バンコクの「Gaa」シェフがインド人として初の「アジアで最も優れた女性シェフ」に

 

Posted on 16 Mar 2019 21:00 in 海外のインド人 by Yoko Deshmukh

福岡の食通をリードしている吉村さんが教えてくださいました。バンコクは熱いグルメパラダイスであることがよく分かりました。



福岡のワインバー、「ラタフィア(Ratafia)」のオーナーソムリエ、吉村智美(よしむら・ともみ)さんが今月はじめ、次のような話題を紹介してくださった。

「Gaggan」に続きバンコクを拠点とするインド人シェフが、「アジアで最も優れた女性シェフ(elit™ Vodka Asia’s Best Female Chef 2019)」に選ばれたというものだ。

記事のタイトルもいい。
「インド人シェフこそ、インド料理に対して人々が抱く先入観を変えるべし」

“As Indian chefs, we need to change how people perceive Indian food” – Garima Arora

大変興味深い話題なので、以下に2つの記事の要約を記したい。

今回輝かしい栄冠を戴いたのは、「Gaa」のインド人シェフで、ムンバイー出身のガリマ・アローラ(Garima Arora)さん。

受賞を伝える記事「elit™ Vodka Asia’s Best Female Chef 2019」によると、ガリマさんはやはりバンコクで有名な、あの「Gaggan」経営者、ガガン・アナンド(Gaggan Anand)さんからその才能を見い出され、引き抜かれた人材で、タイに渡ってからまだ3年ほどの弱冠32歳だ。

ASKSiddhi「Gaggan」参考記事:競争激しいバンコクでもっとも予約の取りにくいインド料理店

「elit™ Vodka Asia’s Best Female Chef 2019」とは、フード業界の第一線でグローバルに活躍する1,000人の一流評論家による投票で決定する、とても栄誉ある賞だ。

ガリマさんは「Gaggan」で修業後、その向かいに建つ独立した店舗でシェフを任されてからわずか数カ月を経て、自分の店「Gaa」をオープンするに至った。

「Gaa」はいわゆるインド料理店ではないが、インドで長い歴史をかけて発展し、アジア全域に広く影響してきた技術の粋を尽くした料理を提供している。
一例として、直火を使うこと、野菜からの旨味(umami)を引き出すこと、発酵させること、油脂の巧みな使い方で変化に富んだ味を引き出すこと、などが挙げられる。
また「Gaa」では、インドでは今なお一般的な慣習である「手で食べる行為」を、「食べる人と食べ物の繋がりを深める」として推奨している。

今やバンコクの食通を唸らせる一流の料理店としてその地位を確立した「Gaa」。
その味を任されるガリマさんは、パリの名門料理教育機関、「ル・コルドン・ブルー(Le Cordon Bleu)」を2010年に卒業、その後同じくパリの「ル・カルティエ・デュ・パン(Le Quartier du Pain)」やドバイで三ツ星シェフ、ゴードン・ラムゼイ(Gordon Ramsay)氏が手掛ける「Verre by Gordon Ramsay」などで修行を積んだのち、「世界一のレストラン」と称賛されるコペンハーゲンの「ノーマ(Noma)」に在籍、オーナーシェフのルネ・レゼピ(René Redzepi)氏と出会ったことがきっかけで、人生が大きく変わった。
それは技術だけでなく、料理や食材に対する向き合い方に影響するものとなった。

2016年、「Gaggan」の誘いを受けてバンコクに移住した際は、ムンバイーでのレストラン開業までの繋ぎのつもりだったというが、タイの豊かな味や市場、人々に魅了されたガリマさんは、2017年に自らのプロデュースするコース料理を提供する「Gaa」をオープン、独自の味を開拓し、現在に至る。
2018年にはインド人女性シェフとして初めてミシュランの星を獲得、そして今年の快挙だ。

ガリマさんの料理の原点は、海外出張が多く、世界中の珍しい料理を自宅で再現することを楽しみにしていた両親と、インド伝統の調理法を伝えてくれた祖父母にあるという。

ガリマさんが築いた地位をもってすれば、「インド料理に対する世界の見識を変え、ヨーロッパにおけるフランス料理がそうであるように、アジアの食文化をリードし、さらに大きな影響を及ぼす」という目標はきっと達成できるだろう。

ガリマさんによれば、インド料理は世界中で食べられているが、ゆえに人々はインドに足を運んで体験を深めようとしなくなってしまう傾向にある。
その結果、実際にはインドには実に深く広い、豊かな料理世界があるのに、知られないままになっていると悔やむ。

タイ、特に北部はインド北東部との繋がりを強く感じ、今やバンコクは第2の故郷であると語るガリマさんだが、ゆくゆくは当初の計画通り、インドでレストランを開業することを目指している。

また、「ノーマ」での修行を続け、世界中を股にかける傍ら、ガリマさんはムンバイーで食品の製造と販売を通じて女性の経済的な自立を目指しつつ、保健衛生などの教育や啓蒙を実施する団体、「Rajasthani Mahila Mandal」を支援している。

「インドではシェフと言えばほとんどが男性だが、家庭で料理を作るのはほとんどが女性。つまり女性たちは豊富な知識と技術を蓄積しているはずだ。レストラン業界はこうした女性たちを、もっと積極的に雇用すべき」と主張している。
この夏、やむを得ない事情により専業主婦から自立した女性としての一歩を踏み出す義理の妹に、この言葉を送りたい。

本日最も読まれている記事
ポルトガル鉄道のインターネット事前切符予約 26 Oct 2016
大枚はたいて購入したサリーを着倒すための独断による厳選コーディネート 09 Mar 2019
「Suta」の激かわチョーリーとサリーが到着、クイックレビュー 08 Mar 2019
ケーララ州に、完全ペイフォワード型の飲食施設が開業 14 Mar 2018

来年4月開催の「ナマステ福岡(Namaste Fukuoka)2019」ではボランティアを絶賛募集中! 17 Dec 2018

 





          



About the author

Yoko Deshmukh   (日本語 | English)         
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。

ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.



Share it with


User Comments