「見えない」のに後遺症レベルの公害に立ち向かうムンバイーの人
Posted on 04 Jan 2023 21:00 in ASKSiddhiのひとりごと by Yoko Deshmukh
あの音を「懐かしい」なんて言う人もいるけど、その真っただ中で暮らしてみてごらん。
プネーをはじめ、インドの大都市での暮らしは、オートリクシャーのエンジン音から、工事や建設の現場からの轟音、結婚式やお祭りでの太鼓やトランペット、また大音量の音楽など、騒音と無縁ではいられない。
そんな騒音に業を煮やして、およそ20年前からキャンペーンを展開しているムンバイーの活動家について「Bloomberg」が紹介していた。
No-Honking Days and Noise Barriers Aim to Quell Mumbai’s Cacophony
その人の名前はスマイラ・アブドゥラリ(Sumaira Abdulali)さん。
2003年以来、騒音公害と闘い続けている。
アブドゥラリさんと、自身が立ち上げたアワーズ(Awaaz、ヒンディー語で「騒音」)財団では、騒音に関する環境規制を巡る公益訴訟をいくつも起こし、学校、病院、裁判所、礼拝所から100メートル以内でのスピーカーの使用が全面的に禁止されることになったことをはじめ、騒音対策に有効な10以上の判決を勝ち取った。
世界保健機関(WHO)では、騒音公害は聴覚だけでなく、睡眠、脳の発達、心臓血管の健康にも悪影響を及ぼし、人の健康に対する環境上の最大の脅威であると警告している。
2020年にインド国立環境工学研究所(National Environmental Engineering Research Institute )が行った調査によれば、ムンバイーとその周辺地域の騒音レベルは法定基準を大幅に超えていることが明らかになった。
調査書では、「大気汚染や水質汚濁など、目に見えるものと異なり、騒音はゆっくりと人の健康を脅かしていく」と警鐘を鳴らしている。
1,200万人の人口を抱えるムンバイーのように急成長する大都市では、騒音との戦いは近年ますます激しさを増している。
例えば、建設現場では周囲を防音壁で囲むことが義務付けられているにも関わらず、高価なため設置しない開発業者も後を絶たない。
そうした現場周辺での騒音が100デシベル近くに達することを、アワーズ財団では把握している。
また、ムンバイーで主要鉄道駅に通じることで利用者の多い陸橋「JJ Flyover」周辺では、騒音は「わずか15分間さらされただけで聴覚に後遺症を伴う損傷を引き起こす恐れがある」と米国疾病対策予防センター(CDC)が規定する110デシベルに達している。
特に最悪な騒音とされているのはクラクションで、財団ではクラクションの使用量を測定する装置を車に搭載し、その回数に応じて自動車保険の減免といったインセンティブをドライバーに与える保険商品や、信号機のセンサーで交通密度を検知し、クラクションを鳴らしたくなる衝動を抑えることを目指すダイナミックシグナリング(dynamic signaling)の導入などを提案している。
ムンバイーでは2008年にインド初の「ノー・クラクション(No-Honking)デー」が制定され、警官による交通騒音に関する啓発パンフレットの配布や、違反者には最高1,000ルピーの罰金を科すなどの取り組みを始めた。
現在は毎週水曜日に市内各所に警察官を配備、クラクションを制限したり、デシベル計で騒音レベルを計測したりしている。
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Yoko Deshmukh
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インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。
ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.
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