「水」をテーマとするシェーカル・カプール氏話題作の行方は

 

Posted on 25 Nov 2015 10:00 in エンターテインメント by Yoko Deshmukh

本当に起こりそうな近未来です。



*Photo from NDTV article, where the post is referenced.

昨日に引き続き、インドで暮らしていく上で意識を及ぼさずにはいられない、「限りある資源としての水」について、改めて考えさせられる話題を、NDTVの記事からご紹介したい。

「エリザベス(Elizabeth:1998年)」、「Mr.インディア(Mr. India:1987年)」、「女盗賊プーラン(Bandit Queen:1994年)」など、世界的にも著名な映画監督としてその名を知られるシェーカル・カプール(Shekhar Kapoor)氏(69)が怒っている。

制作期間が足掛け11年に及び、自身が「渾身の傑作」と呼ぶ話題作、「Paani(パーニー、ヒンディ語で『水』を指す)」の制作者や協賛者が、ボリウッドはじめインドにおいては、なかなか見つからないのだ。

スシャント・スィン・ラージプート(Sushant Singh Rajput)とアイーシャ・カプール(Ayesha Kapoor)という2大スターが共演する「Paani」は、「水を持つ者と持たざる者との不平等」を描くという、そのテーマの「重さ」から、インド国内では採算を疑問視する声が高い。

「お高く止まった映画制作者たちの住む豪華な邸宅や、きらびやかな高層マンションでは、現在進行形の水不足なんかとは無縁なのだろうよ。『ムンバイで水不足だって?何かのジョークかい?』とまで言う人もいたよ。多くの人々がまさに今、直面している問題だと言うのに、彼らにしてみれば存在しないも同様なのさ。ハッキリ言って、俺の作品の世界そのままじゃねえか。もし来年までに国内での制作会社が決まらなかったら、海外での制作に踏み切るしかない。ま、それだけのことさ」
カプール監督。

実際、カプール監督によれば、海外、特に西側諸国の映画制作者からは、この作品に出資し、後援したいという熱烈な声がかかっているという。

「インドの現実を描かずして、何がインド映画だろうか。カネのことだけじゃないんだ。この問題を、問題として受け止め、理解してくれる人とともに制作したい。それがインド国外の人たちであってもね。」

「Paani」は、どんな作品であるのか。
映画データベース「IMDb」によれば、深刻な水資源不足となった35年後の地球上では、水を巡って戦争が勃発、人類が殺戮し合うという悪夢のような近未来が訪れるというもの。

普段の生活の中で、お金を出せるか、出せないかで、生きていくために必要な水という資源までも、不公平に配分されているような現実を目にすることがある。
この映画の世界は、あながちフィクションではないのではないかとすら感じられるゆえんである。
「持つ者、持たざる者」との間の、こうした不平等は、インド、日本、他の国々でも、水に限らず、わたしたちが見過ごしているものを含めて厳然とある。

なお恥ずかしながら、シェーカル・カプールさんの名前だけは聞いたことがあっても、これだけの大人物であることを今まで知らずにいた。
NDTVに掲載されたカプールさんの写真を見ると、年齢を考えても、かなり衰弱しているように見えるのは、わたしだけだろうか。
この作品の制作に命を削られているのでなければいいがと願う。






About the author

Yoko Deshmukh   (日本語 | English)         
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。

ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.



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