高齢化するインド、高齢者は「数えられている」だけ?

 

Posted on 03 Sep 2026 21:00 in インドあれこれ by Yoko Deshmukh

州別の統計を見ると、海外も含めた人口流出とも無関係ではなさそうです。



最新の公式統計から、インドの高齢化が急速に進行していることを、研究生のTanya Singla氏、デリー大学(University of Delhi)Jesus and Mary College経済学部のMegha Jacob氏、XLRI Jamshedpurで経済学を教えるKaran Babbar氏による論考として、「The Hindu」が紹介していた。

An ageing India, counted but not fully understood

2026年5月29日に公表された第6回全国家族健康調査(National Family Health Survey - 6、NFHS-6)の全国および州・連邦直轄領別ファクトシートによると、インドの人口に占める60歳以上の割合は12.9%に達した。
約4年前のNFHS-5では11.8%だった。

全国的に見れば、これは小幅な増加であり、重要ではあるものの、データから読み取れる内容の中で最も興味深い点ではない。

より重要なのは、インドが一つの国として一様に高齢化しているわけではない、ということだ。

すでに最も高齢化が進んでいたケーララ州では、人口の20.7%が60歳以上となっている。
ゴア州は17.2%、ヒマーチャル・プラデーシュ州は16.4%、タミル・ナードゥ州は16.3%だ。

一方、ビハール州とウッタル・プラデーシュ州では、高齢者の割合の増加は、それぞれわずか0.4ポイント、0.3ポイントにとどまり、どの尺度で見ても依然として若い人口構成を維持している。

ラダックの例もある。
60歳以上の割合は4年間で8.9%から14.6%へ上昇し、5.7ポイント増加した。
これは、同じ期間にケーララ州で見られた増加幅を上回る。

これほど異なる人口構成に対して、全国一律のモデルを適用することは不可能だ。

すでに高齢化が進んでいる州では、慢性疾患の治療、高齢者医療サービス、長期介護に対する需要が増加するだろう。
一方、比較的若い州には、まだ時間的な余裕がある。
しかし、その時間こそ、準備を進めるべき期間である。

NFHS-6の州別および全国版ファクトシートには、101の主要指標が掲載されている。
このうち、高齢のインド人に関する指標は、「人口に占める60歳以上の割合」だけである。

高齢者の健康状態を知る手掛かりとなるその他の情報は、役に立たないほど幅広い年齢層にまとめられているか、個人ごとの情報と結び付けられない形で示されている。

例えば、インドにおける非感染性疾患の負担を示す2つの主要指標である高血圧と高血糖については、いずれも15歳以上の成人を対象として記録されている。
つまり、25歳の人と85歳の人が、同じ統計上のカテゴリーに入れられている。

公開されているファクトシートだけでは、インドの高齢者の間で高血圧がどの程度一般的なのか、その割合が州によってどのように異なるのか、あるいは最も急速に高齢化している州で、高齢者の慢性疾患も最も急速に増えているのかを知る方法がない。

栄養については、この情報の欠落がさらに明白だ。
BMI(体格指数)は15~49歳の成人についてのみ報告されている。
高齢者も測定した上で表から除外された、というわけではない。
そもそも体重が測定されていないのだ。

身長と体重が記録されるのは、女性では49歳まで、男性では54歳までである。
社会が高齢化する中で、栄養状態や身体機能の状態を把握することが最も重要となるはずの人口層が、データにはまったく登場しない。

健康保険や医療費の負担に関する指標は、世帯単位で示されている。
これらの指標からは、その世帯が保険に加入しているかどうかは分かる。
しかし、その世帯に暮らす高齢者が、医療の必要性が高まり長期化した際に、経済的に保護されているかどうかについては、ほとんど分からない。

この背景には、より根本的な調査設計上の問題がある。
NFHSでインタビューの対象となるのは、女性は49歳まで、男性は54歳までだ。
それを超える年齢のインド人は、調査では世帯名簿の1行として記録され、選ばれた場合には血圧測定と血糖値測定を受けるだけである。

そのため、たとえ70歳の人の測定値が得られたとしても、それを説明する情報はほとんどない。
たばこや飲酒の習慣、治療を受けているか、医療機関を受診したか、今も働いているかといった情報は一切ない。

高齢者は数えられている。
しかし、インタビューはされていない。

だからといって、NFHS-6が欠陥のある調査だという意味ではない。
むしろNFHSは、世界でも有数の価値ある人口健康情報源のひとつである。
もともと、高齢化社会が提起するあらゆる問いに答えるためではなく、人口全体の健康状態を追跡するために設計された調査だからだ。

しかし、インドの年齢構成が変化するのであれば、保健政策を策定するために使われる情報システムも、それに合わせて変わらなければならない。

これは、もはや単なる理論上の問題ではない。

2024年に「Ayushman Bharat Pradhan Mantri Jan Arogya Yojana、AB PM-JAY」*の対象が70歳以上のすべての高齢者に拡大されたことで、政府は非常に多くの高齢者の医療費を負担する責任を担うことになった。

この人口層に十分なサービスを提供するためには、単に対象者が何人いるかを知るだけでは足りない。

慢性疾患を抱えている人は何人いるのか。
日常生活を送るために支援を必要としている人は何人いるのか。
自己負担でどの程度の医療費を支払っているのか。
こうした情報があって初めて、資金やサービスが、適切な州の適切なニーズに向けられているかを判断できる。

インドには、こうした問いに答えるために必要な仕組みがすでに存在する。

国際人口科学研究所(International Institute for Population Sciences)が実施する「インド長期高齢化調査(Longitudinal Ageing Study in India、LASI)」は、まさにこの目的のために設計されたものだ。

第1波の調査では、45歳以上の成人7万3,000人以上を対象に、健康状態、医療サービスの利用と支出、経済状況、社会的ネットワーク、身体機能の健康状態、バイオマーカーなどに関する情報を収集した。

これは非常に重要な調査基盤である。
問題は、第1波の調査対象期間が2017~2018年であることだ。

高齢者を対象とする医療保障がすでに大幅に拡大されている中、8年前のベースラインを最新のエビデンスとみなすことはできない。

データは収集された後、時間の経過とともに関連性を失っていく。
そして、その価値の低下が最も速いのは、対象となる人口そのものが急速に変化している場合である。

データの不足が明らかになると、新たな調査を実施すべきだという考えに傾きがちだ。
しかし、ここではそれは適切な判断ではない。

インドでは、すでに2つの調査が実施されている。
NFHSは、全国の人口の健康状態について、定期的かつ幅広い全体像を示す。
LASIは、高齢化と、それに伴う社会的・経済的影響を詳細に調査する。

両者は異なる役割を果たすために設計されたものであり、NFHSを2つ目のLASIに変えてしまえば、多額の費用がかかるだけでなく、NFHSが現在うまく果たしている機能まで損なうことになる。

必要なのは、もっと限定的な対応だ。
1つの調査波から次の調査波まで10年近く空けるのではなく、高齢化に関するデータを最新の状態に維持すること。
NFHSですでに収集しているデータについては、特に高血圧と血糖値について、年齢別の数値を公表すること。
そして、2つの調査を別々のサイロに閉じ込めるのではなく、互いに照らし合わせて読むことができるよう設計することだ。

高齢化するインドは、単に高齢者人口を数えるだけでは不十分になる。

高齢者が何を必要としているのか。
そのニーズがどこで最初に現れているのか。
そして、医療制度がそれらに対応できているのか。
こうした点についても把握する必要がある。

このうち最初の問い、すなわち高齢者が何人いるのかという点については、現在かなり良いデータがそろっている。

しかし、それ以外の問いについては、私たちは依然として推測に頼っている。

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*Ayushman Bharat Pradhan Mantri Jan Arogya Yojana(AB PM-JAY): インド政府による公的医療保障制度。対象となる入院医療などについて年間最大50万ルピーの医療保障を提供する。2024年には、所得にかかわらず70歳以上のすべての高齢者へ対象が拡大された。
 

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About the author

Yoko Deshmukh   (日本語 | English)         
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。\r\n\r\nASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.



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