IITボンベイ、深海水でデータセンター冷却へ道筋

 

Posted on 29 Aug 2025 21:00 in インド科学技術 by Yoko Deshmukh

確かに、インドというより広く海洋国家で検討できそうなソリューションだよね。



インド工科大学(IIT)ボンベイ校が、新たな研究による有望なソリューションとして深海水冷却(DSWC)を発表した。

IIT Bombay charts path to cool data centres using deep ocean water

デジタル需要の増大と比例するエネルギーコストを少しでも削減すべく、データセンターは既に世界の電力の約1~1.13%を消費しているとされる。
この電力の約4割は大規模なサーバーファームの冷却に使用されており、エネルギー効率の高い代替手段が不可欠となっている。

同校のグルバラン・アンナードゥライ(Gurubalan Annadurai)教授、カシーシュ・クマール(Kashish Kumar)博士、そして卒業生のモイン・アリ・サイード(Moin Ali Syed)氏が率いるこの研究では、深海層の冷水を用いてエネルギー集約型データセンターを冷却する方法の実現可能性を評価するための体系的な枠組みを提案している。
この方法はエネルギー消費を最大79%削減し、わずか8か月で投資回収を可能にするとしている。

研究の筆頭著者であるクマール博士によると、「DSWCシステムでは、深海層から冷水が長いパイプラインを通って陸上施設に輸送される」という。

研究者らはアンダマン諸島およびニコバル諸島をプロトタイプ地点として、海洋データを分析することで、冷却に最適な深海冷水域を特定した。
この海域の深海(水深2770メートル)の水温は年間を通して18℃と安定しており、安定した性能を発揮できると期待されている。

水は約2.78キロメートルのパイプラインで陸地まで輸送する。
研究チームは効率を最適化するため、強度・耐久性、そして塩分・高圧・生物付着といった海洋環境への耐性を備えた高密度ポリエチレン(HDPE)パイプを推奨している。

研究ではまた、周囲の温度に基づきパイプライン各部位の断熱材の厚さを調整することで、熱の上昇を防ぎコストを削減する断熱戦略も開発した。

この仕組みを100メガワット級の仮想データセンターでテストした結果、DSWCは従来の空気冷却機と比較して年間エネルギー消費量を79%削減できることがわかった。
さらに二酸化炭素排出量も同程度削減でき、環境に負荷の少ない代替手段となり得る。

平均電力コストを1kWhあたり0.0851ドル、24時間365日稼働と仮定すると、パイプライン・熱交換器・空気ダクトなどのメンテナンスや設備投資を考慮しても、投資回収期間はわずか8か月と推定されている。

一方、研究者らは、DSWCは沿岸地域、特に深海で冷たい海水に到達できる島しょ部で最も効果を発揮するとし、内陸部や海水深から遠い場所では設置コストが大幅に上昇する可能性があると指摘する。

今回の研究ではデータセンターに焦点を当てているが、病院施設、産業処理装置、淡水化プラント、熱帯沿岸都市の住宅や商業ビルなど、さまざまなセクターへの応用が検討されている。

研究者らは、技術を世界規模で展開するためには国際協力と政策支援が重要であると強調。特に島しょ国や発展途上国は、エネルギー依存度の低減と環境に負荷の少ないインフラ整備から恩恵を最も受けるだろうと主張している。






About the author

Yoko Deshmukh   (日本語 | English)         
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。

ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.



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