インドへの帰路、NH829機内では「Tumhari Sulu」を鑑賞

 

Posted on 17 Jan 2019 21:00 in ASKSiddhiのひとりごと by Yoko Deshmukh

麗しのヴィディヤーさんに久々に再会しました。



今回も2カ月あまりの福岡滞在を終え、インドのプネー(Pune)に帰って来た。

日本人の両親のもと、日本で生まれ育ち、20代前半までは生粋の日本人として「日本がすべて」の世界で暮らしてきたわたしだが、祖国以外にも違和感なく「故郷」と言える場所があることは、つくづく幸運なことだと思う。
2つの祖国を往復する生活を始めたことで、自分の言っていることが完全に相手に伝わることなどあり得ないし、相手の言っていることを完全に理解できているなどと自惚れないクセが自然についた。

さらにインドに戻って来たことで、日本での行動と大きく変化するところは様々あるのだが、瞬間的に何かのスイッチが入って、自分の意見を臆せずはっきり述べることができるようになる点もそのひとつだ。

例えば日本では、買い物をするとスーパーでもコンビニでも、コーヒーショップでも、店員さんが光の速さで購入した商品をプラスチック袋に入れてしまう。
せっかく対応してくれたのだからとか、目立とうとしていると思われるかもなどと憚られて、多くの場面で「袋は不要です」とは言えなかった。

プネーに戻ってきてからは、昨年からの法律施行でプラスチックの使用が禁止されているので、勝手に袋詰めされてしまうことはあり得ないことだ。

加えて、先ほど利用したスターバックスコーヒー店舗で「紙コップにしますかマグカップにしますか」と問われた時、「店舗のご都合のよい方で」と伝え、その流れで紙コップにコーヒーを入れて出してくれた店員さんがプラスチック風のフタを被せようとしたので、「プラスチックのフタなら要りません」と言ったら、「これはコーンスターチ製なんですよ」と教えてもらうことができた。
要らないものは「要らない」とはっきり言えるし、そうした発言に対して黙しつつ腐る感じの表情を浮かべる人がいないのは、わたしにとっては精神衛生上よいことだと思う。

さて、帰りの全日空(ANA)成田ムンバイー便の機内では2017年のヴィディヤー・バーラン(Vidya Balan)さん主演作品「Tumhari Sulu」を鑑賞した。




「Tumhari Sulu」公式トレイラー

 

ストーリーや作品の詳細、ヴィディヤーさんの天才的な演技については、ポポッポーさんのブログに詳しいので、じっくりと読んでみたい。

【Tumhari Sulu】 - ポポッポーのお気楽インド映画

ポポッポーさんがブログで説明されているように、ヴィディヤーさんは近年も代表的な作品での主演を含めて精力的に活動されている。
しかし呆れるほどボリウッドを含めたインド映画全般を鑑賞してこなかったわたしにとっては、ヴィディヤー・バーランさんと言えば、ほぼ「Lage Raho Munna Bhai」(2006年)のヒロイン役以来の対面となった(そういえば本作のヴィディヤーさんもラジオジョッキー [RJ] 役だった)。

Lage Raho Munna Bhai


「Lage Raho Munna Bhai」公式トレイラー

※「Statutory Warning: This movie contains non-violence」がイイ。
 

またその前年ぐらいに公開され、いまだに各所で再生され続けている音楽の美しさが際立って印象深い大ヒット作、「Parineeta」(2005年)の可憐な演技も記憶に残っている。

Parineeta


「Parineeta」公式トレイラー

 

だから、「Tumhari Sulu」で普通の主婦にしか見えない体型に成長したヴィディヤーさんを見て仰天するのはフェアじゃないだろう。
とは言え、主役にふさわしい華のある演技はまったく変わっていない。

わたしが気になったポイントは、ANA機内上映用の日本語字幕だった。
もしかしたら原語のヒンディー語ではなく、いったん英語にしたものを日本語に訳しているのかもしれない。

例えば、ムンバイーにある地名である「Bandra East」が「東バンドラ」になっていたり(ここはそのままカタカナにして「バンドラ・イースト」のほうが通りがよい)、「peon」が「ペオン」という人名であるかのように処理されていたり(ちなみに発音は「ピューン」の方が近い)、圧力鍋の大手メーカー「Prestige」が「一流の」というような意味に訳されていたり、パニールが「カッテージチーズ」になっていたりと、細かいところで違和感を抱いたが、これもインド在住歴15年のわたしのような者ではなく、一般の日本人に通用しやすいような配慮だったかもしれない。
ただし「peon」については、スルの夫が職場の上司から受けるパワハラと絡む部分なので、「小間使い」程度にしておいた方がよかった。

スルの夫役マーナヴ・カウル(Manav Kaul)さんや、アシスタント役のヴィジャイ・マウリヤ(Vijay Maurya)さんがいい味を出していて目が離せなかったこと、そしてベテランRJ役で本物のRJ、マリシュカ(Malishka)さんと思わぬ再会ができたことなども含めて、ひとりひとりのキャラクターが立っていて見応え満点の作品だった。



RJ役に本物のRJが登場。
 

参考:マリシュカさんの活動について紹介したASKSiddhi(アスクスィッディ)過去記事
ムンバイーやプネーのお茶の間を巻き込む大センセーション!必見!!抱腹絶倒の「ソヌ・ラップ」

バカにされ続けてきた主婦による起死回生ストーリーという点で共通する、故シュリ・デヴィさん主演の「マダム・イン・ニューヨーク(English Vinglish)」が好きな方は楽しめそうだ。

なお個人的には、ダサめのパンジャービー・ドレスとか化繊のサリーなど、スルの主婦ど真ん中な生活感を演出するためのコーディネートがツボだった。

本日最も読まれている記事
人知れず苦労する人たちを決して見過ごさなかったラジャスターン州の兄弟の発明品 11 Jan 2018
ケーララ州でささやかな茶店を経営しながら世界旅行する夫妻に、あの人が思い切った提案 11 Jan 2019
マカール・サンクランティ 15 Jan 2016
ポルトガル鉄道のインターネット事前切符予約 26 Oct 2016
新橋の南インド料理「ナンディニ」で、インド帰国直前ティーパーティー東京エディション 14 Jan 2019

 





      



About the author

Yoko Deshmukh   (日本語 | English)         
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。

ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.



Share it with


User Comments