リオ・オリンピックに出場した、チャーイ・ワラー競歩選手

 

Posted on 23 Aug 2016 23:00 in インドスポーツ by Yoko Deshmukh

インドでの教育、足りていないのは勉学のみならず、スポーツも同様です。ダイアモンド原石は、ごろごろ埋まっています。



*The photo from The Better India article

昨日閉幕したリオデジャネイロ・オリンピック、インドからはメダルは逃したものの跳躍で4位と健闘した体操のディパ・カルマカル(Dipa Karmakar)、バドミントン決勝で強豪スペインとほぼ対等に戦い見事銀メダルを獲得したピーヴィー・シンドゥ(P.V. Sindhu)などの活躍が目立ったが、メダルを逃したアスリートの中にも、光る存在がいたようだ。

本日付の「The Better India」で、生活のために茶店で働きながら鍛錬を積み、競歩種目に出場していたマニッシュ・スィン・ラワト(Manish Singh Rawat)選手について紹介していた。

From Waiter to Olympian: Meet Manish Rawat, the Unsung Hero Who Made India Proud at Rio - The Better India

10歳の時に父親を亡くして以来、家計を助けるため畑仕事や大衆食堂の給仕などの仕事をしながら、子供の脚で1時間半ほどかかる学校へ通い、足腰を鍛えてきた、インド北部ウッタラーカンド州出身のラワト選手。
陸上競技に秀でると、公務員の職を得られるチャンスがあるかもしれないというのが、競歩の練習を始めたきっかけだ。

2010年には、スポーツ枠を狙って警察官試験を受験したものの不合格となり、金銭的にもピンチに立たされたラワト選手だが、コーチの支援などを得て鍛錬を積み、着実に記録を伸ばしてきた。
昨年は世界選手権で20キロを1時間20分50秒で踏破、インド代表を担当するロシア人コーチの下で訓練を得る機会を得た。

25歳の今年、ついに念願のリオ・オリンピックに出場、世界チャンピオン、アジアチャンピオン、欧州チャンピオン、そしてオリンピックのメダリストなどそうそうたるメンバーと同じフィールドに立ち、20キロを1時間21分21秒、銅メダリストからわずか1分の差で踏破した。

インド競歩チームのロシア人コーチ、アレクサンダー・アルツィバーシェフ(Alexander Artsybashev)氏はメディアに対し、インド政府はもっと多様なスポーツの振興に積極的になるべきだと主張している。
実際、ラワト選手は生活のための仕事を続けながら、極めて不十分な訓練設備で練習を積み、恵まれない境遇での限られた時間と資源の中で大いに健闘したが、適切な体制が整っていれば、金メダルすら可能性があったことは否定できない。

インドのメディアでも、世界各国がスポーツに対してどれほどの出資をしているかを取り上げ、2020年の東京オリンピックに向け、優れたアスリートたちに対する官民による積極的な支援体制の必要性を訴え始めている。

このように、インドには日本で日常生活を送る人々には想像できないような暮らしを強いられつつも、決してあきらめない不屈の精神で夢に向かって努力する、すさまじいタフさを備えた人々が一定数存在するのである。
世界中の敏腕スポーツコーチは、今こそインドを訪れ、隠れた才能を発掘する時かもしれない。






About the author

Yoko Deshmukh   (日本語 | English)         
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。

ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.



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