bangaloreが以前から「有刺鉄線を取り除く」という意味でも使われていたとの記述がある。

これは今回、元になった「The Times of India」の記事を読み直してみると、少し意味が異なっていた。
原文が紹介しているのは動詞としてのBangaloreではなく、1912年に英国軍の大尉が考案した「Bangalore torpedo(バンガロール爆破筒)」である。
爆薬を入れた筒を使って有刺鉄線などの障害物に通路を開くためのもので、第2次世界大戦のノルマンディー上陸作戦でも使用されたという。

かつてはインドへのアウトソーシングを象徴する言葉として世界に広がりかけていた「Bangalore」。
その言葉自体は英語の主役として定着しなかったとしても、バンガロールが世界のIT産業に与えた影響まで消えたわけではない。
むしろ現在では、「Bangalored」という少々皮肉な動詞が生まれた時代そのものが、インドが世界のIT産業の大きな一角を占めるようになっていった時期を映す、ひとつの言葉の記録になっている。
 

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About the author

Yoko Deshmukh   (日本語 | English)         
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。\r\n\r\nASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.



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