インド女性初の宇宙飛行士、カルパナさん13回目の命日

 

Posted on 01 Feb 2016 21:00 in 海外のインド人 by Yoko Deshmukh

インディア・トゥデイでは、「母なる宇宙に抱かれて旅立った、それは自然を畏怖する実にカルパナさんらしい最期だったのかもしれない」というようなことを書いていました。



*The photo from India Today, where the article is referenced.
 

カルパナ・チャーウラー(Kalpana Chawla)さんのことを知ったのは、インドに住み始めてまもない、2003年末ごろのことだった。

インド出身女性として初の宇宙飛行士となり、米航空宇宙局(NASA)の打ち上げたスペースシャトル「コロンビア(Colombia)」で2回目のミッションに参加、その年の2月1日に地球へ帰還する途上の大気圏で、まさかの空中分解事故が発生、他の搭乗員6名全員とともに命を落とした。

当時は事故直後ということもあり、カルパナ・チャーウラーさんの話題がインドの新聞紙面を飾る頻度がとても高かったため、よく関連記事に目を通していたものだった。
何もかもゼロの状態でインドで暮らし始めたばかりのわたしにとって、ハリヤナの大地から渡米して米国籍を取得し、世界一流の地位にあるカルパナさんは、比較することすらおこがましいが、まったく対極にありまぶしく、それでいて、なんとなく前から知っているように錯覚するほど、不思議な親しみを覚えていた。

そのカルパナさんの13回目の命日にあたる本日、インディア・トゥデイ(India Today)では、事故機となったコロンビアへの搭乗直前に、カルパナさんが同誌の取材に応じた最後のインタビュー記事を述懐する形で掲載していた。

記事によると、出身地であるハリヤナ州カルナール(Karnal)という小さな町にいたころのカルパナさんは、草むらに寝転んで星空を眺めるのが何より大好きな少女だったという。
「天の川をうっとり眺めていると、たまに流れ星が見つかったりして。そうした日々が、宇宙に対する畏敬の念と、同時に強い好奇心を育んだと思う」カルパナさんの言葉だ。

カルパナさんは宇宙に旅立ったインド人としても、たった2例目であった※。
いわば前人未到のキャリアを目指し、1982年にパンジャーブ州工科大学(Punjab Engineering College)で航空工学を専攻後、住み慣れた故郷を離れ、宇宙工学で全米トップクラスに数えられるテキサス大学アーリントン校(The University of Texas at Arlington)に進学のため渡米することになるわけだが、「懸命に努力することと引き換えに失うものは何もないと信じていた。どんな状況にあっても、夢を追うことは誰にでもできる。そのことは、証明できたのではないか」と語っている。

そしてインドの子供たちに向けたメッセージの中では、「物質的利益の追求だけが明るい未来への道しるべではない。一生涯の長い時間をかけて、自分が楽しんで取り組めることは何か、その答えを見つけることだ。手早くどこかへ行ける方法があったとして、それが最善の道であるとは限らない。目標へ至る道のりは、目標と同じぐらい大切なものだ」と語りかけた。

インタビュー記事は最後に、こう結ばれている。
「Listen to the sounds of nature. Wishing you the best on your trek towards your dreams. Take good care of our fragile planet.(自然が発する音に耳を傾けてください。あなたの夢へと向かう旅路が、最高にすばらしいものであることを願っています。ただ、このもろい地球のことは、よく気遣ってくださいね)」

今にも増して2003年当時は拙い記事であったが、あのころにも関連の話題を取り上げていたので、カルパナ・チャーウラーさん追悼の想いを込めて、こちらで改めて掲載させていただきたい。
宇宙飛行士カルパナ・チャウラさんの夢羽ばたく(2003年11月6日)
ディープパープルがカルパナさんへ捧げる曲(2003年12月24日)


カルパナ・チャーウラーさん(写真は著作権フリーのスペースより)

※ちなみにインド人初の宇宙飛行士は、元インド空軍パイロットで、旧ソ連のインターコスモス計画に参加して1984年にソユーズに搭乗した、ラケーシュ・シャーマ(Rakesh Sharma)






About the author

Yoko Deshmukh   (日本語 | English)         
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。

ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.



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