デジタル決済、「すべての人」の生活を改善できるか

 

Posted on 09 Nov 2023 21:00 in インドあれこれ by Yoko Deshmukh

他でもない「アルジャジーラ」が伝えていたことが印象的でした。



デリーでは、トランスジェンダー(ヒジュラー、Hijra)たちを含む物乞いの人々の間にもデジタル決済が広まっている、という話題を、「アルジャジーラ」電子版が伝えていた。

In India, transgender beggars use digital apps to avoid discrimination

支払いと着金が即時に行われるデジタル決済が、社会的・経済的に不利な立場に置かれてしまいがちなヒジュラーたちの生活を支えている。

記事に登場する、2006年からデリーの路上での物乞いに従事するシャルマさんにとって、偏見や罵倒は日常茶飯事だったが、スマートフォンを提示して施しを求めるようになってからは、その幾分、風変わりな行為に、人々の心ない発言が少し減ってきたという。

また、小銭を持ち合わせていない人でも気軽に送金でき、その行動が「個人への援助」の色を濃くするからか、あるいはよく噂されるような、「施しのお金は夜になると元締めに集められる」という疑念を払拭するからか、シャルマさんの収入のおよそ4分の1をデジタルマネーが占めるようになった。

「物乞いでも、敬意と礼儀を持って扱われるべきだ」とシャルマさんは言い、さらなる偏見や差別に直面する銀行を訪れる必要がなくなったことも朗報だと話す。

コロナ禍で急速に進んだデジタル取り引きの普及により、

こうしたデジタル取り引きには、銀行口座と連携するものだけでなく、決済代行会社で作成した個人口座(ウォレット)に連携するものがある。
このため、2016年に最高裁が「第3の性」を認めたにもかかわらず、銀行口座開設の際の壁となってきた「性別欄」の問題をクリアできると期待する。

路上生活を余儀なくされる人々であっても、手持ちのQRコードをスキャンしてもらって送金してもらうことができれば、毎日およそ400~500ルピーの収入が得られる。

実際には、所得税局(Income Tax Department)が発行する、銀行業務や税務関連の申告に必要な10ケタの英数字が記載されたPANカード、また12ケタの個人識別番号であるAadharカードを使用すれば、銀行口座を開設できる。
しかし、ヒジュラーと呼ばれる人が地方自治体の事務所に赴き、「第3の性」としてPANやAadharの申請をしようとすると、好奇の目にさらされたり、心ない質問を浴びせられたりし、傷ついてしまう人も少なくない。

一方、デジタル決済アカウントを提供する各社では、コンプライアンスまたは顧客確認(KYC)プロセスの一環として、PANカードまたはAadharカードの提示を義務付けるという規則を施行し始めている。

結果として、銀行口座もデジタル決済口座も持たない人は、いわゆる「元締め」の口座にリンクされたQRコードを使用し、その見返りとして法外な手数料を支払うことを余儀なくされている。

デリーの女性委員会(Delhi Commission for Women)の委員長であるスワティ・マリワル(Swati Maliwal)氏は、2012年国勢調査の時点で市内には5,000人がトランスジェンダーであると特定された事実にもかかわらず、「第3の性」を持つ個人に発行された証明書は、過去3~4年間にわずか76件しか作成されていないと指摘、「国および首都の行政機構にとって、トランスジェンダーの人々は目に見えない存在であると言っているようなものだ」と語り、インドにおけるトランスジェンダーたちのように、社会的に不利な立場に置かれがちな人々にとって、経済力は重要なツールになると訴えている。

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About the author

Yoko Deshmukh   (日本語 | English)         
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。

ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.



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