20年前、日本を飛び出してきたわたしだ。

若いころから、心にいろいろな問題を抱え、生きづらさに苛まれていた。
ある時、もしかすると環境を変えてみたらよいのではと思い立ち、寒い地方が好きなわたしは北海道で住み込みのアルバイトをしながら、少しずつ貯金をし、さらに遠いところへ行く準備を進めていた。
頭脳もお金も学歴もなかったわたしにとって、長期間、海外で暮らせるオプションは多くなく、ワーキングホリデーや、アメリカやカナダでの政府認定ナニー（一般家庭に住み込んで子どもたちの世話をする職業で、家賃や食費は基本的に無料かとても安く滞在できるオプション ）を検討していた。

そこから紆余曲折を経て、それまでにコツコツ貯めたなけなしのお金で向かったのがインドだ。
暑いのが苦手なはずのわたしは数年後、この国を第2の故郷とした。
すさまじい変化とパワーに巻き込まれつつ、消えない心の問題を抱えながら、早くも20年が経過した。

そしてこの第2の故郷で出会った第2の家族の一員が昨日、とある日本人男性と結婚した。
この女性を幼いころから知るわたしは、「おめでたい」という常識的な感覚とは違う、ある不思議な感慨を抱いてこの現象を見つめずにはいられない。
そして今は抽象的な、つかみとれそうでつかめない、その何かを探す旅が始まりそうな気がしている。

わたしが息苦しさを感じ、逃げ出すことにした国。
その後の人生の舞台として選んだ国。
この2つの国の間には、あまりにも異質な文化や慣習が横たわっており、わたしは今でもほとんどその中身を、分析はおろか、正確に把握できていない。

それでも、この方の日本での人生が、わたしのインドでの人生がそうであったように、愛と理解に満ちたものとなるよう、陰ながら祈る。

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