プネに移り住んで、もう12年ほどが経過しようとしているが、他のメトロ都市ほど景観の変化こそ大きくないものの、大型のショッピングモールや外資系を含めた一流ホテルがたくさん建ち、スタイリッシュなレストランやカフェが急増して、今どきの若者や外国人在住者にとって楽しみな場所が増えれば増えるほど、そうした人々の移動時に、ちょっとでも得をしてやろうと、せこい考えを持つ困ったオートリクシャー運転手(リクシャーワーラー)が、以前より増えてきているように思える。
特に、いまだにメトロ計画の「メ」の字もないプネならば、なおさらリクシャーワーラーにとって、何をしても天下泰平という気分があるだろう。
そんな中にあって、正直で誠実なリクシャーワーラーに出会えると、心からうれしくなるし、かえってチップもはずむというもの。
ベンガルールで夜間、不安な気持ちでひとり、オートリクシャーを掴まえた女性が、思いもかけぬ幸運な出会いに恵まれ、ことのほか大きな形で感謝を表現した気持ちも、よく分かる。
夜間に女性ひとりで郊外へ、しかも明かりの多いハイウェイを走行できないオートリクシャーで向かうことに、一抹の不安を禁じえなかったランジャニさんは、到着したリクシャーワーラーに、グーグルマップで示した経路通りに行くよう指示した。
リクシャーワーラーは素直に頷いたものの、「その経路は街灯が少なく、暗いですよ」と予め伝えたという。
実際に経路に入ると、まったく街灯のない「闇」だった。
「知らない人の運転するオートリクシャーで、知らない道を、漆黒の闇の中を30分。怖かったですよ」ランジャニさん。
ところが道中、このリクシャーワーラーは、「Ola」社が女性客単独での乗車時のマナーや礼儀作法について、いかにしっかりと訓練しているか、という話を、延々とし続けてくれたため、ランジャニさんは徐々に安心していられるようになったという。
しかもリクシャーワーラーは、目的地に到着後、友人が迎えに来るまでの20分ほどを、ランジャニさんと一緒に待ってくれたのだった。
心から感動したランジャニさんは、後日、この親切なリクシャーワーラー、アリ(Ghasamfar Ali)さんにぜひ、お礼が言いたくなり、アリさんが暮らす自宅を電撃訪問した。
「突然の訪問でしたが、家族総出でチャーイやお菓子などを振る舞ってくれました。私からは家族からのお礼の品を手渡すことができましたが、そんな物では、あの時の感謝の気持ちを代弁できません」
さらにランジャニさんは、一連の出来事をTwitterやFacebookなどのソーシャルメディアにも投稿していたが、大きな反響を呼んでいる。
最終的には、ベンガルール警察も、アリさんの誠実な行動を称え、感謝状を手渡している。
残念ながら、まだまだ安全が「当たり前」とは言えないインド。