インド最大の輸入先に躍り出たケニア紅茶

 

Posted on 15 Mar 2025 21:00 in インドビジネス by Yoko Deshmukh

どちらもイギリスの旧植民地だもんね。写真は昨年利用したコルカタの空港内フードコートです。



1月23日付けと少し古いが、中国に次ぐ世界最大の茶生産国であるインドが、ケニア産紅茶の最大の輸入国であるという興味深い記事を見つけた。
実際、国際連合食糧農業機関(FAO)の「Intergovernmental Group on Tea」によれば、インドは2022年時点で年間約13億3,000万キログラム(1,330 million kg)ほどの茶葉を生産し、国内消費量はその8割を超えるとされている。
また、ケニアは世界最大の黒茶(ブラックティー)輸出国としても知られ、輸出量ではインドを上回っている。

Indian tea industry worried about 288% jump in imports from Kenya

ケニア茶局(Tea Board of Kenya)によると、インドへの輸出は2023年1月から10月までの353万キログラムから、2024年の同時期には288%急増して1,371万キログラムとなり、同国最大の茶輸入国になったという。

一方インド茶局(Tea Board of India)の2024年の茶輸出に関する報告書によると、インドの茶輸出量は2023年1月から10月までの1億8,446万キログラムから、2024年の同時期に2億914万キログラムに達し、増加率13%強を記録した。
輸出された茶の大部分はアッサム州産と西ベンガル州産が占め、両州がインド国内の生産量全体の約6割近くを担っている。

しかし一方で、ケニアからの茶葉輸入の急増は、インドの茶葉生産者や貿易業者にとって懸念材料となっている。
インドは2024年に国内の茶葉生産量が5,000万キログラム以上減少し、アッサム州では約2,000万キログラムの収穫量減少を記録しているものの、長年にわたる供給過剰状態で国内の茶葉価格が伸び悩んでいるためだ。

ある茶葉生産者は「ここ数か月のケニアからの輸入増加は、国内での供給過剰による国産茶葉の価格が伸び悩む中、憂慮すべき状況となっている。
販売業者によっては、低価格な同国産およびイラン産やベトナム産の輸入茶葉を国産と偽って出荷している事例もある」と述べた。

インド茶葉輸出業者協会(Indian Tea Exporters’ Association)のアンシュマン・カノリア(Anshuman Kanoria)会長も「茶葉の無秩序な輸入と(偽装)国産茶葉としての再輸出は、インド産茶葉のイメージ、需要、価格に影響を及ぼしている」と指摘している。

ケニアからの輸入茶葉の平均価格は1キログラムあたり156.73ルピーで、2024年10月までの入札価格においてアッサム州産茶が落札した1キログラムあたり252.83ルピーに比べるとかなり低い。
また、インドは安全基準(残留農薬や重金属など)を厳格化してきたものの、安価な輸入茶葉の流入が続くことで、「北インド茶評議会(North Indian Tea Council)の品質監視機能が形骸化しかねない」という声もある。
さらに、ケニアのほか、ブルンジ、マラウイ、タンザニア、ウガンダといった他のアフリカ諸国からの低品質茶葉が、ケニアのモンバサにある茶葉入札所を通じてインドに流入する可能性も否定できないと業界関係者は懸念している。

参考文献/出典:
FAO: Intergovernmental Group on Tea
(インドの茶生産量・世界との比較データなど)

International Tea Committee (ITC) Annual Bulletin
(ケニアが世界最大の黒茶輸出国であることについての統計)

Tea Board of India, Statistics
(アッサム州と西ベンガル州の生産シェア、各年の輸出量など)

Ministry of Commerce & Industry, Government of India
(インド国内の茶生産量動向、主要産地の生産減少など)

Business Standardなど各種インド国内メディアの報道
(低品質輸入茶葉やモンバサ入札所経由の流通に関する報道)


 






About the author

Yoko Deshmukh   (日本語 | English)         
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。

ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.



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