農業従事者たちが直面する「クリーンエネルギー」の現状

 

Posted on 28 May 2024 21:00 in インドあれこれ by Yoko Deshmukh

「持続可能性」自体、これまで消費をし尽くしてきたわたしたちが上から目線で押しつけるのでなく、自制のために使うべき概念ではないかな。



マハーラーシュトラ州北部での「クリーンエネルギー」の現状について詳しく取材する興味深い記事を見つけたので、抄訳したい。

Maharashtra’s Nandurbar Dumps Clean Solar Energy, Adopts Costly Grid Power

同州ナンドゥルバル(Nandurbar)県の70代の住民は、ダムの洪水のため住んでいた村を追われるようにして32年前から現在の村に定住しているが、当初は電気が通っていなかったと語る。



 

2012年、部族開発局(Tribal Development Department)とマハーラーシュトラ州配電会社(Maharashtra State Electricity Distribution Company Limited)が、行動計画に基づき同村内の世帯屋根上にソーラーパネルを設置、以来、各世帯の屋根上に、2つのLED電球に電力を供給できるソーラーパネルを1枚ずつ設置した。

一方、同県内のマニヴェリ(Maniveli)などの集落では、飲料水の確保すら困難で、住民らは遠く離れた山中にある貯水池(Sardar Sarovar Reservoir)まで毎朝、急坂を上り下りしながら水を汲みに往復する。
ほとんどの住民が農業に従事する中、午前中の肉体労働のほとんどが水の確保に費やされている。

州内の総電力消費量の32パーセントを農業部門が占めている中、州経済調査(According to the Economic Survey of Maharashtra、2022~23年)によると、2018年度から2022年6月まで、同スキームで供給されたソーラー発電式農業用ポンプは10万台にのぼる。
かんがいや飲料水の汲み上げ用に、太陽光発電を動力とするソーラーポンプが、政府により95パーセントの補助金を受けて入手できるスキーム「Mukhyamantri Saur Krushi Pump Yojana」を知らない人々も多い。

こうした中、同県ゲンダ(Genda)集落では、5年前からかんがい作業にソーラーポンプを使用していたが、2年前に送電網が建設されて以来、太陽光発電の利用をやめる人が続出している。
理由として、ソーラーポンプのメーカーは、購入から5年間の保証が付いているのにも関わらず、技術的な問題に直面した農民が問い合わせても、修理に来てくれないためという。
また、ソーラーポンプで汲み上げたくても、井戸水は地下水の枯渇によりほぼ干上がっている。

「Socio-economic vulnerability to climate change — Index development and mapping for districts in Maharashtra(気候変動に対する社会経済的脆弱性 - マハーラーシュトラ州内での指標開発とマッピング)」と題された研究では、ナンドゥルバル県は干ばつと降雨パターンの変化に対して脆弱であり、作物生産に影響を与える極端な気温の影響を最も受けやすいと指摘されている。

パンチャヤット(Panchayat、5人組)などがソーラーポンプの設置を決めても、稼動からわずか数日以内に故障するケースも後を絶たず、住民らには修繕費を支払う余裕がないことから、再び川から飲料水を汲まざるを得なくなっている。
雨水だけで育つ作物はわずかで、家畜の飼料にも事欠いている。

スワリヤ・ディガール(Swarya Digar)村でも水の問題が深刻で、家族が多い世帯では特に、家畜や畑を潤すにはとても足りないという。
ある世帯では、照明目的で設置された3枚のソーラーパネルをかんがいに活用しようと、行政が供給する手押しポンプにつなげるための水中ポンプを自費で導入したが、「(ポンプを)稼動するには少なくとも7枚のパネルが必要だった」と話す。

県内の別の村で落花生を栽培する世帯によると、現状のソーラーポンプの性能では、地中200フィートを超える深さから水を汲み上げるパワーはなく、送電網電力に切り替える必要があるが、3エーカーのかんがいには年間少なくとも1万5,000ルピーもの電気代がかかり、小規模農家にとっては巨額な負担となっている。

このように、農村地帯での浸透を目指したソーラーパネルだが、低コストのクリーンエネルギーの利点を知らない貧しい住民にとっては、地下水面の低下、技術的問題、太陽光発電効率への不信感が相まって、送電網からの電力に代わる選択肢とはなっていない。

別の政府スキーム「Mukhyamantri Saur Krushi Pump Yojana」の下でソーラー発電式ポンプが設置されている場所では、年間を通じて地下水が利用できるか否かについて、地下水調査局(Ground Water Survey Department)やポンプ業者など3つの機関によって調査されているが、ほとんどのポンプは空運転している。

そうした背景がありながら、州政府は2050年までに太陽光発電分野で2万5,000人の雇用を創出するという青写真を描いている。
晴天の日数が250日から300日あり、1日あたり平均4~6kWh/m2の太陽光が降り注ぐとされる州内では、太陽光発電システムにより年間最大150万単位、太陽熱システムを通じて年間最大250万単位を発電できるポテンシャルが見込まれているためだ。

州政府は農業への信頼できる昼間電力の供給に特化した、国内最大規模になる9,000メガワットの分散型太陽光発電容量の建設に取り組む。
地域に重点を置いた強力な技術サービスネットワークが急務となっている。

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Yoko Deshmukh   (日本語 | English)         
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。

ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.



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