地球の真裏ブラジルでガーンディーの思想を広める人

 

Posted on 25 May 2018 21:00 in インドあれこれ by Yoko Deshmukh

ガーンディーのことを悪く言う人たちを少なからず知っているので、そういう人にこそ知って欲しいです。



イエズス会宣教師のフランシスコ・ザビエルらがゴアで行っていた異端審問と、インド・ユダヤ人たちの運命を綴った徳永恂、小岸昭共著の「インド・ユダヤ人の光と闇」(新曜社)を寝る前にゆっくり読みながら、興味関心の赴くまま毎朝30分ほど、ポルトガル語(とドイツ語)の自習をしている。
いつまでたってもなかなか頭に入ってこないマラーティー語やヒンディー語と違って、かなり楽しく学習できているのは皮肉な話だ。

さて、最大のポルトガル語話者人口を抱える国と言えばブラジルだが、インドの真裏だ。
実はプネーには、そのブラジルから移住してきている人が意外にいらっしゃる。
遠い遠い、その国で、ガーンディーの思想を広める活動を30年ほどにわたって地道に続けている人の話が、「The Better India」に掲載されて興味が惹かれた。

How a Professor Is Spreading Gandhian Ideals Among Thousands in Brazil! - The Better India

サンパウロで教育、医療、人権、環境保全、社会福祉、平和的な文化形成といった分野を舞台に、共同体志向のプログラムやプロジェクトを開発、育成、管理するNGO、「Palas Athena Association」を設立し、活動するリア・ディスキン(Lia Diskin)さん。
このNGO活動におけるプログラムの制作、監督、遂行は、インド建国の父マハートマー・ガーンディー(Mahatma Gandhi)のイデオロギーに沿っており、1982年の設立以来、毎年「ガーンディー・ウィーク」を開催して、協調に基づく調和的な共同体の在り方について講義し、促進することを努めている。

これまで毎年掲げられてきたテーマの一例としては、「『真実』、『非暴力』、『祈り』; ガーンディーの宗教的、精神的、政治的側面とその統合」、 「ガーンディーと政治」、「ガーンディーと信仰」、「ガーンディーと彼自身」、「ガーンディー - 時代を先駆けた男」、「日々の行動、感情、言葉の駆使を通しての寛容」、「平和的な紛争解決」、「インド独立におけるガーンディーの役割」など、興味深いものばかり。

この「ガーンディー・ウィーク」にはガーンディー主義者だけでなく、一般の哲学者も招いたパネルディスカッションやカンファレンスを開催、ガーンディーの平和と変革への考えを広めるためのアートや劇、歌、舞踊、映像メディア、瞑想なども開催している。

過去にはガーンディー自伝のポルトガル語への翻訳プロジェクトを実施、「Autobiografia - Minha Vida e Minhas Experiencias com a Verdade」として出版した。

こうした取り組みを高く評価し、インド政府はサンパウロ州にガーンディーの銅像を献上、現在この像はサンパウロ州議会議事堂横に市内最大の公園、トゥーリオ・フォントウラ(Tulio Fontoura)広場の中心に建っている。

ディスキンさんはさらに、2009年からガーンディー哲学の3原則を体感できる文化的レクリエーション活動、「Peace Wants Partners」プログラムを展開、また公立学校の教師累計4万人を対象に、非暴力による紛争解決と、協調と協力による人間関係の構築を提唱したり、ユネスコと協力して教育者を対象とした「平和と非暴力の啓発センター」を2003年から運営している。

ディスキンさんが主導する、もうひとつの大きなイニシアチブは、「ガーンディー・ネットワーク」。
ブラジル国内500市町村から1,500人が参加する、このネットワークは、平和志向の活動と知識を是とする文化を広める研修、情報、指導を提供することで、そのための能力や才能を普及することを目標として掲げる。
この「ガーンディー・ネットワーク」憲章は、実に14州で承認されている。

リア・ディスキンさんはこうした一連の驚くべき取り組みにより、「ガーンディーの価値を海外で広めるジャムナラール・バジャージ賞(Jamnalal Bajaj Award for Promoting Gandhian Values Outside India)」を受賞している。

リア・ディスキンさんプロフィール(Lia Diskin's Page - GandhiTopia)

わたしも二度と来ないこの人生、「こうあるべき」と決めつけず、「インド」のイメージを固定せず、心の赴くまま、冒頭のようにいろいろなことを学び、いろいろな人に会い、いろいろなところへ出かけ、自分だけの世界を作りたいという気持ちが強くある。
インドを大嫌いになりたくないので、なんとかして心のバランスを取ろうとしている。

そういえば先日、まったくの偶然なのだが、新規で業務契約した中国の会社の社長が、たまたまご友人もインド人と結婚し、プネーにお住まいということを明かしてくださり、かなり驚いた。
自分の心を見透かされているような、運命に導かれるような、この出会い。
プネーに帰ったら、そのご友人にぜひ会いに行きたい。





            



About the author

Yoko Deshmukh   (日本語 | English)         
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。

ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.



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