2008年6月、タタ・モーターズ(Tata Motors)※はフォードからジャガーとランドローバーを23億米ドルで買収した。
これにより、インドの大衆車メーカーとして知られていたタタは、英国を代表する高級車ブランドのオーナーとなった。
2009年、タタはジャガー・ランドローバー(JLR)※を正式にインド市場へ投入した。
タタ、ついにジャガーとランド・ローバーをインドで展開 25th April, 2009
最初の旗艦ショールームはムンバイ・ウォーリ(Worli)のCeejay Houseに開設され、タタ・モーターズがインドでの独占輸入販売を担った。
当初は完成車輸入が中心で、関税負担も大きく、販売対象は富裕層に限られていた。
2011年には、プネーにJLR初のインド組立工場が開設された。
最初にCKD方式※で組み立てられたのはランドローバー・フリーランダー2で、部品は英国リバプール近郊のヘイルウッド工場から供給された。
これにより、JLRは単なる輸入販売から、インド国内での現地組立へと一歩進んだ。
グローバルでは、買収直後のJLRは世界金融危機※の影響を強く受けたが、2010年代前半には中国、英国、ロシア、インドなどで販売を伸ばし、黒字回復を果たした。
2010〜11年には大きな利益を記録し、タタによる買収は当初の懐疑論を覆す成功例として語られるようになった。
2010年代後半からは、インドでの現地組立車種が拡大した。
2019年にはレンジローバー・ヴェラールの現地生産が始まり、価格競争力を高めた。
その後、イヴォーク、ディスカバリースポーツ、ジャガーF-Paceなどもインド生産・組立の対象となった。
2021年、JLRは「Reimagine」戦略※を発表し、現代的ラグジュアリー、電動化、サステナビリティを中心に据えた新方針へ転換した。
さらにJLRは、従来の「Jaguar Land Rover」という二大ブランド構造から、Range Rover、Defender、Discovery、Jaguarの4ブランドを前面に出す「House of Brands」※型へ移行した。
2024年には、インドでレンジローバーとレンジローバー・スポーツの現地組立が始まった。
これは、JLRの最上位モデル群がインドで組み立てられるという意味で大きな転換点だった。
2024年末には、ジャガーが新しいブランドアイデンティティとEV※時代を象徴するコンセプトカー「Type 00」を発表した。
これは量産車ではなく、ジャガーの新しい方向性を示すコンセプトである。
2025年度、JLRインドは過去最高の販売を記録した。
FY25の小売販売は6,183台、卸売は6,266台で、小売は前年比40%増だった。
特にディフェンダーが販売を牽引した。
グローバルでもFY25は好調で、JLRは売上290億ポンド、税引前利益25億ポンドを発表し、10年ぶりの高水準利益となった。
一方で、2025年にはサイバー攻撃※により英国工場の操業が一時停止した。
生産は段階的に再開され、2025年11月には通常水準に戻ったと報じられている。
2026年1月発表のJLR資料でも、このサイバー事案がFY26第3四半期の販売に影響したことが確認されている。
2026年2月には、タタ・モーターズとJLRの新しいタミル・ナードゥ州ラニペット(Ranipet)工場が稼働を開始し、最初の車両としてレンジローバー・イヴォークが生産された。
投資額は段階的に9,000億ルピー規模とされ、インドはJLRのグローバル生産拠点としてさらに重要性を増した。
まとめ
2009年の記事では、JLRのインド展開は「数百台規模の高級輸入車ビジネス」として始まった。
しかし2026年現在、JLRはインドで販売するだけでなく、プネーとタミル・ナードゥを通じて生産・組立も行う存在となった。
タタによるJLR買収は、インド企業が世界的高級ブランドを所有し、再建し、さらにインド市場へ逆輸入するという象徴的な出来事だった。
2009年時点では「芸能人か大富豪ぐらいしか買えない車」だったが、2026年にはインドの高級車市場、製造業、そしてタタ・グループの国際戦略を語るうえで欠かせない存在になっている。
※ タタ・モーターズ(Tata Motors): インド最大級の自動車メーカーで、商用車から乗用車まで幅広く展開するタタ・グループの中核企業。
※ JLR(Jaguar Land Rover): 英国発の高級車ブランドであるジャガーとランドローバーを統合した自動車メーカー。
※ CKD方式: Complete Knock Downの略で、車両を部品単位で輸出し、現地で組み立てる方式。関税負担を軽減できる。
※ 世界金融危機: 2008年のリーマン・ショックを契機とする世界的な経済危機。自動車需要も大きく落ち込んだ。
※ Reimagine戦略: JLRが2021年に発表した中長期戦略で、電動化とブランド再定義を軸とする企業変革方針。
※ House of Brands: 複数ブランドを独立した価値として前面に打ち出すブランド戦略の考え方。
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参照元:
Tata Motors Completes Acquisition Of Jaguar Land Rover | JLR Media Newsroom
Jaguar Land Rover to enter Indian market
Jaguar Land Rover Inaugurates New Vehicle Assembly Plant In Pune India
JLR records pound 1.1-bn profit in 2010-11
JAGUAR LAND ROVER REIMAGINES THE FUTURE OF MODERN LUXURY BY DESIGN
Designed In Britain, Made In India
JLR India Records Highest Annual Sales With Growth Of 40% In FY25
JLR DELIVERS STRONG FULL YEAR PERFORMANCE
Tata Motors Passenger Vehicles’ new manufacturing facility in Tamil Nadu begins operations with the local manufacture of JLR’s Range Rover Evoque as the first vehicle

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