学びが未来を結ぶ: プネー「Hirameki」学生プレゼン発表会にみる日印交流の芽
Posted on 13 Oct 2025 21:00 in ASKSiddhiのひとりごと by Yoko Deshmukh
日本のこと、そしてインドとの結びつきのこと。閉塞しがちな永遠のテーマを、美しく昇華させている学校に出会いました。画像提供: Prajwal Channagiri氏
日曜日、友人のBさんに誘われ、プネーで日本語スクールを運営し、人材派遣事業も手がける会社「Hirameki」主催のプレゼンテーション・コンテストを訪れた。
学生たちが学習の成果を発表する場として企画されたものである。
Bさんは同校で日本語教師として教壇に立ちながら、プネー大学(SPPU)外国語学部日本語学科の修士課程で学ぶ努力家だ。
「Hirameki」公式サイト:
Hirameki Solutions _ Your one-stop solution for all Bilingual needs
日本語教育部門公式サイト:
AtoJ Hirameki - Study Japanese. Work in Japan
学生による発表会に参加するのは、昨年のプネー大学主催「新入生歓迎会」以来。
ひさしぶりの機会に心が弾み、会場へ向かう足取りも軽かった。
この日は初級コース6チーム、中級コース4チーム、計10チーム・約40名の学生が登壇。
「歌舞伎」「折り紙」「水墨画」など、日本の伝統芸術をテーマに自ら調べた成果を披露した。
審査は「正確な言語運用」「チームワーク」「資料の内容」など5項目で各10点満点。
日本人である筆者にとっても伝統芸術を説明するのは容易でないが、そんな内容を評価する大役を仰せつかった。
共に審査を務めたのは、日本語教育に長年携わるベテランのインド人教師。
初対面ながら「緊張しますね」と笑い合い、冷や汗をぬぐいながら採点に臨んだ。
共同経営者で、美しくよどみのない日本語が印象的なシュルティ・チャンナギリ(Shruti Channagiri)さんによると、学生たちは約1か月半の準備期間を与えられ、発表に向けて綿密に取り組んできたという。
学生の多くは若く、専業で日本語を学んでいるように見える。
これまでにもプネー市内の日本語教育機関の発表会に招かれた経験があるが、「Hirameki」の学生たちの印象は群を抜いていた。
聴衆を意識した構成や話し方、資料の見せ方まで練られており、「伝える」だけでなく「伝わる」表現を追求していることが感じられ、これは外国語学習経験のある人ならよく分かると思うが、並大抵のことではない。
会場を包む緊張感と集中力に、思わず引き込まれた。
発表の完成度の裏には、同校の教育力がある。
学生の日本語運用力の確かさは、指導の質そのものを映しているのだ。
ご自身もプネー大学外国語学部日本語学科修士課程を修了しているプラジュワル・チャンナギリ(Prajwal Channagiri)共同経営者によると、同校では年間1,200人以上の学習者を受け入れており、これまでに400人超を日本企業に送り出してきた。
その中には、東証プライム上場企業も含まれる。
さらにシュルティさんは語る。
「地道な企業パートナーの開拓を重ね、学生に無料で日本語教育を提供できるようになりました。日本への渡航費や滞在費も、将来の雇用主が負担してくださいます。」
こうして、学習の努力がそのまま就業の機会につながるという、めったにない循環が生まれている。
それは学習者にとっても確実な「報酬」であり、そうした成功を手にしたクラスメイトにとっての「ひらめき(Hirameki)」にもなっていよう。
インドと日本の間では長年、人材交流の重要性が指摘されてきたが、日本語教育をビジネスとして成立させるのは容易ではない。
「Hirameki」がこの難題を乗り越え、事業として軌道に乗せた背景には、見えない努力と信念、そして何よりも、国境を越えた当事者間での着実な信頼の積み重ねがあってこそなのである。
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Yoko Deshmukh
(日本語 | English)
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。
ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.
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