寄付はできるけど、社会事業には向いていない自分
Posted on 01 Jul 2016 23:00 in ASKSiddhiのひとりごと by Yoko Deshmukh
「人のために何かをする」というのは、必ずしもその言葉通りではないし、美しいことばかりではないようです。弱いわたしは少なくとも心のどこかに、「自分のために」の要素が紛れこんでしまいます。
今回、シッダールタさんの姪である、20歳のラーダちゃんの日本見聞旅行は、ご存知の通り、すべてわたしが出資した。
インドからの往復航空券こそANAキャンペーン運賃で安く調達できたものの、日本国内での出費は思いのほか多額であり、そうした中で改めて実感したことがある。
フリーランスになる前後から、わたしは複数の団体に毎月の寄付をしている。
収入は決して多い方ではないが、自分の満足のいく金額を稼ぐことができているので、そのことに対する感謝と、その気持ちを少ないながらも寄付という形で、社会に還元したいからだ。
ラーダちゃんが自分の娘とかだったら、また別の気持ちにもなるのかもしれないが、わたしにとっては義理の親族、血の繋がっていない他人であり、今回の日本への招待は、わたしにとっては生まれて初めての社会事業のようなものだったかもしれない。
インドに戻る日を目前に控え、わたしは自らの心の弱さと毎日、向き合っている。
出資して、その行方を気にしないでいられることが、どれほど楽か。
しかし、どれほど無責任なことかとも言える。
毎月の寄付に対して、わたしはそのような姿勢でいたのだから。
わたしはどうしても、ラーダちゃんに年齢相応の期待をあれこれとしてしまうし、わたしたちから与えられるのを待つのではなく、もう少し積極的に行動や見聞をして欲しい。
日本に来る前にも来てからも十分な時間があったのだから、ネットでも何でもある程度の情報収集をして、やってみたいことや興味関心などを、ある程度は主体的に考えて欲しい。
「自分だったらどうしたか」と、つい比較してしまうのを止められない。
そもそも、わたしには見聞のためにお金を出してくれる親族などいなかったので、ラーダちゃんぐらいの年齢の時には自分ですべて情報収集し、判断し、稼いで貯めたお金で海外へ行っていた。
いっぽう、ラーダちゃんの場合はアコラというインドの中でもけっこうな田舎町(いちおう都市ではあるが)で、すごく裕福というわけではないが不自由なく暮らし、常に身近に両親や祖父母がいて、その愛情をたっぷりと受けて育ち、今回も伯父であるシッダールタさんに何から何までやってもらってようやく実現した旅だから、意識がまったく異なるのは致し方ない。
それに、アコラには何度も行っているが、いまだにブタやサル、ウシなどの動物が人間より大きな顔をして闊歩しており、女の子は一人で出歩いてはいけない、スカートなど露出する服装をしてはいけない、男女交際なんてとんでもないという町なのだ。
この年齢になるまで、この町を一度も出たことのない生活というのがどういうものか、想像に余りある。
いわば今回の日本訪問は、未知と遭遇しまくりの戸惑いの連続だろう。
比較してしまうわたしの方が、まるっきり間違っている。
すべては「お金を出すから、あとは好きなようにしなさい」なんていうことが言えるほど、潤沢に稼いでいる身分ではない、自分の器の小ささが問題なのだ。
そして、このようにドロドロした、わたしの気持ちを本人に直接、話してしまえるほど、わたしたちの関係性は確立されていないので、本人を傷つけるだろうし、なにより親族の関係に影響してしまうとまずい。
しかし折に触れ、100倍ぐらいに希釈した表現で、主体的な行動を促すようにしているので、賢いラーダちゃんはきっと汲み取って、何かを感じてくれているとは思う。
つくづく、わたしは社会事業に向かない。
これだけ必死にやっているのに、相手の反応が自分の期待に添わないと、わたしは本当に正しいことをしているのだろうかと、心細い気持ちになってしまう。
つい期待をしてしまう。
これでは、受ける方も負担だろう。
今回の経験を教訓に、現在17歳の、シッダールタさんの下の姪が20歳になったときには、サマースクールにでもお金を出して、「あとはお好きにどうぞ」というスタンスに戻ろうと思う。
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Yoko Deshmukh
(日本語 | English)
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。
ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.
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