Love Paradeから20年: Rummy Sharma氏が見せるインド電子音楽の現在地

 

Posted on 19 Apr 2026 21:00 in エンターテインメント by Yoko Deshmukh

20年前のASKSiddhi記事を掘り起こし、現在につなげるシリーズです。



ASKSiddhiアーカイブを探っていたら、きょうからちょうど20年前の2006年、当時ベルリンで開催された世界最大のテクノイベント「Love Parade」に、初のインド人DJとしてRummy Sharma氏が招かれたという記事を見つけた。

ベルリンのLove Parade、インド人DJ初参加 - 19th April 2006

当時、インドにおいて電子音楽はまだ「一部の好事家のもの」に過ぎなかった。
その中でRummy氏は、ドイツの伝説的DJでありLove Parade創設者であるDr. Motteに見出され、250万人規模の観衆を前にプレイするという歴史的機会を得た。
しかも、Sven VäthやTiestoと並ぶトップDJの一角として、メインステージであるVictory Towerに立つという破格の扱いである。

当時、Rummy氏は語っていた。
「いつかLove Paradeのようなイベントをインドでもやりたい」と。

それから20年後の2026年。

Rummy Sharmaは、もはや「世界に出ていくインド人DJ」ではなく、「インドから次世代を育てる存在」へと立場を変えていることが、最新のRolling Stoneの記事から見て取れる。

Veteran DJ Rummy Sharma on What's Shaping Electronic Music

Rummy Sharma氏公式インスタグラム

同氏が主宰する「The Bootcamp Goa」は、単なる音楽ワークショップではない。
電子音楽を学ぶための、極めて実践的かつ選抜型の教育プラットフォームである。

参加者は厳選され、「売れるため」ではなく「成長するため」に集まる。
ネットワーキングやフェス出演を目的とするのではなく、スキルと姿勢そのものが問われる場である。

この20年で最も象徴的な変化は、「輸入」から「内製」への転換であろう。

かつてRummy氏は、ベルリンという中心地に「インド」を持ち込もうとしていた。
しかし現在のBootcampでは、インド人メンターが中心となり、国内で完結する教育と創造の基盤が構築されつつある。

これは単なる人材の問題ではない。
インドの電子音楽シーンが、自らの文脈と自信を獲得したことの証左である。

さらに興味深いのは、Rummy氏が次の軸として提示している「DAWレス」という考え方である。

誰もがソフトウェアで音楽制作できる時代において、あえてハードウェア中心のライブ表現へと回帰する動きである。
そこには、「本当に演奏しているのか」という問いに対する、明確な答えがある。

かつてターンテーブルが技術であり芸術であった時代のように、電子音楽は再び「身体性」を取り戻しつつある。

2006年のRummy氏は、インドの存在を世界に証明しようとしていた。
2026年のRummy氏は、インドの中から世界に通用する表現を育てようとしている。

外に向かうエネルギーは、内側の土壌づくりへと変化した。
その結果、インド発のアーティストがベルリンやヨーロッパのクラブシーンに自然に入り込む時代が到来しつつある。

あの日、250万人の前で鳴らしたビートは、単なる一夜の成功ではなかった。
それは、20年後に続く「教育」と「文化形成」の起点だったのかもしれない。

Rummy Sharma氏がかつて夢見た「インド版Love Parade」は、巨大なフェスという形ではなく、より静かで確実な形、すなわち人を育てる場として、すでに実現し始めているのである。

Love Parade: 1989年にベルリンで誕生。Dr. Motteによって「平和・愛・音楽」を掲げる小規模な音楽デモとして始まり、ベルリンの壁崩壊後の自由の象徴として発展した。1990年代には急成長し、2000年前後には100万人を超える参加者を集め、最盛期には150万〜250万人規模の世界最大級のテクノイベントとなった。しかし、資金問題による中断を経て2010年の群衆事故を機に終了した。その後も理念は受け継がれ、2020年代には新たなイベント「Rave The Planet」として再始動し、音楽文化の保護と社会的価値の再認識を目的とする活動へと変化している。
 

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About the author

Yoko Deshmukh   (日本語 | English)         
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。\r\n\r\nASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.



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