タミル・ナードゥ州がインダス文明時代の文字解読に莫大な賞金
Posted on 09 Jan 2025 21:00 in インドあれこれ by Yoko Deshmukh
リンギスティックの宇宙への誘いだね。The Harappa ruins image is from Britannica.
1月5日、タミル・ナードゥ州のスターリン(M.K. Stalin)首相は、インダス文明(ハラッパー文明)時代の文字解読に成功した専門家や団体に100万ドルの賞金を約束すると発表した。
Why is deciphering the Indus script important? | Explained
インダス文明とドラヴィダ人のつながりの可能性を見い出すきっかけにつながるか、注目されている。
インダス文明は青銅器時代(紀元前3000~1500年)に、同時代のエジプト文明およびメソポタミア文明を合わせた面積よりも広い範囲となる、現在のインド、パキスタン、アフガニスタンにまたがる地域で栄えた。
パキスタンの考古学者、Ahmad Hasan Dani氏が1973年12月号のUNESCO Courier誌で語ったところによると「中央アジアおよび西アジアからインドへの古代移住ルート」全域にわたったとされる。
しかし同時代のメソポタミア文明やエジプト文明で発見された文字の解読が進んできたのに対し、インダス文字は多くが解読されていない。
インダス文字には原ドラヴィダ語の言及があるという説を唱える研究者も多い。
そのひとりであり、2018年に逝去したIravatham Mahadevan氏は、インダス文字は「非アーリア語かつ先アーリア語である」と、「確固とした考古学的、言語学的証拠」を挙げ、「この地域の言語(ドラヴィダ語)をコード化した文字体系である」と主張した。
同氏はドラヴィダ語説を支持する相当な言語学的証拠として、インダス地域におけるドラヴィダ語の一種であるブラーフィー(Brahui)語の存在、ドラヴィダ語のプラークリット(Prakrit)方言への影響などを挙げた。
タミル・ナードゥ州政府考古学局(TNSDA)が2年間にわたって実施したプロジェクト「Documentation and Digitisation of Graffiti and Tamili (Tamil-Brāhmī) Inscribed Potsherds of Tamil Nadu(タミル・ナードゥ州の落書きとタミル語(タミル・ブラーフミー文字)の銘文が刻まれた土器片の文書化とデジタル化)」によれば、州内の考古学遺跡の発掘中に発見された落書きのほぼ90%が、インダス文明で発見されたものと類似している。
「(前略)単独および複合した形で発見された落書きの形状とその変形は(中略)インダス文字や標識は痕跡を残さずに消えたのではなく、むしろ異なる形に変化または進化したと考えられる」と、同研究を主導したポンディシェリー大学の元教授で、TNSDAの学術研究顧問であるK. Rajan氏と同部門の共同ディレクターであるR. Sivanantham氏は結論付けている。
同研究のデータセットによると、州内140か所から15,184個の落書きが刻まれた土器片が報告され、うち14,165個が記録され、類似性が比較検討された結果として「文化交流の可能性」が指摘されている。
最近の年代測定によると、インダス渓谷の銅器時代、南インドは鉄器時代であり、「直接または中間地帯を通じた文化交流の可能性が高い」とされる。
研究ではさらに、特に鉄器時代の墓から、北方に由来することが定説とされている紅玉髓や瑪瑙のビーズ、高錫青銅製品が大量に発見されたことが接触の手がかりとなると述べており、調査、発掘、歴史言語分析を呼びかけている。
About the author
|
|
Yoko Deshmukh
(日本語 | English)
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。
ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.
|
User Comments