ゴアでつくる、自分との距離

 

Posted on 19 Sep 2026 21:00 in うつとわたし、そしてインド by Yoko Deshmukh

日本で生まれ育ち、類いまれなる頭脳も、美貌も、財産もないド真ん中凡人なわたしが、逃げる先として気軽にゴアを選べるという点だけは、勝利かもね。



昨日の続きとして、突然ではあるが、ゴアにいる。

今回のゴアは、文字通りの「エスケープ」を目的として来たので、特に何か目標があるわけではない。
強いて言えば、気になっていることを少しずつチェックしながら、できる限りのんびり過ごしたい。

往路は、新興の地域航空会社「FLY91」が運航するプロペラ機だった。
プネー空港では、搭乗ゲートの目の前に機体が駐機している。
それなら歩いて搭乗するのかと思ったら、わざわざバスに乗せられ、ほんの少しだけ移動した。

ATR 72-600型機は満席。
標準仕様では72席のプロペラ機だ。
片道およそ9,000ルピー。
 

プロペラ機での旅には、なんとも言えない味わいがあるよね。


プネーから、ゴア北部のモパ(Mopa)にあるマノハール国際空港(Manohar International Airport)までは、1時間ちょっとだった。

離陸直前には、空軍の戦闘機が飛ぶ姿を間近で見ることもできた。

9月半ばのプネーから徐々に南へ下っていく。
ところどころに綿雲がびっしりと浮かんでいるものの、その隙間からは濃い緑色の地表があらわになり、池の水面や民家の屋根が日光を鋭く反射している。
上空からぼんやり地上を眺めている時間は、やはり好きだ。

到着したモパ空港は、ゴアならではの赤土を思わせるレンガ色の新しいターミナルが、ことさら立派に見えた。
滑走路には「Air Arabia」の機体も駐機しており、観光客の存在をそれとなく感じさせる。
 


ターミナルは期待通り隅々までピカピカで、手荷物のターンテーブル周辺もトイレも、シミひとつ見当たらないほどきれいだった。

そして、ターミナルの建物を出ると、すぐに1杯ひっかけられるパブがある。
このあたりは、さすがゴアである。
プネーとは違い、じっとりと蒸し暑い。

ゴアでは「GoaMiles」という配車アプリがあり、空港からの移動にも利用できる。
 

キャブ乗り場。


15時半ごろ、ホテルにチェックイン。
それから少し仕事を片付けているうちに、ちょうど日が沈み始めた。

2.5キロほど離れた海岸まで歩いて行こうと思い、ホテルを出た。
ところが途中で声をかけてきた運ちゃんがいたので、そのままタクシーに乗り、最寄りのカンドリム(Candolim)ビーチへ向かった。

ヒトに混じってウシやイヌもたそがれる夕暮れの海岸を、砂に足を取られながら、しばらく歩いた。
特に何かをするわけでもない。
だんだんと日が沈んでゆく海を眺めたり、むっとした湿度の中にかすかに冷たい海風を浴びつつ、はしゃぐ人たちを眺めたりしながら、これからの自分の人生についても、ぼんやり考えていた。

夕食はジェミニ(Gemini)ちゃんの助言に従い、ホテルからそれほど遠くない「The Fisherman’s Wharf」というチェーン店へ。
料理そのものはおいしかった。
ただし、値段は高めで、ポーションも少ない。
ゴアにはほかにもおいしいものが無数にあることを考えると、わざわざここへ来なくてもよかったかな、というのが正直な感想だった。

周囲のテーブルを見渡しながら「この人たちもジェミニちゃんの犠牲者かな」などと、勝手に勘ぐってしまった。
そんな、どうでもいいことを考えられる程度には、気持ちが少し解放されていたのだと思う。

そして今回、ゴアへ来てあらためて気づいたことがある。

昨日、自分の精神状態について書いた。
常に「うつの底」のあたりをウロウロしているようなわたしが、自分自身について比較的冷静に考えられるのは、どうやら自宅を離れている時間らしい。

家にいると、自分の中にいる。
ところが物理的に場所を変えると、ほんの少しだけ、自分を外側から眺められるようになる。
少なくとも、今回のわたしにはそう感じられた。

これは、旅行をすれば精神状態がよくなる、という話ではない。
ただ、わたしの場合、自分と自分との間に少し距離を置くためには、実際に場所を移動することが役に立つらしい。
このことは、胸に刻んでおきたい。

そして、ここまで書いてみると、昨日から何度も「仕事をした」「仕事をしている」と書いていることにも気づく。

実は今、仕事が減っている。
だからこそ、「仕事をする時間」というものが、わたしにとって何物にも代えがたい貴重な存在になりつつある。

仕事がある。
取り組むべきものがある。
その時間には、自分の意識をそこへ向けることができる。

だから最近、デイトレーディングやスイングトレーディングについて勉強し始めたことも、わたしの中では、この話とつながっている。

単に株で利益を出したい、というだけではない。
仕事が減ったとしても、経済的な自由を少しでも自分の手で広げる方法を探したい。
できれば毎月、ベーシックインカム程度の金額が確実に収入として懐に入るような状態を構築したいのである。

それが可能なのかどうかも含め、まずは勉強してみたいと考えるようになった。

そして、昨日の記事でひとつ書きそびれていたことがある。

わたしは、日本とインドの両方で精神科に通院したことがある。
カウンセリングも受けたし、何種類かの薬を服用したこともある。
ただ、少なくともわたし自身の実感としては、残念ながら、どちらもあまり効果を感じることができなかった。

他人から言われることについて「それはもっともだ」と理解し、尊重することはできる。
ところが、その同じ言葉を自分自身に向けることが、わたしには決定的に苦手だった。

他人のことなら少し離れた場所から見ることができるのに、自分自身のことになると、その距離がなくなる。
だから今回、物理的に家を離れたことで自分を少し観察できていることを、わたし自身が確かに実感している。

今回のゴアには、特に目的はない、と最初に書いた。
でも、帰るときに1つ、持ち帰りたいものができた。

自分を見るための距離を、意識してつくること。
それだけは、忘れないようにしたい。
 

モパ空港内にはスタバもあって、ゴア限定マグもあったんだけど、
プネー限定マグと同様、いくら地域限定と言われても、
肝心のデザインが好きじゃないんだよね、ごめんなさいね。


 

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About the author

Yoko Deshmukh   (日本語 | English)         
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。\r\n\r\nASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.



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