ソーシャルメディアでの発信、盗難事件を動かす
Posted on 14 Dec 2016 23:00 in トラベル・インド by Yoko Deshmukh
何かを得ようとするときには何かを失う、ということが凝縮されているような気がした一件でした。
最近、インド鉄道の利用者が、要望や懸念をツイッターやフェースブックなどのソーシャルメディア経由で発信し、それに対して鉄道省(Ministry of Railway)が(場合によっては警察など管轄を超えた連携をして)誠実に応答するという事例が増えている。
長らく普及が遅れていたインターネットだが、安価なスマートフォンの急速な普及をおかげとして、誰もがアクセスできるチャンスを得られるようになってきたインド。
本日は、こんな事例が紹介され、確実な変化がこの国にも訪れていることを実感している。
Twitter & Railways Go Hand in Hand: How Travellers Received Help When a Handbag Was Stolen
トラを観察できる自然公園もあるマハーラーシュトラ州ナーグプル(Nagpur)周辺には、良好なキャンプスポットが点在しており、プネ在住の知人の中には何度も出掛けたというイギリス人もいる。
この記事では、ある若い男性が友人グループでキャンプを楽しんだ後、ナーグプルから特急列車「ガリブラス・エクスプレス(Garibrath Express)」でプネへ戻る途中、メンバーのひとりが車両内に置いていたカードや現金などの財布入りのバッグを何者かに盗まれ、そのことを鉄道省アカウントに宛ててツイッター上で通報したところ、予想をはるかに上回る行政の連携とサポートを得られた、その顛末の一部始終を紹介していた。
結局、盗まれたバッグはまだ見つかっていないようだが、「何よりも1通のツイッター投稿で、鉄道省が全面的な支援を約束してくれたばかりか、即座に停車駅ごとの関連部署と連携し、到着したプネではプラットフォームにまで警察が迎えに来てくれて、親身になって事情を聴いてくれたことに感動した」と語っている。
こうした奇跡とも思えるような出来事には、不思議と困ったときに、たいてい遭遇する。
これほど大規模なものではないとしても、何かをなくしたときには必ず誰かが助けてくれたり、他のもっと大切なものが見つかったりする。
インドに長らく住んでいるが、わたしはこの国が心から好きとは言えないし、たぶんこれから先もそれほど好きにはなれない気がする。
この記事に接したときも、「インド鉄道省と警察の連携はすごい」というような意見よりも先に、列車内の強烈なトイレ臭がまず脳天に蘇ったほどだ。
かといってインドが嫌いということではなく、何らかのつながりがあることを誇りに思えることも多くある。
それに時々日本に帰ってきても、もはや自分はよそ者になってしまったような感覚が常にあるし(実際には元をたどれば、日本を出たのはこの国に馴染めていなかったからなので、これは自らの選択の結果だ)、またインドが好きだと言っている人たちに会ったところで、自分の中で抱くインドに対する感情と彼らのインド愛とは大きくかけ離れているので、かえってしんどくなってしまう。
先月末に東京にて、ラファエラさんの「インナーチャイルド・セラピー」を受けてから、自分の本当の気持ちに向き合うことを意識する日々だ。
ラファエラさんのセラピーでは、相談者に決まった数のカードを無作為に引いてもらい、裏返して出た絵柄をもとに、その人の内面や、本当はどうしたいのか、これからどうしていけばよいのか、ということを引き出していく。
セラピーの中で特に印象に残ったラファエラさんの言葉に、「あなたがこれまで取り組んで来た成果としての果実はたくさん実っている。でもあなたは、それに気づきもしていない。このまま摘み取らずにいれば、せっかくの果実はやがて腐るか落ちるかして、決して味わうことはできないよ」というものがあった。
わたしはまだまだ、自分の本当の気持ちに真剣に向き合えていないと思う。
インドについて考えるとき、わたしはできれば、本当の知識のある人と付き合いたいと思っている。
フリーランスになってから、翻訳の仕事に忙殺される日々を送って来たわたしの周囲には、気づけばシッダールタしか話し相手はいなくなっていた。
それ以外には、わざわざ時間を作って会っても、話してよかった、楽しかった、充実していたと心から感じられるような人がほとんどいないからだ。
でも友達がいないことについては、正直に言ってあまり残念なことではない。
無理して人に会うよりも、自分が縁あって暮らすことになったインドについてもっと知ることに時間を費やしたいし、日本のことはもちろん、自分の興味関心の赴くままに、いろいろな国や分野について学びたい。
いま、わたしの精神状態は、まさにこの列車で盗難に遭った人のように、どん底にあるが、何かを取り戻す前兆なのではないかという気がしてならない。
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Yoko Deshmukh
(日本語 | English)
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。
ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.
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