安定という名の薬
Posted on 11 May 2026 21:00 in うつとわたし、そしてインド by Yoko Deshmukh
生きていれば、新しい自分と遭遇する機会は、いくらでも巡ってくるかもしれません。
プネーは今まさに酷暑期のただ中にあり、夜になってもなかなか気温が下がらず、寝苦しい日々が続いている。
その一方で、今晩のコルカタは驚くほど涼しかった。
「IndiGo」の機内から見下ろした空には綿雲が広がっており、マハーラーシュトラ州内陸部でも、ぼちぼちと雨季の兆しが見え始めているのかもしれない。
そんなことを考えていた。
思えば、インドで迎える夏というものは、毎年どこか精神状態とも結びついていたように思う。
暑さそのものというより、息苦しいほどの熱気のなかで生活全体の質が削られていく感覚である。
特にフリーランスとして過ごしていた時期は、その傾向が顕著だった。
収入は不安定で、生活リズムも一定しない。
人と会う機会も自分でつくらなければならず、気づけば何日も誰とも話さないことさえあった。
自由であるはずの働き方なのに、実際には「常に自分で自分を支え続けなければならない」状態だったのだと思う。
それに比べると、ことしの自分は、これまでにないほど安定した精神状態にある。
もちろん、人付き合いの面では、いまだに不意の私的な電話への応答は難しいことが多い。
ただ、メッセージへの受け答えは、以前に比べるとかなりスムーズにできるようになった。
振り返ってみると、大きな理由は案外単純なのかもしれない。
金額の多寡にかかわらず、一定の収入があること。
そして、定期的に決まったメンバーと会い、毎日のミーティングを含め、人との接点が自然に存在していること。
この2つが、自分にとっては「安定」という名の薬だったのだと、あとになって気づき始めている。
最近、読書やピアノ練習に集中できる時間が戻ってきた。
これもまた、精神的な余白がなければ難しいことである。
「自由な働き方」こそ理想だと思い込んでいた。
しかし実際には、わたしはフリーランスという業務形態に伴う、法務・財務・営業はもちろんのこと、自らの発言内容に至るまで、まったく自信がない。
ある程度の規則性や、ゆるやかな共同体のなかに身を置くことで、ようやく精神の輪郭が安定するタイプだったのかもしれない。
そして今の職場は、オフィス出勤を含めても非常に自由度が高い。
必要以上に干渉されることもなく、かといって完全に孤立するわけでもない。
そうした環境に、この年齢になって巡り会えたこと自体、振り返ればかなり幸運なことだったのだと思う。

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Yoko Deshmukh
(日本語 | English)
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。\r\n\r\nASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.
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