週一出社、7回目の風景
Posted on 07 May 2026 21:00 in ASKSiddhiのひとりごと by Yoko Deshmukh
今週は日本の休暇時期と重なって、比較的のんびりした業務内容となっています。
週一出社も、ついに7回目を迎えた。
最初のころは「外国人っぽいのがいる」という違和感が、オフィスの人々の間にどこか漂っていたような気がするが、最近では(少なくとも自分の感覚では)かなり周囲に同化してきた。
特別視されることも減り、静かに存在感を消しながら、オフィスの風景の一部になりつつある。
そんなある日。
以前ティータイムで少し話した、わたしとほぼ同期入社の男性と、カフェテリアで偶然再会した。
彼は北インド、ウッタラーカンド州のデヘラードゥーン出身。
「今の時期は、本当に気持ちいいんだよ。朝晩なんて寒いくらい」と笑う。
朝晩も30度近く、日中は40度近い熱気に包まれている日々のプネーとは、まるで別世界である。
「この時期だけは、ホームシックになるよね」
その言葉に、わたしは無意識に深くうなずいていた。
日本の晩春から初夏にかけての空気を思い出す。
暑さそのものより「逃げ場のない乾いた熱」に、じわじわと息苦しさをおぼえているのは、わたしだけではないのだ。
一方、チームメンバーであるIITグワハティ校出身の女子Nは、まったく別の悩みを抱えていた。
今年のディワーリー休暇、Nはアッサム州の実家には帰らず、友人たちとタイ旅行を計画しているという。
「帰省するのと同じくらいの金額で、バンコクへ行けちゃうんだよ」
さらりと言うが、1年で最も大事な年中行事であり、唯一の長期休暇シーズンともいえる時期に、実家へ帰らないことを選択するとは、いかにも現代インドらしい感覚だ。
プネーからバンコクへは、エア・インディア・エクスプレスの直行便が飛んでいる。
インディゴでも、コルカタ経由ながら格安で移動できる。
国内長距離移動と海外旅行の価格差が、ほとんど消えつつあるのである。
「でも一緒に行こうと言ってる友だちの会社は、うちみたいにフレキシブルじゃなくて、長期休暇のタイミングを待つしかない。結局、ディワーリーしかないんだよね」
そうぼやきながらも、楽しみにしている様子が伝わってくる。
あらためて思う。
この巨大企業が全国から優秀な人材を集められる理由の一つは、間違いなく「働き方の柔軟さ」にある。
完全出社でもなければ、極端な管理主義でもない。
必要に応じてリモートワークを選べる。
だからこそ、インド中の優秀な若者たちが、それぞれ故郷との距離感を保ちながら安心して働けるのだろう。
そんなことを考えていると、ウッタル・プラデーシュ州出身のチームリーダーAさんが、いつものように声をかけてくれた。
彼はランチタイムとティータイムになると、必ずわたしを気にかけてくれる。
この日、わたしは自宅で作ったサンドイッチを持参していた。
すると彼は「僕たちは食後にタバコを吸いに行くから、君は別グループと食べたほうがいいよ」と言って、そちらのグループにも言付けし、自然に「ランチ仲間」を確保してくれた。
しかも後になって、ティータイムへ誘うのを忘れていたことを気にしたらしく、わざわざ謝罪メッセージまで送ってきた。
インドでは、人との距離感が近い。
だがAさんに関しては、その近さは決して「雑」ではなく、とても細やかだ。
実際、業務中にも垣間見える彼の強い責任感には、毎回感心させられる。
その一方で、そこまで気を回し続けて、メンタルヘルスはだいじょうぶなのだろうか――と、おばちゃんは少しだけ心配にもなる。
酷暑のプネー。
ひょんなきっかけで席をいただくことになった、このオフィスには、インド各地から集まった人々の、それぞれの故郷の気候や価値観や人生が、ゆるやかに同居している。
そして最近、ようやく自分も、その風景の一部になれているのかな、という気がしている。

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Yoko Deshmukh
(日本語 | English)
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。\r\n\r\nASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.
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