インドのテレビ視聴者、2029年に10億人超へ

 

Posted on 24 Jan 2026 21:00 in インドあれこれ by Yoko Deshmukh

写真は2024年9月に訪問したメガーラヤ州の「生きている橋(Living Root Bridge)」です。



インドのテレビ視聴者数が、2029年までに約10億3000万人に達する見通しである。
インド経営大学院アーメダバード校(Indian Institute of Management Ahmedabad、IIMA)の研究グループが発表した報告書が明らかにした。

India’s TV audience to touch 1 billion by 2029: IIM report

ヴィシュワナート・ピンガリ(Viswanath Pingali)氏とアンクル・シンハ(Ankur Sinha)氏が執筆した報告書「Future of TV in India(インドにおけるテレビの未来)」によると、インドの急速な経済成長、可処分所得の増加、識字率の向上が、コンテンツ消費の在り方を大きく変え、テレビ視聴者数の持続的な拡大を後押ししているという。
本研究は、IIMAの人工知能センター「Centre for Data Science and Artificial Intelligence(CDSA)」の後援を受けて実施された。

報告書は、テレビ視聴者数が年平均約2.37%の割合で増加すると予測している。
特に今後の増加分の大半は、農村部や低所得州で発生すると見込まれており、これらの地域では、所得水準が徐々に高所得地域に近づくことで、テレビの普及と視聴が加速すると分析している。

注目されるのは、インターネット普及率の上昇とテレビ視聴者数の増加との間に、強い相関関係が確認された点である。
報告書によれば、インターネット加入者数の増加はテレビ視聴率の大幅な上昇と結びついており、デジタル接続はテレビに取って代わる存在ではなく、むしろ補完的な役割を果たしている。
著者らは、今後もテレビとオンライン動画プラットフォームが共存し、並行して成長していく可能性が高いと指摘している。

研究チームは、統計的回帰分析の枠組みを用い、複数年にわたる州別のテレビ視聴率の変動を検証した。
分析モデルには、インターネット加入者数、一人当たり州内総生産(GSDP)、識字率、扶養比率、所得水準、マイクロクレジットへのアクセスといった変数が組み込まれている。
その結果、都市化の進展や家庭インフラの改善が、特に農村部や低所得地域において、テレビの普及率向上を促進することが示唆された。

報告書は、「テレビの普及率が高まり、所得が上昇するにつれて、一人当たり所得が全国平均を下回る新興市場では、テレビの所有率と消費量が不均衡に増加すると予想される」と指摘している。
ピンガリ氏は、成熟した消費メディアとしてのテレビが、どのような成長軌道を描いているのかを、データに基づいて把握する指標を確立することが本研究の目的であったと述べる。
「特に農村部や低所得地域において、所得の増加と識字率の向上が、テレビの普及と消費を促す乗数効果を生み出していることは明らかだ」としている。

さらに報告書は、社会発展におけるテレビの役割にも言及する。
インドの農村部では、同一言語字幕などの機能が識字率の向上に寄与しており、テレビ番組が個人の自立や経済的自立、さらにはジェンダー規範に対するより進歩的な意識形成にも影響を与えていると指摘している。

本分析は、テレビが依然としてインド社会の構造に深く浸透していることを示すと同時に、将来の成長を形作る人口動態的特徴を浮き彫りにしている。
著者らは、提示した視聴者推定モデルについて、インドがなお社会経済的移行期にある中で、テレビの継続的な重要性を学術的に評価するための枠組みを提供するものだとしている。

*統計的回帰分析: 複数の要因(変数)が、ある結果にどの程度影響を与えているかを数量的に分析する統計手法である。本件では、インターネット加入者数、所得水準、識字率などが、テレビ視聴率の変動とどのように関係しているかを検証するために用いられている。

*社会経済的移行期: 経済構造、所得水準、人口構成、生活様式などが、一定の方向へ大きく変化している過程にある段階を指す。インドの場合、農村から都市への人口移動、所得上昇、教育水準の向上などが同時進行している状況を意味している。






About the author

Yoko Deshmukh   (日本語 | English)         
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。

ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.



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